卵巣嚢腫、子宮内膜症、子宮外妊娠、粘膜下筋腫などの良性疾患については、お体への負担の少ない低侵襲性手術を心がけ、積極的に腹腔鏡下手術や子宮鏡下手術(レゼクトスコ-プ)といった内視鏡下手術を行っています。腹腔鏡下手術は、お腹に小さな穴を開けるだけで、卵巣嚢腫や子宮筋腫を手術できます(腹腔鏡下付属器腫瘍摘出術、腹腔鏡下子宮筋腫核出術)。当科ではすでに多くの症例を経験しており、痛みが少ない、傷がめだたない、早く退院できるなど患者様の心と身体に優しい治療です。大きな子宮筋腫には術前にホルモン療法(偽閉経療法)を行うことにより、腹腔鏡手術が可能になったり、腹腔鏡が無理で開腹術をする場合でも、小さなキズでの手術が可能になります。子宮筋腫などの良性疾患で子宮摘出を必要とする時は、お腹を切らない腟式子宮全摘あるいは腹腔鏡下子宮全摘を第一選択とするように心がけています。
子宮鏡下手術は、レゼクトスコープを用いて粘膜下筋腫(子宮の内側に飛び出すタイプの筋腫)や子宮内膜ポリープなどの手術を行います。下半身麻酔(腰椎麻酔)で行え、入院期間はわずか3日間で済みます(ただしこれも、大きめの筋腫には術前ホルモン療法が必要です)。
悪性疾患である子宮がん/卵巣がん/腹膜がんの手術では、患者様のQOLの低下をなるだけ少なくすると共に、がんに対して十分な効果が得られる治療を行います。 子宮頸がんの基本的な手術である広汎子宮全摘では、この手術の大きな副作用である排尿障害をできるだけ少なくする骨盤神経温存を早期症例に対しては採用しています。この広汎子宮全摘術に関しては現在腹腔鏡で行うことも可能です(高度先進医療)。また若い患者さんの子宮頸がんに対しては、腹式広汎性子宮頸部摘出術(トラケレクトミー)という妊娠の可能性を残す手術を、多数の症例に施行している実績があります。この手術を行う場合、リンパ節転移の有無の診断が極めて大事ですので、センチネルリンパ節検索(別掲)という先進的な対応も行なっています。
子宮体がん(内膜がん)に対しては、早期症例に対する腹腔鏡下手術は保険診療で施行可能です。ただし比較的進行した子宮体がんでは傍大動脈リンパ節という臍よりも頭側のリンパ節も調べたほうが良いのですが、この場合通常恥骨からみぞおちまでの大きな縦切開を行う開腹手術が必要です。この手術に関しても腹腔鏡での手術を行うべく現在準備をしております。若年できわめて初期の体がんには、ホルモン治療でのフォローも適応を考えています。
卵巣がんは残念ながら進行したケースが多いのですが、そのような状況でも、可能な限り腫瘍を摘出した上で化学療法を行うことが重要であるとされています。当院では必要に応じて腹部外科・泌尿器外科と連携して最大限の治療効果を得られるよう治療を行っています。
がんの治療では抗がん剤治療が重要な役割を果たしています。当院ではどのような抗がん剤を用いるかを産婦人科医と腫瘍内科医が協議することにより、個々の患者さんに最も適した治療を選択しています。この抗がん剤治療は外来で行うことも可能で、多くの患者さんが通院治療されています。外来化学療法室にはテレビも設置され、すごしやすい環境整備がなされていますので安心して受けていただけます。
悪性疾患に対する放射線治療も放射線科との協同で積極的におこなっています。子宮頸がんの治療にとっては、広汎子宮全摘術とともに強力な武器です。また、子宮頸がん、体がんや卵巣がんの再発にも適応され、新しい抗がん剤とともに病気のコントロールに大いに役立っています。
※子宮頸がんに加えて子宮体がんにおいてもセンチネルリンパ節生検検査を行えるようになりました。(2011/10/20)
初めにがんができた場所(原発巣)から、身体の他の部分にがんが拡がることを転移といいます。
大きく分けて、血液の流れ、リンパ液の流れの二つのルートでがんは拡がります。リンパ液の流れの中に出たがん細胞が、リンパ節というところに流れ着いて、そこで増殖した状態をリンパ節転移といいます。子宮頸がん・体がんは血液の流れに乗るよりも、リンパ液の流れに乗って転移しやすいとされている病気です。
“見張りリンパ節”、”前哨(ぜんしょう)リンパ節”などとも呼ばれています。『がん細胞がリンパ液の流れに乗って最初に到達するリンパ節』のことです。したがって、がんのリンパ節転移は、まず最初にセンチネルリンパ節に起こることになります。
このセンチネルリンパ節を、手術中に調べて転移の有無を診断する、ということによってその手術の方針に大きな影響を与えられます。
センチネルリンパ節検査は乳癌ではすでに臨床的に広く導入されており、子宮頸がんや体がんにおいてもすでにいくつかの研究成果がだされ、有用性が示されてきています。
当産婦人科では、子宮頸がんの「センチネルリンパ節」と呼ばれるリンパ節を見つけ出して摘出する研究を行ってまいりました。さらに子宮体がんについての研究もできるようになりました。 センチネルリンパ節は原発巣から初めに流れを受けるリンパ節であるため、これを見付けて詳しく調べることができれば、小さなリンパ節転移も見逃さず摘出することが出来ます。
また、センチネルリンパ節を検査して転移がなければ、他のリンパ節には転移がないと考えられます。現在、子宮頸癌についてはセンチネルリンパ節に転移が無ければ他のリンパ節は摘出せず、手術による副作用(リンパ浮腫など)を減らすことが出来るようになっています(左側と右側、それぞれでセンチネルリンパ節が見つかって転移がなければ、センチネルのみ摘出で終了。左右どちらかセンチネルが見つからない場合は、その側のリンパ節郭清をしなくてはなりません)。
子宮体癌については、現在の段階では、センチネルリンパ節を検査で確認し詳しく転移の有無を調べますが、従来通りのリンパ節郭清はまだ必要です。しかし、リンパ節郭清の仕方の強弱を調整できるようになりましたし、手術中に、今までは発見できなかった小さな転移を発見することによって、治療方針に大きな影響を与える決定ができるようになっています。
現在この検査を行っているのは、近畿地方では当院だけです。
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産科病棟の入院ベッド(20床)は全て個室対応で、出産後は母子の心身の状況に合わせて母子同室において母乳育児を推進しております。また、分娩から産後の全ての時期に助産師(33名)によるきめ細やかなケアを提供して、安全かつアメニティの高いお産をめざしております。(入院時各種アメニティグッズ、退院時にはオリジナルアルバムや育児日誌をご用意しております)
分娩室4室はLDR※対応で、陣痛から出産まで同じ部屋で過ごしていただき、従来の出産時に分娩室への移動の煩わしさ、及び従来の無機質的な分娩室ではなく、ご家庭において心和やかに出産をしていただけるような環境の下、妊婦様が出産時の不安から解放され安心してお産をしていただけます。
※LDR
L=Labor(陣痛)、D=Delivery(分娩)、R=Recovery(回復室)の頭文字で、別々だった各部屋を同一の部屋で行うシステムのこと。陣痛がピークに達してから、陣痛室から分娩室に移動する必要がありません。
自然分娩を基本にしながら、安全性の高い分娩を医師と助産師の協働で目指しております。また分娩時の陣痛やリラックスに役立てるため、さまざまな方法を取り入れております。
産科病棟にはMFICU(母体・胎児集中治療室)2床を設置、緊急時の受け入れ体制を整備し、また8階の小児病棟にはNICU(新生児集中治療室)12床、GCU(保育治療室)6床を有し、万が一の異常分娩の際にも、生まれてくる赤ちゃんに対して産科、小児科が連携して万全の体制を整えております。
OGCS(産婦人科緊急搬送システム)準基幹病院として、また総合病院として、お母さん・生まれてくる赤ちゃんに対し全科が常時対応できる体制になっております。
当院では産前、産後のサポートとして、妊婦指導、助産師外来、マタニティーヨーガクラス、両親学級、出産準備クラス、母乳相談等を行っており、妊産婦の心身のケアの充実を図っております。