担当医 | 武田紘司 医師 |
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外来 | 木曜日外来 |
人間の血管には心臓から末梢に向かう動脈と末梢から心臓に帰る静脈があります。
下肢の静脈では血液が重力に逆らって心臓に戻りますが、これはふくらはぎの筋ポ
ンプ作用と静脈血の逆流を防止する弁のおかげで成り立っています。
この弁が破壊され静脈血が逆流するようになり静脈がこぶ(瘤)のように拡張し蛇行するようになったものが静脈瘤です。
弁が壊れる原因には遺伝や妊娠・出産、長時間の立ち仕事などがあります。初期にはふくらはぎの内側に青みを帯びたやわらかい瘤(こぶ)ができ、汚れた血液が足にたまるためにむくみやだるさ、こむらがえり、歩行時に下肢にだるさを感じて休みたくなることがあります(間欠性跛行)。重症になると、湿疹や静脈瘤より出血したり、皮膚が硬く茶色に変色したり、皮膚潰瘍を生じることがあります。この皮膚潰瘍は非常に強い痛みを伴い、軟膏治療を施してもなかなか改善しないことから、難治性皮膚潰瘍と呼ばれています。色素沈着や皮膚潰瘍のある方は手術を強くお勧めしております。
血液の逆流を防ぐ静脈弁が機能しているかを超音波検査(エコー)にてお調べします。この検査はゼリーを塗ってプローベと呼ばれる探子を当てるだけですので痛みはありません。また静脈の直径や逆流時間を調べて治療方法の選択の指標にしております。また過去または現在に深部静脈血栓症になっていないかを調べることも可能です。全体的に血管の病態を把握するために断層撮影を用いた血管撮影を行なうこともあります。
弁不全により深部静脈から血液が逆流している大伏在静脈の内部を、高周波(ラジオ波)を使用して焼灼して逆流を止める治療です。血管内へ挿入した細いファイバーの先端から血管内へ高周波を照射して血管壁の細胞を熱変性させることで血管を閉鎖します。ファイバーの先端7㎝ほどの部分全体が高熱になるため、血管壁が一様に閉鎖できる点で従来使用されてきた血管内レーザーよりすぐれています。傷口はカテーテルを挿入するための小さな開口部のみですので術後の疼痛・皮下出血は軽度で早期に日常生活への復帰ができます。
従来の手術では治療困難であった進行した下肢静脈瘤に対し、内視鏡を用いた筋膜下不全穿通枝切離術(SEPS)を行っている数少ない施設の1つです。
下肢静脈瘤が増悪し皮膚の硬化、うっ滞性皮膚炎や潰瘍を形成する場合には皮膚病変部の深部静脈と皮膚に近い部分にある表在静脈を結ぶ細い静脈の弁不全(不全穿通枝の存在)が原因の可能性があります。
色素沈着や皮膚潰瘍を起こした皮膚は非常にデリケートであり、そこに切開を入れるとなかなか治らないことがあります。しかし、SEPSでは病変のある皮膚に切開を加えず健常な皮膚から筋膜下層に内視鏡を挿入し潰瘍の原因となっている不全穿通枝を切離しますので新たな潰瘍の発生や創部の治癒遅延を避けることができます。当科では下腿の2ヶ所より内視鏡ポートを挿入する2ポート式SEPS(two port system-SEPS)を行っております。
当科では常に切開をできる限り小さくする努力をしており、一箇所あたりの切開は数mmと小さく傷あとは目立ちません。主に入院で治療を行ないますが、治療内容によっては日帰り治療も可能です。
新しい静脈瘤を作らないためにも術前術後に静脈瘤専用の医療弾性ストッキングによる圧迫療法が必要です。