災害発生時に医療を提供する医師(井上)と、「一人でも多くの人を災害から守りたい」と願う看護師(藤原)。
被災地での経験を踏まえ、「本当に必要な防災計画とは何か?」について、まずは医療従事者である私たち自身が考えてみました。
井上 防災に関する〝知識〞を得ることは必要ですが、そこから一歩進んで〝興味〞を持ってもらいたいですね。「被災してしまったら自分は何に困るのだろうか?」「自分は一般的な準備だけで大丈夫なのだろうか?」と興味が湧くと、知りたいことや調べておくべきことも見えてきます。そうすると、必要なことが鮮明になって、より効果の高い防災計画が立てられるはずです。
藤原 そうですね。当然ですが、災害は起きる「時間」も「場所」も選べません。でも、実は災害前にできることってたくさんあるんです。非常用持ち出し袋の中に必要なものが揃っているかを改めて確認するだけでなく、そもそも「必要なものとは何か」を考えてみる。他にも、「避難所までのルートを実際に歩いてみる」「避難訓練に参加して体験する」など色々あります。家が倒壊した時などは避難場所に頼る必要がありますが、まずは「自分の家の中で何ができるか」を考えてみてほしいですね。
井上 私は、勤務中に被災した場合に備えて水や食料などの備蓄をしていて、同僚にも呼びかけています。ただ、災害対策ってどうしても一時的になりやすいんですよね。
地震や豪雨のニュースを目にした時は意識するんですが、過ぎれば忘れてしまうので。
藤原 自分のことだけを考えると災害への備えが疎かになる人でも、家族など〝大切な人〞のことを思って災害に向き合うと、防災に対する意識が少し変わるかもしれませんよ。
井上 わが家には災害弱者がいるので、そうした当事者の視点に立って考えるようにしています。例えば、小さいお子さんがいるご家庭なら、子どものニーズへの備えはどうなのか。高齢の親が一人暮らしをしていたらどう支えるのか。そういった視点は、防災への動機づけになるのではないでしょうか。
藤原 そうですね。まずは防災に興味をってもらい、「自分に必要な備えとは何か」を考え、準備する。そうした計画を、ご家族や周囲の人たちと共有してみるのはいかがでしょうか。一人ずつの力は小さくても、共有しあうことで大きな力となり、地域全体の防災力が上がっていくと思います。