公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院

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【初診外来受付時間】8:45~11:30(※紹介状や予約が必要な診療科をご確認ください)
【休診日】第2・4土曜、日曜、祝日、年末年始 【面会時間】感染対策のため原則面会禁止

脳腫瘍

脳腫瘍

髄膜腫、聴神経腫瘍(聴神経鞘腫・前庭神経鞘腫)、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫などの頭蓋底腫瘍に対する手術を行ないます。

神経膠腫や膠芽腫、転移性脳腫瘍は腫瘍細胞の遺伝子検査を行い、また腫瘍内科・放射線治療科と連携し集学的に治療します。

さらに頸椎から仙椎まで脊椎(背骨)の腫瘍、脊髄腫瘍の専門的手術治療を行います。

手術の必要性は症状、神経学的異常所見、CTやMRIの画像検査、また生理検査の結果を元に判断しています。

安全な手術を行うため、神経モニタリング、ナビゲーションシステム、高精度顕微鏡(オーブアイ)、神経内視鏡、術中蛍光診断インドシアニングリーン(ICG)5-アミノレブリン酸(アラベルR)、さらに覚醒下手術まで手術支援の装置やシステムを用いています。

聴神経腫瘍は耳鼻咽喉科と連携して治療しています。

胚細胞腫瘍など小児脳腫瘍は、小児科と連携し手術だけでなく末梢血幹細胞移植を用いる大量化学療法の治療が行われています。当院は小児脳腫瘍全国登録施設です。

髄膜腫

髄膜腫は脳ドックなどで偶然見つかることもある良性脳腫瘍です。ご年齢、症状の有無、大きさ、部位などをふまえて診療します。

頭蓋底髄膜腫

頭蓋底に発生する髄膜腫は、視神経などの脳神経や脳の血管、脳の中央部分を圧迫しながら大きくなります。頭蓋底髄膜腫が大きくなると、摘出手術は高度な手術装備や技術を要します。当院は、頭蓋底髄膜腫の治療経験が豊富で、頭蓋底手術の技術を用いた治療法を提案しています。

聴神経腫瘍(聴神経鞘腫・前庭神経鞘腫)

聴力に関係する神経(蝸牛神経)と並行する前庭神経から現れることが多い腫瘍で、発症時には聴力が障害されていることが多く、耳鼻咽喉科で指摘されることが一般的です。腫瘍が大きくなると三叉神経、顔面神経、舌咽神経、さらに小脳の機能が障害され、また水頭症を併発します。手術による摘出に加え、定位放射線治療、あるいは手術と定位放射線治療の組み合わせ、さらに経過観察の選択肢があります。

大型の聴神経腫瘍では顔面神経や他の脳神経の機能障害を起こさずに摘出するには高度な手術装備や技術を要します。当院は顔面神経や三叉神経を対象とする豊富な治療経験をもち、聴神経腫瘍が発生する場所での手術を多く行っています。また耳鼻咽喉科と連携した手術も行います。

下垂体腺腫

下垂体は脳の一部で成長や乳汁分泌に関係するホルモンを産生・分泌します。甲状腺や副腎皮質、性腺の働き、また利尿の調整を行うホルモンも分泌されます。この下垂体に腫瘍が発生すると下垂体腺腫となります。下垂体のホルモンを分泌する下垂体腺腫と、分泌しない下垂体腺腫があります。

乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)産生性下垂体腺腫

下垂体ホルモンのうち、乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)を産生する細胞が腫瘍化したもので、全下垂体腫瘍の約25-30%を占める腫瘍です。女性では無月経や月経不順、乳汁分泌、男性ではED、乳汁分泌が主な症状です。男性では腫瘍がかなり大きくなるまで気付かれないことがあり視力視野障害をきたすこともあります。MRI、CT検査、血液検査による乳汁分泌ホルモン値測定で確定診断がされます。治療はカベルゴリンなどの内服薬でホルモン値の改善や腫瘍の縮小が期待できため、まず内科的治療を行います。内服は短くとも数年以上必要とし、また副作用として吐き気、便秘などの消化器症状が現れることがあります。さらにカベルゴリンの長期服用で心臓の弁が硬くなり動きが悪くなる弁膜症を起こすことがあり、長期服用では定期的に心臓検査が必要です。視力・視野障害、下垂体卒中、また内科的治療の効果がない場合、内科的治療で副作用がある場合などは手術が選択されます。

成長ホルモン産生腺腫

下垂体ホルモンのうち、成長ホルモンを産生する細胞が腫瘍化したもので、下垂体腺腫の約20-25%を占める腫瘍です。成長ホルモンが過剰に産生されるため、巨人症や末端肥大症を呈し、高身長や特徴的な顔貌、手足容積の増大をはじめとする容姿が変化しています。また高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、大腸がんの発生など様々な合併症を伴います。これらの全身合併症が寿命を縮めるため治療が必要です。治療を行い血中の成長ホルモンの値を低下させると合併症を改善出来ます。治療の第一選択は手術摘出です。全摘出が難しい場合は、残存腫瘍に対して放射線治療、サンドスタチン(酢酸オクトレオチド)、ソマチュリン(酢酸ランレオチド)、ソマバート(ペグビソマント)、シグニフォー(パシレオチドパモ酸)などの注射製剤、パーロデルやカバサールなどの内服製剤で成長ホルモンを低下させます。

ACTH産生腺腫(クッシング病)

下垂体腫瘍の約5%を占め、満月様顔貌、中心性肥満、高血圧、糖尿、筋力低下などが主な症状です。治療は手術摘出が第一選択となります。定位脳放射線治療の有効性も報告されていますが、長期的には下垂体機能低下を起こす危険性があります。

ホルモン非産生性下垂体腺腫(非機能性腺腫)

ホルモン産生過剰による症状出現がないため、多くの場合腫瘍が増大し、視神経を圧迫し、視野の欠損や視力低下で発見されます。

CTやMRI検査と血液検査で下垂体ホルモン値を測定し診断を確定します。脳ドックで偶然発見された場合は画像経過観察を行うことが一般的です。視力視野障害を伴う場合、増大傾向を示している場合、下垂体卒中を起こした場合は手術が必要です。

当院は日本間脳下垂体腫瘍学会の経蝶形骨下垂体手術見学実習可能施設です。内分泌内科と連携し治療にあたっています。

手術は、日本神経内視鏡学会技術認定医が神経内視鏡を用いた内視鏡的経鼻腫瘍摘出術を行います。鼻孔から内視鏡を挿入して蝶形骨洞を経由して腫瘍に到達するので、体表に傷跡が殆ど残りません。内視鏡で広い視野を確保し、安全に最大限の腫瘍摘出を行います。巨大な下垂体腫瘍では、合併症発生率が高くなるため、内視鏡的経鼻手術と開頭術の同時併用手術に用いています。

頭蓋咽頭腫

胎生期の頭蓋咽頭管の遺残から発生し原発性脳腫瘍の約3%で(年間10万人に0.3人程度)、好発年齢は小児期と成人期に二つのピークがあります。症状は、視野視力障害、下垂体機能不全などで、小児では低身長などがあります。治療は手術にてできるだけ摘出し、腫瘍が残れば放射線治療(定位脳放射線治療を含む)を追加します。良性腫瘍ですが、発生部位が視床下部など重要な場所に隣接しているため治療は簡単ではありません。

神経膠腫(グリオーマ)

神経膠腫は脳の中の神経膠細胞(グリア細胞)から発生し、原発性脳腫瘍の約30%を占めます。代表的な腫瘍は膠芽腫、星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫です。神経膠腫は悪性度の低いグレード1から悪性度が高いグレード4に分類されます。

診断には、通常の病理検査に加え、当院では腫瘍細胞の遺伝子検査を専門機関に依頼しています。当科では年間平均約30人の神経膠腫の方の治療実績があります。

低悪性度神経膠腫

毛様性星細胞腫(グレード1)、びまん性星細胞腫(グレード2)や乏突起膠腫(グレード2)などが含まれます。最大限の腫瘍摘出が予後を改善するとされています。一方で手術合併症を低くするよう心がけています。モニタリングや覚醒下手術で最大限の安全な腫瘍摘出を行います。残存腫瘍に放射線治療やテモゾロミド(テモダール)などの抗がん剤を用いることがあります。

悪性神経膠腫

退形成性星細胞腫(グレード3)、退形成性乏突起膠腫(グレード3)、膠芽腫(グレード4)などが含まれます。

治療は手術による最大限の摘出と、抗がん剤であるテモゾロミド(テモダール)と放射線治療を用います。ベバシズマブ(アバスチン)を用いることもあります。さらに、手術の際に用いるカルムスチン(ギリアデル)や、オプチューンR(Novo TTF)という機器を用いた治療も行なっています。

上衣腫

上衣腫(グレード2)と退形成性上衣腫(グレード3)ともに、手術で全摘出を目指します。脳脊髄液内に腫瘍細胞がばらまかれ脳脊髄に病変が拡大する播種という現象が10%程度に見られます。退形成性上衣腫(グレード3)は悪性神経膠腫と同様の放射線化学療法を行います。

転移性脳腫瘍

がんの脳への転移は、全がん患者さんの20~40%程度でおき、また脳腫瘍全体の20%が転移性脳腫瘍です。肺がん、乳がんの脳転移が多く、大腸がんや腎がん、膀胱がんからの転移も遭遇します。転移性脳腫瘍に抗がん剤が効かない場合は手術や放射線治療を行います。原発巣の診療科、放射線科、腫瘍内科と協力し治療を行います。

原発性中枢神経系悪性リンパ腫

原発性脳腫瘍の約3%を占め、高齢者に多く近年患者さまが増えています(年間10万人に0.3人)。ほとんどがB細胞リンパ腫です。脳の様々な場所に発生し、浸潤性多発性で記憶の低下や意識障害で見つかることもあります。治療法は手術による生検で診断を確定し、抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせます。血液内科と連携し、(多剤併用)メソトレキセート(MTX)大量療法、抗CD20モノクローナル抗体でありB細胞リンパ腫を攻撃するリツキシマブ(リツキサン)やブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬であるチラブルチニブ(ベレキシブル)を用いる治療が行われています。

胚細胞腫瘍

ジャーミノーマ(胚腫)、胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、奇形腫、混合性胚細胞腫瘍の6つの種類の脳腫瘍をまとめて胚細胞腫瘍とよびます。

小児脳腫瘍の15-20%を占める腫瘍です。男児に多く成人での発症は稀です。

好発部位は松果体部、下垂体近傍で、松果体部発生では上方注視障害や水頭症を伴い、下垂体近傍発生では尿崩症、視野視力障害、下垂体機能不全を伴います。

ジャーミノーマ、成熟奇形腫は予後良好です。成熟奇形種だけが手術のみで完治可能です。そのほかの胚細胞腫瘍には放射線化学療法を用います。

海綿状血管腫

海綿状血管腫は、顕微鏡で観察すると “海綿” すなわちスポンジのような構造がみられるためこの名前で呼ばれます。病名に「腫」という名前が付きますが、厳密には腫瘍ではなく血管奇形の一種と考えられています。従って、他の腫瘍のように腫瘍が細胞分裂により急に大きくなることは稀で、血管腫の内部や外部に出血を繰り返すことにより増大し、神経症状や痙攣などを引き起こすことがあります。出血のない無症状の海綿状血管腫の治療は不要ですが、出血を繰り返すものは危険なので手術で摘出する必要があります。特に脳幹部の血管腫が出血した場合は要注意で、再出血の頻度が年間30%以上と高率とされています。脳幹は非常に重要な部位であるため手術には一定のリスクを伴いますが、頻回の出血のため極めて重篤な後遺症が危惧される場合は手術を考慮します。