医学研究所北野病院 脳神経外科は、2023年11月、頭蓋骨への正しい止血剤の使用法について論文として報告し、全世界の脳神経外科医に注意喚起を行いました。
手術では出血を止めるために様々な方法があります。特に骨からの出血に関しては50年以上前より、蜜蝋によく似た(骨蝋)を出血した部位に塗り込むことにより、止血を行うことが世界的に確立されています。脳神経外科の領域でも、頭蓋骨からの出血に対して骨蝋を使用しています。
頭蓋骨に骨蝋を使用した際に、頭蓋骨を貫通している静脈を介して、骨の裏側の静脈に骨蝋が紛れ込んでしまうこと(迷入)がまれにあります。頭蓋骨の場合、骨の裏側の静脈は、脳の静脈と関連があることがあり注意が必要ですが、骨蝋の迷入に関してこれまでは詳しく調べられていませんでした。
骨蝋の迷入を調べるために、241例の同じ部位の開頭を行った症例のCTおよびMRI画像を後ろ向きに確認(過去の診療情報などを確認)し、54例で迷入を確認しました。これらの症例のほとんどは、数ミリメートル単位のごくわずかなもので、臨床上問題になることはありませんでした。
迷入の原因を調べると、頭蓋骨を貫通している静脈のうち、「元々の直径が大きいもの」「開頭する際に頭蓋骨を貫通している静脈が短くなったもの」が有意に骨蝋の迷入に関連していることがわかりました。
私たちはその結果に基づき、術前より、頭蓋骨を貫通している静脈の径や長さを確認し、骨蝋の迷入が起こりうる可能性が示唆される症例では、骨蝋を使用しない止血方法を検討し現在臨床に応用しています。
今回、これらの報告をまとめ、骨蝋が迷入するリスクのある頭蓋骨を貫通している静脈に関して、骨蝋を使用しない止血方法を論文として報告し、全世界の脳神経外科医に注意喚起を行いました。
脳神経外科では今後も引き続き手術安全性を高めるための研究および方策を検討していきます。
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