当院は日本脳卒中学会に「一次脳卒中センター」として認定されており、24時間365日、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中患者様を受け入れ、脳卒中担当医師がtPAや血栓回収術を速やかに開始することができます。当院では脳神経外科と脳神経内科が連携して脳卒中センターを運営しており、5名の脳卒中専門医、4名の脳神経血管内治療専門医が常勤医師として勤務しています。脳卒中ケアユニット(SCU)は9床と大阪府下でも大きな規模です。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、薬剤師がチーム医療を行い、患者様の早期の社会復帰に向けた治療にあたっています。
脳血管内治療はカテーテルを用いた頭部を切らない治療で近年急速に進歩しています。脳梗塞に対する血栓回収術、脳動脈瘤に対するコイル塞栓術、頸動脈狭窄症に対するステント留置術などがあります。当院ではこの治療を積極的に行っており、患者様の得られる利益や治療のリスクが開頭手術と同等の場合、脳血管内治療を第一におすすめしています。
脳動脈瘤は脳を栄養する血管の分かれ目がこぶ状に膨らんだもので、多くは原因不明です。破裂していない状態(未破裂脳動脈瘤)では、ほとんど症状をきたすことはありません。しかし大型の未破裂脳動脈瘤では、周囲の神経組織の圧迫により症状(ものが二重に見える、視力が低下するなど)をきたすこともあります。
未破裂脳動脈瘤は脳ドックなど画像検査で偶然指摘されることも多く、近年増加しています。動脈瘤を治療するか経過をみるかは、年齢、瘤の大きさ、場所などから破裂のリスクを検討し、充分相談した上で決定します。
万が一未破裂脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血を引き起こします。一旦くも膜下出血を起こすと死亡や重度の後遺症を残すことも多く、当院では24時間体制で緊急治療ができる体制をとっています。
動脈瘤の治療には大きく分けて、開頭手術と脳血管内治療の2通りの治療法があります。開頭手術は、直接に頭蓋骨に穴を開けて動脈瘤を露出してクリップをかける方法です。脳血管内治療は、足の付け根や腕の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を頭まで誘導し、血管の中から瘤内にコイルを充填させ血流を絶つ方法です(詳細は下の治療のQ&Aを参照して下さい)。
脳梗塞は突然脳の血管がつまることにより、その先にある脳組織が死滅し機能を失う病気です。症状は「突然片方の手足の力が入らない」「ろれつがまわらない(言葉がうまく話せない)」「片目が突然真っ暗になって見えにくい」等が代表的なものです。脳が完全に死滅する前に治療を行えば症状が改善する可能性があるので、治療は可能な限り早く始めることが重要です。
発症後4.5時間以内であれば「t-PA治療」(血栓を溶かす薬)を行います。更に、発症から24時間以内であれば、カテーテルを用いて血栓を除去する「血栓回収術」を行うこともあります。これらの治療にはたくさんの医療スタッフが必要で、当院では24時間体制でt-PA治療および血栓回収術を行うことが可能です。
脳の血管が詰まる原因には、血管の加齢現象である動脈硬化や心房細動などの不整脈があります。動脈硬化を予防するためには、高血圧、糖尿病、肥満、脂質異常症などの生活習慣病を正しく治療することと禁煙が重要です。心房細動などの不整脈については当院の循環器内科と相談して治療を行います。
右中大脳動脈が閉塞していたが(矢印)、t-PA治療および脳血管内治療により再開通が得られた。速やかに症状は改善し最終的に症状はほぼ消失した。
ステント型血栓回収機器で回収された血栓
かつては「脳いっ血」と呼ばれた、脳の細い血管が破れ脳の中に出血する病気です。出血した部位の脳組織が壊れ、血の塊が周りの脳組織を圧迫することにより神経機能が障害される疾患です。高血圧が原因のことが多く、脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻が原因のこともあります。出血の大きさや部位、症状に応じて救命目的で緊急手術を検討します。手術は開頭手術や神経内視鏡を用いた手術を行っています。
先天性の脳血管の奇形であり、動脈と静脈の間に異常な血管網ができる疾患です。症状をきたすことは多くありませんが、脳内出血や痙攣発作を来すことがあります。また、脳ドックなどにより偶然発見される場合もあります。脳内出血を起こした場合には治療が必要となります。病状に応じて開頭手術、脳血管内治療、放射線治療を組み合わせた治療を行っています。
ⅰの場合は半年から1年毎に画像検査を行い、脳動脈瘤の大きさや形状の変化の有無を検査します。血圧コントロールや禁煙が重要です。
ⅱの場合は、開頭手術で動脈瘤にクリップをかける方法と、カテーテルと塞栓物質(コイル)を用いて動脈瘤を内部からつめてしまう二つの方法があります。開頭手術は確実性が高いとされますが、体への負担や患者様の精神的負担も大きいと考えられます。脳血管内治療は非常に細いカテーテルを病変まで誘導し、病変にコイルを充填させて血流を絶ち出血を予防するものです。前述のように、当院では患者様の得られる利益や治療のリスクが開頭手術と脳血管内治療が同等の場合、脳血管内治療をおすすめしています。部位や形状によっては脳血管内治療のほうがリスクが高くなることがあり、開頭手術をおすすめすることもあります。脳動脈瘤の形状や場所を正確に判断するために、造影CTや脳血管撮影検査などの精密検査を行った上で総合的に判断し、最も適した方法を選択します。
適切な治療法については担当医師と詳しくご相談ください。また、セカンドオピニオンの制度もありますのでご利用ください。
脳血管内治療の一例
破裂脳動脈瘤に対して脳血管内治療(コイル塞栓術)を行い、動脈瘤内にコイルを充填した。術後動脈瘤内への血流は消失した。
開頭手術の一例
動脈瘤の壁は一部で薄くなっている。動脈瘤を露出し周囲の血管を残してクリップによって動脈瘤内に入る血流を遮断した。