乳癌治療は、手術、放射線照射、抗癌剤、ホルモン療法、分子標的療法などさまざまな治療を組み合わせて行うことで、乳癌の根治、再発リスクを軽減、症状の改善等が目的です。乳腺外科では、単にガイドラインに沿った治療を行うのではなく、それぞれの患者さんに適したこれらの治療法の組み合わせから治療計画を患者さんと相談しながら立て、放射線科や形成外科、緩和ケアチーム、あるいは地域医療機関などと協力して治療を進めています。そして、患者さんごとの担当看護師が治療に伴う身体的あるいは精神的負担を軽減できるようアドバイスやケアを行います。このように乳腺外科は外科ということにこだわらず、全ての乳腺に関わる疾患の診断と治療とケアをトータルに行うブレストセンターを目指しています。
乳房温存手術後のSAVIを用いた放射線治療
乳房温存手術を受けた後の放射線治療では、通常「全乳房照射」が行われます。この方法では、乳房全体に放射線を当てるため、5~6週間にわたり、週5日(月~金曜日)の通院が必要です。1回の治療時間は短いものの、長期間にわたるため、仕事や日常生活などさまざまな影響を及ぼすことがありました。
しかし、SAVI(サヴィ)という乳がんの小線源治療用のアプリケーターを用いることで大幅に治療期間を短縮することができるようになりました。
SAVIを用いた「加速乳房部分照射」は、もともと乳がんのあった部位(=最も再発しやすい部分)のみに限局して放射線を短期間に集中して照射する治療方法です。全乳房照射と比較し、放射線治療の期間を短縮することができます。
日本では2013年6月に承認を取得し、密封小線源治療として保険診療が可能で、当院では2023年8月より実施しています。
適応基準
- 40歳以上
- 腫瘍径3cm以下
- 単発
- 術前診断で乳管内伸展やセンチネルリンパ節(SLN)転移および遠隔転移を認めない早期乳がん
当院でのSAVI を用いた乳房温存療法の流れ
乳房温存手術からSAVIによる放射線治療までの一連の治療を18日間の入院で行っています。詳細は乳腺外科までお問い合わせください。
- 挿入
当院では術中留置法で乳房温存手術に続いて術中にSAVIカテーテルを挿入 - 拡張
永久標本での最終病理結果を確認後にSAVIアプリケーターに入れ換え。SAVI カテーテルを広げて、がんを取り除いた後の空洞にフィットさせる - 放射線治療
1回3.4Gyの放射線照射を6時間以上の間隔を空けて1日2回、5日間、計34Gy照射 - 抜去
放射線治療終了後にカテーテルを抜去し、翌日退院