医学研究所北野病院 脳神経外科では、首の手術後に腰の痛みが低減する場合と低減しない場合の違いを確認し、論文として報告しました。
これまで当院での診療において、首の手術後に患者さんから「腰の痛みがなくなった」と言われることがよくありました。真実を明らかにするため、頚部脊柱管狭窄症に対して頚椎椎弓形成術を受けられる患者さんにアンケートを記入していただき、手術前後の腰痛について調査しました。ビジュアルアナログスケール(VAS)という痛みの評価に使用される指標(0点は痛みなし、100点は最大の痛み)で、首の手術前に腰痛のVAS 30点以上の患者さんが全体の29%確認できました。
そこからさらに「腰の病気がない」30名と「腰の病気がある」26名の2群に分けて検討を行ったところ、腰の病気がある群では術前VAS 59.8が術後1年でVAS 54.5と大きな改善は認められませんでしたが、腰の病気がない群では術前VAS 50.7が術後1年でVAS 27.7まで低下し腰痛の改善が認められました。
腰の病気がある群では、9名が頚椎椎弓形成術を受けてから平均12.8カ月後に腰の手術を受け、術前VAS 56.0が術後VAS 38.3まで改善しました。
これまで腰の痛みが頚椎術後に改善する報告はいくつかありましたが、この論文では「腰椎に病気があるかないかで大きな違いがあること」を初めて示しました。腰椎に問題のある患者さんでも頚椎の術後に一時的に腰痛が改善することがありますが、腰痛の解決にはやはり腰椎の治療が必要であることも明らかになりました。
腰の痛みで悩んでいらっしゃる場合は、首に原因がある可能性もありますので、脳神経外科にご相談ください。
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