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“形成外科で主に取り扱う疾患”

顔面神経麻痺

顔面神経再建

顔面神経麻痺は様々な原因で生じます。先天性のもの以外に、特発性のもの(Bell麻痺)、ウィルス感染(Ramsey-Hunt症候群)、神経疾患、外傷、手術(頭蓋内腫瘍摘出、耳下腺悪性腫瘍摘出手術など)などが原因となって発症するものがあります。顔面神経の運動線維は、脳より耳の下を通り大きく5本に分かれて(側頭枝、頬骨枝、頬筋枝、下顎縁枝、頸枝)顔面の表情を作る筋肉に至ります。全部が麻痺する場合と、ある部分だけが麻痺する場合があります。

主な症状
  • 額のしわ寄せができない
  • 眉毛及び上眼瞼下垂による視野の制限
  • 目を閉じる筋肉である眼輪筋麻痺により目が閉じられなくなる(兎眼)ことによる眼の炎症
  • 口がすぼめない、口角が下がる
  • 笑ったとき顔がゆがむ
  • 口を開けると目が閉じるなど
  • 顔が緊張した状態になり引きつれを生じる
治療時期

兎眼による角結膜炎を生じている場合にはなるべく早く手術を行うことが肝要です。
笑いの再建については、自然回復の可能性がある場合は、麻痺後1年程経過した後再建を検討します。自然回復の可能性が低い場合には、麻痺からの経過時間が短い程顔面の筋肉が萎縮しないため、早期から積極的な手術を行っていきます。

A.静的再建
静的再建とは、顔面の表情の動きは再建できませんが、顔面神経麻痺に伴う下垂による顔面の左右非対称を修正する方法です。大腿筋膜や耳介軟骨を利用して下垂している部分を上に引き上げる方法、下垂して弛んでいる分の皮膚を切除する方法があります。利点は、手術手技が比較的簡単であり、短時間の手術で可能です。
1.眉毛
前頭筋の麻痺のため眉毛が健側より下がります。眉毛の上の生え際で余っている皮膚を切除し、さらにその皮膚を骨膜などに固定します。しかし、健側のように眉毛は動きませんので、眉毛を挙上するような表情や目を閉じたときには左右差がでます。
2.頬部
大腿筋膜を採取し、頬部の皮下に移植しつり上げます。頬骨弓と鼻唇溝、口唇をつり上げます。この場合も、患側の口角は動きませんので、口を動かしたときに左右差ができます。
3.眼瞼
上眼瞼の下垂に対しては余っている皮膚を切除します。また下眼瞼の下垂には耳介軟骨や大腿筋膜を移植してつり上げます。眼輪筋の麻痺により兎眼がでた場合には下眼瞼のつり上げと共に、必要ならば上眼瞼の修正も行います。

B.動的再建
1. 神経の再建
顔面神経麻痺が発症してから経過時間が短い場合、顔面表情筋の機能低下を認めないため神経のみの再建を行います。切れた神経をそのまま再縫合すること、下腿後面や頸部の知覚神経用いた神経移植術があります。採取した部分の感覚麻痺が残りますが、日常生活に支障のない部分を使用します。
また、顔面の悪性腫瘍切除手術で顔面神経の一部が切除される場合は、他の運動神経(舌を動かす舌下神経やものを咬む咬筋神経)を一部犠牲にして再建する神経移行術があります。麻痺の無い正常側の顔面神経と麻痺している神経をつなぎ顔面の表情を再建する方法もあります。
2. 顔面表情筋の再建
先天性の顔面神経麻痺や麻痺してから長期間(二年以上)が経過した場合、表情筋が萎縮してしまい、神経の再建だけでは動きが回復できないため筋肉を用いた再建が必要になります。側頭筋移行術や、背中の広背筋や大腿の薄筋を用いた遊離筋肉移植術を行います。神経移植を併用することで、笑いの再建を行うことも可能となっています。

再建した神経は、神経縫合部から神経軸索が再生伸長し目的組織に至ることで機能が回復するので、手術後機能が回復するまで、数ヶ月以上かかります。また顔面神経は複雑な顔の表情を作る筋肉を支配する神経で、神経の過誤支配が起こり意図した表情を作るのは困難です。したがって、鏡を見ながら表情を作る練習やマッサージなどのリハビリテーションを行うことが重要になります。

義眼床再建-義眼床形成術

眼球や眼窩内容の摘出を余儀なくされた場合、眼窩に義眼を挿入することが必要になります。この義眼を挿入するスペースのことを義眼床と呼びます。 軟骨移植などで十分な土台を作り、皮膚移植や皮弁等を用いより自然な状態を目指し左右対称な眼窩の状態を再建します。

臨床研究
自家骨髄単核球を用いた脊髄損傷の治療法の開発(第1-2相)試験

抗がん剤投与後患者に対する治療

臨床研究とは
医学における治療の技術は、病気を治したり、症状を軽くしたりするという好ましい作用(治療効果)をもつ一方、好ましくない作用(副作用・合併症)が現れる場合もあります。治療技術には治療効果に優れ、副作用・合併症の少ないことが望まれます。新しい技術が患者さんの治療に使われるようになるまでに、次のようなステップを経ています。まず、動物を用いた好ましい作用、好ましくない作用等の研究や、技術の完成度に関する研究が行われます。その後、病気や症状に対して”どれだけ効くか”という「有効性」と、副作用・合併症がどれくらい現れるかという「安全性」について、患者さまの協力により試験すなわち臨床研究を行います。臨床研究の計画の内容は、研究に参加される方の人権や安全の保護及び科学性等について問題がないか、倫理委員会で十分に検討されます。臨床研究は、倫理委員会からの承諾ならびに病院長の許可を受けた後に行われます。

この治療の背景
悪性腫瘍は、我が国において昭和56年(1981年)より死因の第1位であり(厚生労働省「人口動態統計」)、継続的に医療を受けているがん患者数は140万人以上(厚生労働省「患者調査」(平成17年))と報告されている。自己免疫疾など悪性腫瘍以外の疾患でも抗がん剤を投与されることもあるため化学療法を受ける患者数は増加しており、また、組織移植手術後の免疫抑制剤内服患者や、抗がん剤内服による皮膚への色素沈着が指摘されています。
抗癌剤による皮膚色素沈着の原因として、皮膚基底層に存在する細胞の分裂が活発なため、抗がん剤による障害を受けやすいこと、また、メラニン色素を産生する細胞であるメラノサイトによる色素産生や紫外線に対する反応が亢進することが考えられていますが詳細は不明です。
皮膚は身体の内と外の境界にあり、皮膚表面に存在する角質層は物質が容易に透過できないバリアー機能を有しており、外からの異物の侵入や体内の水分の蒸発や体液の漏出を防ぐことにて体内の環境を守る働きをしています。
体外より角質層を経て薬物が経皮吸収される経路は主に細胞間を経由するのですが、角質細胞間にはリン脂質二重膜の多層構造が存在するため、角質層を通過し角質層深部の真皮層まで到達可能な物質は分子量約500以下の脂溶性物質に限られており、ほとんどの物質が通過できません。このため、皮膚深部まで薬物を浸透させる方法が検討されてきました。
近年、遺伝子導入に使用されてきたエレクトロポレーション法を用いて薬剤を経皮導入する方法が開発されました。
この方法では、皮膚に針をさすことがなく電圧をかけることで、痛みを伴うことなく、また、薬剤分子の大きさや荷電の状態に関係なく^高分子でも大量に経皮導入することが可能です。
薬物を経皮導入するメリットは、肝臓や腎臓の代謝を受けないので全身に対する影響が少なく効率よく薬物を導入できること、肝臓で代謝され効果を発揮できる成分の割合が低くなってしまうことがないこと、薬物の中止が容易なこと、経口剤と比較して服薬回数が減ることによりQOLの向上が得られます。
色素沈着の治療として、トラネキサム酸やアスコルビン酸(ビタミンC)の効果が報告されており、経皮導入することでより高い効果が得られることを期待できると考えています。

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