こどもによくみられるヘルニアは、主に鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)と臍ヘルニア(でべそ)があります。こどものヘルニアセンターはこれらを専門に治療する診療科です。
こどものヘルニアのほとんどは生まれつきの病気(先天性)で、老人で発症するヘルニアとは異なります。従って治療方法も違います。そのため、こどものヘルニアを多く治療している小児外科医による、こどものヘルニアの専門施設が必要になります。
そこで北野病院ではこどもの手術を専門としている小児外科医が中心となって“こどものヘルニアセンター”を開設しています。
鼠径ヘルニアは、こどもの1~5%に発生する頻度の高い病気です。臓器全部を包んでいる膜(腹膜)が腹筋の外に飛び出しており、その中に腸や卵巣が入り、膨れたようにみえます。腸が入り込んでも、すぐに戻るようであれば緊急性はありません。しかし時々、入り込んだ腸が戻らなくなることがあります。こどもは機嫌が悪くなり、ふくらんだ部分は硬く、触ると非常に痛がります。この状態を放置すると入り込んだ腸に血が行かなくなり、最終的には腸が腐ります。状況によっては、緊急手術が必要になることもありますので、すぐに受診して下さい。
腸や卵巣が脱出していればおなかの中に戻し,腹筋の外に飛び出した穴を閉じる手術です。30分程度の手術です。
麻酔は全身麻酔(寝る麻酔)です。手術後は少しぼんやりした状態ですが、すぐにはっきりしてきます。痛みに関しても、小さい傷の手術になりますので、それほどありません。麻酔に関して不安なことがあれば、術前の麻酔科医師の診察時になんでもお聞きください。
当院では、基本的に日帰り手術(お泊りしない)を行っています。 (日帰り手術が出来ない場合もありますので、気軽にご相談ください)
手術前の生活に制限はありません。退院後、通学・通園は可能です。入浴(シャワー)は術後2日目から可能です。激しい運動や、プールは術後1週間は控えてください。
鼡径部に約2㎝の切開をおき、ヘルニアの袋の根元を縛ってくる手術です。傷はパンツに隠れる位置になりますので、目立ちません。反対側のヘルニアの観察はできませんので、将来反対側のヘルニアが発症することがあります。
臍からカメラを挿入し、おなかの中をモニターに映してヘルニアを内側から観察します。その後、右もしくは左側腹部から直径2㎜の細い器具をいれ,特殊な針と糸でヘルニアの袋の根本を閉鎖する手術です。傷はほとんどわかりません。 腹腔鏡での手術が困難な場合・問題が起こった場合には,途中から通常の手術に変更する場合があります。
従来の手術にくらべ圧倒的に小さな傷です。
腹腔鏡ではおなかの中から観察できますので、反対側のヘルニアを見つけることが出来ます(約半数の方に反対側のヘルニアがあります)。もしあれば同時に手術が可能です。その為、腹腔鏡手術では反対側のヘルニアの再発はほとんどありません。
男児では精巣血管や精液を送る精管がヘルニアのすぐ横にあります。内視鏡は拡大してものを見ることが出来るため、鼠径法に比べて血管や精管への影響がより少ないと考えています。
8:15にご来院いただいて手術を行い、経過観察で問題ないことを確認した上で、16:00頃にご退院いただけます。お子さまにもご家族の方にもご負担が少ない方法で手術を行います。
また“おとな”でも“こども”と同じタイプのヘルニア(先天性)を発症する人がいます。そのほとんどは若年で発症します。
おとなの鼠径ヘルニアは一般的に腹壁の弱さが原因であることが多く、治療には腹壁の補強が必要とされ人工物を入れます。しかし、40歳までに発症する鼠径ヘルニアはこどもタイプの鼠径ヘルニアのこともあり、人工物を挿入する必要がないこともあります。
このようなタイプのヘルニアに対しては、おとなであっても異物を挿入しないこどもの鼠径ヘルニアと同じシンプルな術式で治療することもあります。
臍ヘルニアとは、いわゆる“でべそ”のことです。おへそは赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいるときに、臍帯(へその緒)がおなかの壁(腹壁)を通っているところです。通常は臍帯(へその緒)が取れたあとに、お臍の部分の腹壁の穴がしっかりと閉じますが、その穴が残った時に臍ヘルニア(でべそ)になります。5〜10人に1人の割合で発生します。
ほとんどの方は腹壁の穴は、1歳ころまでに自然に閉じ臍ヘルニアは治ります。しかし、おへそが膨れた状態を長く置いておくと、おへその皮膚が伸びきってしまって、最終的に形の良いおへそにならないことがあります。それを防ぐ意味でも、当院では圧迫療法をお勧めしています。圧迫療法とは、綿球(綿の玉)で飛び出したお臍を押さえて、透明の医療用のテープで抑えるというものです。腹壁の穴が閉じるまで、自宅で行っていただきます。
ほとんどの臍ヘルニアは、1歳ころまでに自然に治癒します(腹壁の穴が閉じます)。ただ、中には1歳を過ぎても穴が閉じずに、臍ヘルニア(でべそ)が残ってしまうお子さんもおられます。臍ヘルニアがあるからといって、健康を害する事はありませんが、見た目をよくする目的で手術を行うこともあります。お臍の形でお困りの時は、ご相談ください。
受診方法 | 他の医療機関からの「こどものヘルニアセンター」または「小児外科」宛の紹介状をご用意の上、外来診察日にご来院(受付時間はこちらのページを参照)いただくか予約をお願いします。 ※紹介状なしでも受診可能ですが、選定療養費が診察費とは別に発生します。 |
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外来診察日 | 小児外科の外来で受け付け、診察します。 |
手術日 | 月曜日、火曜日 |
お問合せ | 北野病院 本館2階Bブロック受付 電話 06-6312-8827 |
鼠径ヘルニア・陰嚢水腫・精索水腫の診療情報提供書は雛形を用意しております。ぜひご活用ください。