脳神経内科について
ご挨拶
神経センター一同
このたび、大阪赤十字病院より転任いたしました脳神経内科主任部長の髙橋牧郎です。グローバルな視点で脳神経内科の運営を目指して参りますので、どうぞよろしくお願いします。
北野病院は1925年(大正14年)に実業家 田附政次郎氏による京都帝国大学医学部への学術研究助成により1928年に京都帝国大学の附属施設として創設され、約100年の歴史のある病院です。戦後の一時期にGHQに接収されましたが、1950年に再開し、1980年(昭和55年)大阪で初の神経内科が設立されました。
神経内科部門(脳神経内科)では初代 今井輝國部長、二代目 日下博文部長、三代目 松本禎之部長の40年にわたる輝かしい業績、伝統を引き継ぎ、髙橋牧郎が2021年(令和3年)、四代目部長として着任いたしました。脳神経内科における確かな医療技術を引き継いでいくとともに、地域の先生方や全国の神経難病に悩む患者さんに信頼される、大阪の中核的な脳神経内科を目指してまいります。
脳神経内科で扱う病気は、裾野が広く、脳卒中、てんかん、多発性硬化症、脳炎などの神経感染症、意識障害などの神経救急疾患から、パーキンソン病、認知症などの神経変性疾患まで、さらに中枢から末梢神経、筋肉まで全身に及ぶ疾患を扱います。必ずしも血液検査や画像検査だけでは正しい診断ができないことが多いという点で、一般内科的疾患と異なっています。脳神経内科学の正しい知識と経験、技術を持った専門医が、神経学的手法に基づいて診察を行い、的確な局在・鑑別診断を行い、迅速に治療・対応する必要があります。
当院脳神経内科は日本神経学会認定教育施設であり、5名の専門医を有し、10名のスタッフとともに、ほぼすべての脳神経内科疾患の診療を行っています。また、京都大学、関西医科大学の医学生の実習を受け入れ、教育指導も行なっています。脳神経外科と共同で神経センターを運営しており、One Teamで対応します。脳血管障害は脳卒中センター(SCU)を構成し、24時間365日体制で患者さんの診断・治療を行っております。
脳卒中急性期の患者さんは夜間や休日を問わず頭部MRIが撮影可能で、超急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法(t-PA)や血管内血栓回収療法(IVR)も脳血管内治療学会専門医を中心に施行しております。
当院脳神経内科では神経難病患者さんの受診数が関西でトップクラスであり、特にパーキンソン病は薬物療法により個々の患者さんに応じたきめの細かい治療を行なうよう努めています。薬物治療に抵抗性の場合も、適応があれば脳神経外科と協力して、深部脳刺激術(DBS)、MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)を全国に先駆けて導入し、治療にあたっています。重症筋無力症は呼吸器外科と協力して適応例について拡大胸腺摘出術を行い、良好な成績を得ています。
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症を始めとする認知症は根治的治療はできませんが、症状を緩和する対症療法、薬物治療を早期から行うことで進行を緩やかにすることが可能です。ご家族の意見を尊重し、デイケアやグループホーム在宅医療などの橋渡しができるように心がけています。
てんかん、慢性片頭痛など、発作性疾患に対しても脳波、画像診断を行い、適切な治療を心がけています。てんかんは新規抗てんかん薬が続々と開発されており、副作用の少なく効果の高い薬剤を使用し、経験を積んだ医師が処方します。難治性頭痛に対しても、頭痛専門医である主任部長の髙橋を中心にトリプタンや抗てんかん薬などを用い、症状をコントロールします。さらに、頭痛の原因物質の1つであるCG RPの抗体製剤による治療も導入します。
多発性硬化症や視神経脊髄炎をはじめとする神経免疫疾患の診断・治療など多岐にわたる神経疾患の診断・治療も行っています。これらの疾患は続々と再発抑制薬や進行抑制薬が開発されており、最新の薬物治療が行える体制を整えています。また、ギラン・バレ症候群や慢性炎症性多発神経根炎(CIDP)などの炎症性末梢神経障害に対しては急性期に的確な電気生理学的検査、髄液検査等を行い、症状に応じて大量ガンマグロブリン治療やステロイド治療、血漿交換療法などを行い、良好な成績が得られています。
我々脳神経内科医は神経難病患者さんの心に寄り添い、患者さんのニーズにあったきめの細かい医療提供することを心がけています。地域の先生方と連携を密にして、在宅医療やリハビリテーション施設、療養施設との連携をさらにて深め、患者さん、ご家族の立場に立った総合的な医療を目指しています。
特色・取り組み
- 脳神経内科疾患は、問診と神経学的診察から可能性のある疾患を正しく把握し、その上で必要な検査を受けて頂いています。
- 頭部CT、MRIなどの画像診断、脳血流シンチ(SPECT)、MIBG心筋シンチグラフィー、ドパミントランスポーターシンチグラフィー(DAT scan)、PETを用いた核医学的診断、脳波、筋電図、誘発電位、神経伝導速度検査等の生理学的検査を行っています。
- 神経難病の1つであるパーキンソン病やふるえが強い本態性振戦は、薬物療法を基本としますが、適応があれば脳神経外科と共同で手術的治療(定位脳手術:視床下核/淡蒼球内節脳深部刺激術:STN/Gpi-DBS)を行い、良好な成績を得ています。さらに、全国に先駆けてMRIガイド下での集束超音波治療(MRgFUS)が可能となり、視床のVim核に超音波を集めて熱焼灼することでパーキンソン病や本態性振戦によるふるえの治療が切らずに可能となりました。症状の日内変動(on-off)の強い患者さんに対しては、今後は消化器内科と協力して胃瘻を造設し、精密にレボドパをポンプで小腸に注入する経腸ゲル化レボドパ/カルビドパ持続注入療法(LCIG)を導入して症状の安定化を目指します。
- 重症筋無力症の治療は呼吸器外科と協力して行います。脳神経内科で入院後、検査、確定診断を行い、手術適応の有無を判断し、必要な患者様は呼吸器外科で拡大胸腺・胸腺腫摘出術を行います。術前・術後のステロイド、免疫抑制剤による薬物治療によるコントロールは脳神経内科が担当します。難治性の場合はエクリズマブなどの効果の高い薬剤を用いて治療が可能です。
- 脳梗塞は時間との戦いであり、発症から4~5時間内に病院に到着すればt-PA薬を注射する血栓溶解療法、6~12時間内での頭蓋内血管の閉塞の場合、カテーテルによる血栓回収療法を施行することが可能です。脳卒中センター24時間365日対応できる体制を取っています。生活習慣病に対する指導や脳塞栓症の場合には循環器内科と協力して心電図モニター長期モニターによる心房細動など、心源性脳塞栓症の原因となる疾患を探り、抗凝固薬による治療を行います。
- 脳神経内科では杖歩行や車いすを利用する通院困難な方のために、複数の病院および診療所・医院と連携し、訪問診療を行うシステムを開始しています。独居の方やご家族の状況など様々な理由で通院困難な方はご相談下さい。
講演会開催報告
読売健康講座:「もっと知ろう!パーキンソン病の治療」
2016年11月23日開催
2017年5月10日開催
治療について
治療実績
2017年度 | 患者数(年) |
---|---|
外来 | |
初診 | 2830 |
再診 | 13606 |
入院 | 977 |
疾患別 | |
脳血管障害 | 232 |
神経変性疾患 | 402 |
パーキンソン関連疾患 | 350 |
その他変性疾患 | 52 |
てんかん | 74 |
免疫関連性中枢神経疾患 | 50 |
末梢神経疾患 | 46 |
筋疾患 | 28 |
その他 | 120 |
第95回 学術講演会
ふるえ・パーキンソン病に対する新たな治療法をテーマに、京都大学と北野病院の共催により開催しました。全編公開しておりますのでぜひご視聴ください。
各講演内容と講師の詳細につきましてはリンク先のページをご確認ください。