公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院

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広報/プレスリリース

ふるえ・パーキンソン病に対する新たな治療法について

これまで本態性振戦やパーキンソン病のふるえ(振戦)、また振戦以外のパーキンソン病の症状が内科的治療に抵抗性の場合には、脳深部刺激療法に代表される定位脳手術で治療が行われてきました。しかし従来の手術は頭蓋骨の穿頭や電極挿入が必要で、より低侵襲な治療法の開発が望まれていました。

今回北野病院(院長 吉村長久 京都大学名誉教授)では、脳神経外科 戸田弘紀 主任部長、西田南海子 同副部長、脳神経内科 松本禎之 主任部長が、京都大学大学院医学研究科脳神経外科 宮本享 教授、同脳神経内科 高橋良輔 教授、同人間健康科学系専攻 近未来システム・技術創造部門 澤本伸克 教授、大阪赤十字病院 脳神経内科 高橋牧郎 主任部長の診療グループと共同し、穿頭や電極挿入を行わない「きらない」手術であるMRIガイド下集束超音波治療法(FUS)を田附興風会北野病院に導入しました。北野病院ではこれまでも脳深部刺激療法ほか様々なニューロモデュレーション治療に取り組んでおり、西日本ではこのようなニューロモデュレーションセンターがMRgFUSを導入するのは初めてです。

北野病院・京都大学の診療グループでは、本態性振戦やパーキンソン病に対して、これまでの内科治療、定位脳手術、デバイス治療にFUSの治療選択肢を加え、包括的な治療を展開すると同時に、現在治験中のiPS細胞移植治療など新たな治療法を開発し、病型に応じた治療の最適化を検討していく予定です。


インサイテック社提供

1.背景

本態性振戦の有病率はおよそ人口の2.5–10%で、40歳以上では4%、65歳以上では5-14%以上と年齢と共に上昇することが知られています。振戦は食事や書字などの動作の際に現れるため、日常生活に大きな影響を与えます。保険承認の治療薬はアロチノロールであり、これは交感神経ベータ受容体遮断薬であることから血圧降下、心機能低下また喘息悪化の副作用があり、高齢者、心疾患や呼吸器疾患の患者には十分に用いることができません。抗てんかん薬や抗不安薬もよく用いられますが、眠気を誘発し服薬の継続が難しくなります。そこで以前から薬で抑制できない振戦には定位脳手術が行われてきました。しかし手術であるため、出血や感染の危険性があり、高齢者には手術を勧めにくいという問題がありました。

またパーキンソン病の有病率も全体では0.2%程度ですが50歳以上では1%程度となりその後も加齢と共に増加します。また疾患は緩徐に進行し、発症から10年前後で手術を必要とするような症状が現れ始めます。したがって、外科治療を検討する頃には手術の危険性が高い年代となっており、実際には手術を治療選択肢にあげにくいという問題がありました。

2.治療手法

今回当院で開始するFUSは、超音波を用いてふるえなど不随意運動の責任回路に熱凝固巣を作成する治療法で切開しない「きらない」手術です。

これまでの定位脳手術では、頭皮切開や穿頭、また視床腹側中間核(Vim核)や淡蒼球内節などの標的まで電極を進める操作が必要でした。FUSでは頭部にトランスデューサーとよばれるヘルメット状の超音波発生装置を装着します。トランスデューサーには1024個の超音波発生素子が装備されており、ここから超音波を標的の一点に集中させて熱凝固巣を作成し、これまで電極挿入で得られていた効果と同じ効果をもたらします。

本態性振戦やふるえのつよいパーキンソン病患者ではVim核の神経活動が過活動になっており、ここに熱凝固をおこすことで神経の過活動を抑制するとふるえの改善を得ることができます。組織の温度上昇は段階的に行い標的部位に熱凝固巣を作成し、治療効果が得られ副作用がおきないか確認をしながら、治療を行います。パーキンソン病であらわれるからだの動かしにくさやジスキネジアと呼ばれるからだがくねくねと動いてしまう不随意運動に対しては淡蒼球内節の過活動がみられるためこの淡蒼球内節を標的として同様に熱凝固巣を作成します。

3.治療の重要性、診療プロジェクトについて

超高齢化社会がすすむ我が国において、本態性振戦やパーキンソン病により日常生活の制限をうける患者数は今後も増加します。現状では内科的治療による抑制できない症状に対しては外科的治療が必要とされます。超音波をもちいる本治療法はこれまでの定位脳手術で懸念された頭蓋内の出血や感染の危険性が理論上はおこらないとされており、高齢者にもちいることを制限していた合併症の危険性に関する問題が解消されています。

また対象となる本態性振戦・パーキンソン病の外科治療は脳神経内科・脳神経外科を中心とする複数の診療科からなるチーム医療で立案から実行までを行うことが望ましい治療法です。FUSがこれまでおこなわれてきた定位脳手術すべてにおきかわることができるわけではなく、治療選択にあたってはデバイス補助療法を含む内科的治療、またこれまでの脳深部刺激療法や定位破壊術と比較検討する診療体制が必要です。

不随意運動に対して内科および外科治療の様々な治療選択肢を提供できるニューロモデュレーションセンターとしては、当院が西日本で初めて集束超音波治療法を導入しました。これまでの診療経験を生かしFUSにおける標的の可視化、治療選択の最適化、長期治療成績について北野病院・京都大学 脳神経内科・脳神経外科共同で検証する診療プロジェクトをすすめてまいります。

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