公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

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リンパ浮腫

リンパ浮腫

担当医 石川奈美子 医師
外来 リンパ浮腫外来(第2・4月曜日)

リンパ液の循環

体内を循環する血液は、動脈を通って末梢組織に循環し毛細血管より血管外に血漿成分が漏れ出すことで酸素や栄養を供給、老廃物を受け取ります。漏れ出した血漿成分の90%が再吸収され、静脈を通ってまた心臓に戻っていきます。
この時、血管外に漏れ出た血漿成分の10%(約2リットル)が毛細リンパ管で吸収されリンパ液となります。リンパ液はリンパ系という循環系に入り、リンパ節を通りながら心臓に向かって還流し肩の近くの静脈角という部分で静脈と合流します。

原因

手足のリンパ液が心臓に向かう還流が阻害されることで四肢にリンパ液が貯留しむくんだ病態をリンパ浮腫と呼んでいます。リンパ浮腫には原発性と続発性に分類されます。 原発性リンパ浮腫は、リンパ組織の形成不良と機能低下により発症すると考えられており、程度により発症する時期はさまざまです。
続発性リンパ浮腫は、リンパ節郭清を伴う乳癌や腹部の悪性腫瘍(子宮癌、卵巣癌など)による手術が我が国でのリンパ浮腫の主な原因です。他には、四肢の外傷や手術、放射線治療、熱帯地方で発症するフィラリア(線虫類)感染があり、外傷や放射線治療、手術後数年経過してから出現することがあります。
リンパ液の還流障害によりリンパ液がうっ滞するため、軽度の外傷で蜂窩織炎を起こしやすく、炎症を繰り返すたびにリンパ組織周囲に繊維化が進むことで浮腫が非可逆的になり進行していきます。最終的には皮膚の硬化を伴った象皮状態になり膝を曲げたり歩いたりしにくくなります。このため放置せず早期に治療を開始することが大切です。

治療

当院では医師、専門の看護師がチームとなり原発性リンパ浮腫や続発性リンパ浮腫の治療にも取り組んでいます。

治療の流れ

形成外科受診

ICGリンパ管造影検査によるリンパ浮腫の診断

インドシアニングリーン(ICG)という色素を皮膚の下に注射して、特殊なカメラで見ることでリンパ管の状態を可視化して観察します。

看護師指導によるマッサージ手技の取得や圧迫療法(複合的理学療法)

複合的理学療法の効果を検討しながら手術を決定

患者さんの社会的立場や状況に適した治療を計画しながら複合的理学療法と手術を行える数少ない病院の1つです。

複合的理学療法

当院において、医療リンパドレナージセラピストの資格を持った看護師による生活指導、スキンケア、マッサージや圧迫療法などを行っております。

弾性ストッキング

弾性ストッキング

手術

超微小血管外科の技術により、今までは不可能だった細い血管をつなげるようになり、体への負担が小さく優れた治療効果を有する手術療法が可能となりました。手術時にはカールツアイス社製のPenteroにICG観察装置を付けた手術用顕微鏡を用いて正確にリンパ管と細静脈を吻合します。

リンパ管と静脈を吻合した後のビデオです。リンパ液が静脈へ流れ込んでいる事を顕微鏡で確認しています。