公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

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眼瞼下垂症

眼瞼下垂症

担当医 鈴木義久 医師
外来 眼瞼下垂症外来(第2・4木曜日)

眼瞼下垂は、眼を開けようとしても上まぶた(上眼瞼)が十分に上がらず、瞳孔(黒目)の一部が隠れてしまう状態のことです。まぶたには眼球を支え守る役割をする瞼板という軟骨でできた組織があり、眼瞼挙筋というまぶたを引き上げる筋肉が付着しています。また、眼瞼挙筋の裏には眼瞼挙筋と一緒に瞼を開ける筋肉であるミュラー筋という薄い筋肉が走行しています。眼瞼挙筋は瞼板の近くでは挙筋腱膜と呼ばれる非常に薄い膜になっています。眼瞼挙筋が収縮し挙筋腱膜が引き上げられることで瞼板とともにまぶたが持ち上げられ眼が開くのです。眼瞼挙筋がゆるんだり、瞼板からはずれたりしてまぶたをうまく上げることができなくなるのが、眼瞼下垂です。

症状

眼瞼下垂になるとまぶたをうまく上げることができなくなり、瞳孔が隠れて見にくくなります。そうすると無意識に額の筋肉に力が入り、眉毛を上げてまぶたをつり上げるようにして見る癖がつくため額に皺がより、まぶた・眉間・目尻の皮膚も伸ばされますので、まぶたがたるみ二重のラインが乱れたりします。また、上眼瞼の脂肪が後方に引き込まれることになるので、まぶたがくぼむ原因になります。さらに頭痛や肩こりの原因になることもあります。
こうした眼瞼下垂は手術により治療することができます。手術により楽に目が開けられるようになり、美容的にも若々しい顔を取り戻すことができます。

左:正常 右:眼瞼下垂

原因

  • 加齢に伴う眼瞼挙筋のゆるみ
  • コンタクトレンズの長期装着
  • まぶたをこする習慣がある(アレルギー性結膜炎などによるかゆみなど)
  • 神経麻痺(動眼神経麻痺や重症筋無力症、顔面神経麻痺など)
  • 外傷など

種類

  • 後天性眼瞼下垂

    • 腱膜性弛緩性眼瞼下垂
      眼瞼挙筋腱膜の緩みや瞼板よりはずれることでまぶたを開ける力が伝わらない状態です。額の筋肉を使って瞼をあげようとしますのでおでこに皺が寄ります。
    • 皮膚弛緩性眼瞼下垂
      加齢により眼瞼挙筋と眼瞼の支持組織である瞼板や皮膚との間の結合が緩んで起こるもので、挙筋機能は良好なことがほとんどです。
    • 神経麻痺(動眼神経麻痺や重症筋無力症など)や外傷性
      挙筋機能自体に障害があり他の眼合併症や全身合併症を伴うこともあります。
  • 先天性眼瞼下垂

    生まれつき上眼瞼挙筋、ミュラー筋の発達障害や、筋肉の動きを支配する神経に異常があったりするために上眼瞼を十分に挙上できない状態です。
    ある程度開瞼できていたら視力の発達を観察しながら通常は3歳を過ぎてから手術を行います。きわめて高度な下垂に場合には弱視になる可能性がありますので早期に全身麻酔下で手術を行うことがあります。
    先天性眼瞼下垂が疑われたら早期に眼科を受診し視機能評価や合併症の有無を検査することが重要です。

治療

挙筋機能に障害がない場合には余った皮膚の切除術を行います。挙筋がゆるんだり瞼板よりはずれたりして挙筋の機能が瞼板にうまく伝わらない場合には、挙筋と瞼板を留めなおす挙筋短縮術や挙筋前転術を行っています。皮膚切開は二重まぶたのラインに沿って行う場合と眉毛の下で行う場合があります。
挙筋機能の程度や症状により手技が異なり、上眼瞼挙筋機能が重度に障害されている場合には前頭筋吊り上げ術を行います。前頭筋吊り上げ術は、おでこの筋肉(前頭筋)の力を利用してまぶたを動かす方法です。ゴアテックスという人工の膜や大腿四頭筋腱膜を使用することが多いのですが、太い糸を用いることもあります。