虚血性心疾患
概念
心臓は全身へ血液を送り出すポンプの役割を果たしています。心臓に血液を送る血管を冠動脈といいますが、冠動脈が動脈硬化などのために狭くなったり、詰まったりすると、十分に栄養と酸素が届かなくなります。この状態を虚血といい、狭心症や心筋梗塞などの原因となります。
症状
冠動脈が狭くなり、虚血になると狭心症発作を起こします。発作時は前胸部に限らず、首、背中、左腕、上腹部などに締めつけられるような痛みや胃部不快感、呼吸困難感といった症状が出現します。冷汗、嘔気、嘔吐を伴うこともあります。
無症候性心筋虚血
無症状でも心筋虚血を起こしている場合があり、糖尿病を患っている人や高齢者に多くみられます。
検査
問診や心電図検査で虚血性心疾患が疑われた場合、心エコー、運動負荷心電図、ホルター心電図、心臓CT、心筋シンチグラフィ、心臓カテーテル検査などを行います。待機症例では、心臓CT、心筋シンチグラフィなどで速やかに診断し、カテーテル検査を行います。冠動脈狭窄病変が治療すべきか否かを正確に判断する必要があるときには、FFR(冠血流予備量比)を計測しています。
治療
治療法には薬物治療、カテーテル治療、外科手術があります。
カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術, PCI)
カテーテルによって狭くなった血管を広げ、血流を再開させるカテーテル治療法には、風船治療と呼ばれる「バルーン治療」と、網状の金属の筒(ステント)を植込む「ステント治療」があります。カテーテル治療時には血管内超音波(IVUS)、光干渉断層法(OCT)を行い、病変を詳細に解析した上で治療を実施しています。
薬剤溶出性ステント(DES)
カテーテル治療は一定の頻度で再狭窄(もう一度血管が狭くなること)を起こします。バルーン治療の時代は30-40%で再狭窄を認めていましたが、ステント(BMS)を用いることで、20%程度となり、さらに薬剤溶出性ステント(DES)では10%以下となりました。
薬剤溶出性バルーン(DCB)
再狭窄病変や小血管に対しては、薬剤溶出性バルーン(DCB)用いることがあります。バルーン表面に塗布された薬剤(パクリタキセル)がバルーン拡張により血管壁に接触して、血管壁に移行することにより、再狭窄抑制効果を発揮します。
ロータブレーター治療
先端にダイヤモンドが埋め込まれたバーが、高速回転することによって、石灰化により固くなった動脈硬化病変を削るものです。動脈硬化が石灰化し固くなってくると通常のバルーンでは拡張が悪くなり、 拡張が悪い状態でステントを留置してもステントそのものが十分に拡がらず、 再狭窄の可能性が高くなります。
予防
原因は高血圧症、脂質異常症、糖尿病を始めとした生活習慣病です。カテーテル治療・バイパス術は動脈硬化を完治させるわけではありません。動脈硬化の進行を予防することが大切です。禁煙、食事療法、運動療法などにより再発を繰り返さないように生活指導も行っています。