公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

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脳ドック

脳ドックのご案内

日本の平均寿命は世界のトップレベルを誇っています。脳卒中はかつて日本人の死因の第1位を占めていましたが、予防的治療の普及や急性期治療の進歩によって2018年には第4位にまで低下いたしました。

一方で平均寿命と健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)の間には未だに約10年のギャップが存在しています。特に脳卒中は、「65歳以上の寝たきり原因の第1位」、「65歳以上の方が要介護になる原因の第2位」となっています。健康寿命の延伸のためには「脳卒中の予防と克服」が現在でも非常に重要な位置を占めています。

脳の神経細胞は、ほかの臓器と違って再生能力が乏しく、「損傷されると元通りに修復することがきわめて困難」です。従って、脳梗塞や脳出血などの神経系の病気は、発病してから治療するよりも、「発病する前に予防する」ことが重要です。

高齢化社会が進む中で、健康で溌溂とした生活を楽しむためには、脳の病気をなるべく早期に発見し、その進行を防ぐことが大切な心がけになってきます。

当院の健康管理センターでも脳疾患の早期発見を目的とした脳ドックを行っています。

脳ドックでは、経験豊富な脳神経外科医もしくは脳神経内科医のスタッフが結果の説明を担当します。必要に応じて各科外来へ受診予約し、アフターケアも万全の体制をとっています。皆様の健康管理のお役に立てることを心より願っております。

脳ドックのコースと検査内容について

日帰り検査が可能な「脳ドックコース」と1泊2日の人間ドックの「オプションとして選択する脳検査」があります。検査内容は脳MRI検査、頚部血管超音波検査、頚椎レントゲン検査が基本となっております。(*当院では認知症に関する検査は行っておりません)

以下のような方々に脳ドックをおすすめします。
  1. 高血圧・高脂血症・肥満・糖尿病・喫煙歴などのある方
  2. 頭痛、めまい、手足の脱力・しびれ等の神経症状のある方
  3. 家族に脳卒中や心筋梗塞の病歴がある方

対象疾患

脳の病気のうち、早期に発見し適切な治療を開始することで、その発病や進行の防止が期待できるような、以下の疾患を主な対象としております。

無症候性脳梗塞・脳出血

手足の麻痺や言語障害、認知症などの神経症候がなくてもMRIやCT等の画像検査で偶然に脳梗塞や脳出血が見つかることがあります。このような無症候性脳梗塞・脳出血のある方はない人と比べて後々脳卒中を発症するリスクが極めて高いことがわかっています。また、将来の認知症リスクが高まることもわかってます。無症候性脳梗塞・脳出血がある方には高血圧や高脂血症などの生活習慣病や不整脈などが隠れていることが多く、適切な予防治療が勧められます。

無症候性頚部・頭蓋内血管閉塞/狭窄

MRI検査や頚部血管超音波検査で頭頚部の太い動脈に狭窄や閉塞が見つかる場合があります。無症候性血管狭窄/閉塞は将来大きな脳梗塞を起こし、重篤な後遺症を残す危険性があります。頭頚部の無症候性血管狭窄/閉塞がある方は高血圧や高脂血症、糖尿病、喫煙などの脳卒中危険因子がある場合は厳重な管理が望ましいと言われています。また、高度の頚部頚動脈狭窄がある方には脳梗塞の予防治療としての外科的治療(内膜剥離術もしくはカテーテルによるステント留置術)が推奨される場合もあります。

未破裂脳動脈瘤

未破裂脳動脈瘤はくも膜下出血の原因になる疾患です。未破裂脳動脈瘤は30歳以上の方の3%以上で見つかるという報告があります。くも膜下出血は、突然の頭痛で発症し、死亡・高度後遺症を残す可能性の高い非常に危険な病気です。40~50歳代の働き盛りの方に多く、一度発症すると非常に重大な影響を及ぼします。脳動脈瘤が未破裂のうちに発見できていれば、破裂する前に予防的に外科的処置(開頭クリッピング術やカテーテル手術)を施してくも膜下出血のリスクを回避することが可能になる場合もあります。脳ドックではMRA検査を行って未破裂脳動脈瘤の検出に努めています。

脳動静脈奇形、海綿状血管腫、もやもや病

それぞれ余り聞きなれない病名かと思いますが、いずれも脳出血や脳梗塞の原因となりうる脳の血管異常です。脳ドックで偶然見つかることがあります。見つかった場合は専門医の診察を受け、適切な対応を検討することが望ましいとされています。

脳卒中の危険因子(高血圧・高脂血症・糖尿病など)

血液生化学検査や検尿、心電図検査によって高血圧・高脂血症・糖尿病・不整脈などの脳卒中の危険因子を発見し、各患者様に応じた生活指導や必要であれば内科での治療の提案などをさせていただいております。

無症候性脳腫瘍

脳卒中以外にも脳ドックで無症候性の脳腫瘍が見つかる場合があります。脳腫瘍には神経膠腫、髄膜腫、下垂体腫瘍などの多くの種類があります。見つかった場合の適切な対応については腫瘍の種類によって異なりますので専門医の診察を受けるのが望ましいとされています。脳腫瘍についての詳しい説明は別に設けてある脳腫瘍の項目もご参照ください。