公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

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末梢動脈疾患

末梢動脈疾患

概念

虚血性心疾患と同様に、下肢動脈を始めとする末梢血管に動脈硬化が起こり、狭くなったり、詰まったりして、十分な血液が流れなくなる病気です。

症状

下肢動脈に虚血が生じた場合は、歩行した時に下肢特にふくらはぎに疲れ、だるさ、痛み、こむら返りなどの症状が現れ、歩行困難になります(間歇性跛行)。足が冷たい、色が悪い(紫色)場合も疑われます。病気が進行すると、じっとしていても足が痛むようになります(安静時疼痛)。さらに悪化すると、潰瘍を形成し、壊死することもあり、ひどい場合は足を手術(下肢切断)しなければならなくなることもあります。

検査

問診で疑われた場合、ABI(足関節上腕血圧比)、SPP(皮膚還流圧)、血管エコー、造影CT、MRI、カテーテル検査などによって血流評価を行います。

治療

治療法には薬物治療カテーテル治療外科手術があります。

カテーテル治療(経皮的末梢血管形成術, EVT)

当科では下肢動脈、鎖骨下動脈、腎動脈などに対するカテーテル治療を行っています。部位によっては、腎機能が悪い方には造影剤を使用せず炭酸ガスで治療することが可能です。

下肢動脈(腸骨動脈領域)に対するカテーテル治療

腸骨動脈領域は長期成績が比較的良好な部位です。血管内超音波(IVUS)を併用して病変を詳細に解析した上で、基本的にはステント留置を行っています。

下肢動脈(大腿膝窩動脈領域)に対するカテーテル治療

病変性状・形態に応じて薬剤溶出性バルーンによるバルーン治療や、ステント治療を行います。平成28年2月、本邦で初めて浅大腿動脈における末梢動脈疾患治療の適応を有するステントグラフトが薬事承認を受け、これまでカテーテル治療では長期開存が難しく、外科的バイパス術が中心に行われてきた長区域の閉塞病変に対しても良好な開存が見込まれます。

下肢動脈(膝下動脈領域)に対するカテーテル治療

膝下動脈領域はカテーテル治療では長期開存が困難なため、現在本邦ではバルーン治療しか認可されておらず、治療適応も重症下肢虚血(CLI)のみです。
バルーン拡張のみでは再狭窄を生じることが多く、繰り返しバルーン治療が必要となる場合があります。

クロッサー閉塞部貫通カテーテル

機械的振動を病変部に与えることにより、石灰化を伴う閉塞病変を貫通させることができます。これまでバルーンカテーテルが通過困難であった病変に対しても治療の幅を広げます。

腎動脈におけるカテーテル治療

高血圧の薬をたくさん飲んでいるにも関わらず血圧が下がらない、腎機能が悪化している、原因不明の心不全などの場合、本疾患が原因の可能性があります。ステント治療を基本としています。

出典:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス