公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院

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第4研究部

第4研究部(免疫・アレルギー・感染・病理研究部門)

第4研究部では患者さんの諸問題を種々の免疫学的側面から追求し、臨床にフィードバックできるよう鋭意努力しています。
各科グループの取り組みと、これまでの業績を紹介いたします。

実績(平成29年2月まで)

部長:八木田 正人(リウマチ膠原病内科主任部長)
主幹:戸田 憲一(皮膚科主任部長)、弓場 吉哲(病理診断科主任部長)、羽田 敦子(小児科部長)

<リウマチ膠原病内科>

藤田 昌昭 主任研究員

主たる研究課題
  • インテグリン制御による自己免疫疾患の新たな治療法の開発
A:ペプチド阻害剤
我々は、自己免疫疾患の発症に関与する分子であるFractalkine (FKN)やsecreted phospholipase A2(sPLA2)がインテグリンと直接結合し、インテグリンを活性化することを発見した。特筆すべきは、FKNやsPLA2は一般的なインテグリンリガンド(細胞外マトリックスなど)の結合部位(サイト1と呼ぶ)とは異なった部位(サイト2と呼ぶ)でインテグリンと結合することである。さらに、これらリガンドとインテグリンとの結合を特異的に阻害するペプチド(インテグリンのサイト2に由来する約20アミノ酸残基からなるペプチド)の作製に成功し、このインテグリンペプチドがFKNやsPLA2によるインテグリンの活性化を抑制することも発見した。我々が作製したインテグリンペプチドはサイト2の配列に由来したペプチドであるため、従来知られているサイト1をターゲットとしたインテグリン抗体とは異なったメカニズムでインテグリンの活性化を抑制できると期待される。しかし、現時点ではin vivoや患者検体を用いたDATA(有用性)は得られていない。現在、インテグリンペプチドを用いてFKNやsPLA2の機能を阻害することにより、関節リウマチや筋炎の発症を抑制できるかどうかを患者検体(血球)やマウスモデルを用いて検討している。
B:dominant negative mutant
インテグリンは接着分子として古くから知られているが、近年、細胞外マトリックス以外のリガンドが同定され、再び注目を集めている。我々も、FGF1, NRG1, IGF1, Fractalkine(FKN)がインテグリンと結合し、この相互作用がリガンドの機能に必要であることを明らかにした。また、インテグリンに結合できないリガンド変異体を作成することに成功し報告している。この変異体を用いることにより、受容体を介した経路とインテグリンを介した経路のシグナルを分離して解析することが可能となり、従来知られていなかったインテグリンの役割を解明することができるようになった。興味深いことに、これらリガンドとインテグリンとの相互作用には共通のメカニズムが存在する。すなわち、リガンドは受容体とインテグリンに同時に結合し、リガンドが機能するためにはcomplex形成が必要である。インテグリンに結合できない変異体は受容体のみに結合するため完全なシグナルを伝達することができない。さらに特筆すべきは、インテグリンに結合できない変異体がdominant negative効果を示すことである。我々は、FGF mutant, IGF mutantが腫瘍増殖を抑制することをin vitro 及びマウスを用いたin vivo の研究でそれぞれ明らかにした。しかし、FKN mutantについては、in vitroの効果確認にとどまり、関節リウマチや筋炎といった疾患モデルを用いたDATA(有用性)は得られていない。現在、FKN mutantの有用性を、関節リウマチや筋炎のモデルマウスを用いて立証することを目指している。
今後の展望
我々が作製したインテグリンペプチドやdominant negative FKN mutantは白血球の活性化に必要なリガンド-インテグリンの相互作用のみを特異的に阻害し、この阻害効果は単一のインテグリンには限定されない。このインテグリンペプチドやdominant negative FKN mutantは、自己免疫疾患の発症に関与する分子とインテグリンの相互作用を特異的に阻害するため、感染症などの重篤な感染症を引き起こさず、かつ、白血球機能を抑制しうる薬剤として期待できる。また、本ペプチドは関節炎や筋炎にとどまらず、あらゆる炎症性疾患への応用が可能である。血管炎症候群、全身性エリテマトーデスの疾患活動性を抑制できる可能性がある。
代表的論文
  1. Takada Y, Fujita M. Crosstalk between insulin-like growth factor(IGF) receptor and integrins through direct integrin binding to IGF1. Cytokine Growth Factor Rev. In press
  2. Fujita M, Zhu K, Fujita CK, Zhao M, Lam KS, Kurth MJ, Takada YK, Takada Y. Proinflammatory secreted phospholipase A2 type IIA(sPLA-IIA) induces integrin activation through direct binding to a newly identified binding site(site2) in integrin αvβ3 α4β1 and α5β1. J Biol Chem. 2015;290:259-271
  3. Fujita M, Ieguchi K, Cedano-Prieto DM, Fong A, Wilkerson C, Chen JQ, Wu M, Lo SH, Cheung AT, Wilson MD, Cardiff RD, Borowsky AD, Takada YK, Takada Y. An integrin-binding-defective mutant of insulin-like growth factor-1 (R36E/R37E IGF1) acts as a dominant-negative antagonist of IGF1R and suppresses tumorigenesis, while the mutant still binds to IGF1R. J Biol Chem. 2013; 288:19593-603
  4. Fujita M, Takada YK, Takada Y. Integrins αvβ3 and α4β1 act as coreceptors for fractalkine, and the integrin-binding defective mutant of fractalkine is an antagonist of CX3CR1. J Immunol. 2012;189:5809-5819.

八木田 正人

主たる研究課題
  • ヒト・ナチュラル・キラー(NK)細胞の機能とその病的関与の解明
我々はp53の点突然変異を持つaggressive NK cell leukemiaの一症例よりIL-2依存性に増殖するNK細胞株(KHYG-1)を樹立しました。このNK細胞株はp53の点突然変異(Exon 7 のcodon248,C→T)を持っています。 現在、KHYG-1細胞株はJCRB細胞バンク(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所、 JCRB Cell Bank)に寄託され、国内外の多くの研究室でヒトNK細胞に関する研究 (細胞障害機構、抗体依存性細胞キラー活性(ADCC)等)、NK細胞の腫瘍化に関する研究、その他がん治療開発に関する研究等に広く使用されています。 使用できるNK細胞株が少ない中、KHYG-1細胞株は貴重な研究材料であると国際的な評価を頂いています。
KHYG-1細胞株に関するお問い合わせは JCRB細胞バンク(http://cellbank.nibiohn.go.jp/)あるいは八木田 正人(mayagita@kitano-hp.or.jp)に御願いいたします。
代表的論文
  1. Yagita M, Huang CL, Umehara H, Matsuo Y, Tabata R, Miyake M, Konaka Y,Takatsuki K. A novel natural killer cell line (KHYG-1) from a patient with aggressive natural killer cell leukemia carrying a p53 point mutation.Leukemia. 2000 May;14(5):922-30. 
  2. Yagita M, Uemura M, Nakamura T, Kunitomi A, Matsumoto M, Fujimura Y.Development of ADAMTS13 inhibitor in a patient with hepatitis C virus-related liver cirrhosis causes thrombotic thrombocytopenic purpura.J Hepatol. 2005 Mar;42(3):420-1.
  3. Yagita M, Hamano T, Hatachi S, Fujita M. Peripheral neuropathies during biologic therapies. Mod Rheumatol. 2016;26(2):288-93.

<病理診断科>

弓場吉哲、松崎直美

主たる研究課題
  1. 膵液細胞診の精度向上のための検討(田口雅子、仲村佳世子、萩原葉子、弓場吉哲)
  2. 悪性中皮腫診断のための酵素抗体法パネルの検討(弓場吉哲)
  3. EUS-FNAにおける細胞診と組織診との整合性について(田口雅子、足羽彩加、弓場吉哲)
代表的論文
  1. Two Cases of Renal Cell Carcinoma Harboring a Novel STRN-ALK Fusion Gene. Kusano H, Togashi Y, Akiba J, Moriya F, Baba K, Matsuzaki N, Yuba Y,Shiraishi Y, Kanamaru H, Kuroda N, Sakata S, Takeuchi K, Yano H Am J Surg Pathol 2016; 40: 761-769.
  2. Myxofibrosarcoma of the heart: A case report with positive pleural effusion cytology. Hagiwara Y, Nakamura K, Taguchi M, Ashiwa A, Nishioka C, Kono T, Matsuzaki, N, Yuba Y. Diagn Cytopathol. 2016; 44: 1112-1116.
  3. Moritani S, Ichihara S, Yatabe Y, Hasegawa M, Iwakoshi A, Hosoda W, Narita M, Nagai Y, Asai M, Ujihira N, Yuba Y, Jijiwa M. Immunohistochemical expression of myoepithelial markers in adenomyoepithelioma of the breast: a unique paradoxical staining pattern of high-molecular weight cytokeratins. Virchows Arch 2015; 466: 191-198.

<小児科>

羽田 敦子

主たる研究課題
  • 免疫低下状態で発生するウイルス感染症の予防と治療に関する研究
研究の背景
水痘帯状疱疹ウイルスの初感染像は水痘であり、神経節に潜伏感染し、免疫抑制状態あるいは高齢化に伴う再活性化像が帯状疱疹である。日本で1971年から水痘生ワクチンの開発が始まり、日本で1986年に発売されたが、接種率は30%程度と低迷し、多くは自然感染であった。平成26年10月に定期接種として1歳児に2回接種することとなり、自然罹患の減少、帯状疱疹発生頻度の低下が期待される。一方、帯状疱疹予防のため、米国では50歳以上の成人において帯状疱疹予防ワクチン接種が推奨されている。この米国の帯状疱疹予防ワクチンは、日本製水痘生ワクチンの岡株を元に作られており、日本のワクチンは同等以上のウイルス力価を持つとされている。帯状疱疹の予防として、日本製水痘生ワクチンを使用するために、適切な対象者に対するワクチン接種の反応性を調査することが非常に重要である。悪性腫瘍患者や糖尿病、腎不全患者などでは、健常成人に比べて臨床的に帯状疱疹の増悪がみられる。我々は対有基礎疾患患者において糖尿病は帯状疱疹のリスクが2.4倍であることを示した(3)。さらに我々は糖尿病患者においてVZVに対する細胞性免疫能が低下していることを示した(2)。加えて日本製水痘生ワクチンが、糖尿病患者に対し健常者と同様免疫能を賦活できることを報告した (4) 。
我々は二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験(成人用肺炎球菌ワクチン同時接種)において高齢糖尿病患者は、1回のワクチン接種では細胞性免疫(水痘抗原皮内テスト)と液性免疫の変化にプラセボとの有意差はみられなかった(5)。
現在の研究
その原因として、対象者に血糖降下薬DPP-4(リンパ球やマクロファージ上に発現しているCD26)阻害剤が使われたこと、さらに成人用肺炎球菌ワクチンの同時接種による低反応や影響などが推察された。肺炎球菌ワクチンは、糖尿病患者のような基礎疾患患者に対して接種勧奨されているが、もし同時接種が影響する場合には今後、単独接種が望まれる。加えて接種回数については、同種幹細胞移植患者に対して低力価の水痘生ワクチン2回ないしは、3回 接種により免疫を賦活化したという報告もあり、糖尿病患者に2回接種の必要性が明らかとなれば、今後免疫不全症例には、複数回投与が標準となる可能性もある。現在の研究は、上記の先行研究の結果を基に、50-75歳の成人糖尿病患者を対象に水痘生ワクチン1-2回接種前後のVZVに対する特異的免疫能獲得の状況をプラセボと比較評価し、ランダム化二重盲検比較試験によりワクチンの有効性及び安全性の検討を行っている。
今後の展望
帯状疱疹の予防ワクチンとして水痘生ワクチンに免疫賦活効果があると判明すれば、帯状疱疹の頻度及び程度を軽減し、生活の質をより高めることができ、発症時に高価な抗ウイルス薬を投与することなく、予防により医療経済学的にも貢献できると考えられる。また帯状疱疹発症頻度の高い糖尿病患者への理想的な接種回数が明らかとなれば、その知見は今後、他の基礎疾患患者におけるワクチン接種による帯状疱疹発症予防に寄与できると考えられる。
代表的業績(いずれも科研費による研究課題)
  • 慢性腎炎症候群及びネフローゼ症候群患者の免疫学的異常
  • 保健活動による積極的水痘予防接種勧奨の経済的影響について
  • 水痘帯状疱疹ウイルス特異的細胞性免疫評価による予防接種時期の検討
  • 疾患別帯状疱疹発症頻度の検討
  • 高齢者における免疫賦活によるウイルス感染症予防の研究
  • ワクチンによる糖尿病患者における水痘帯状疱疹ウイルス特異的免疫反応の検討
代表的論文
  1. Hata A, Asanuma H, Rinki M, Sharp M, Wong RM, Blume K, Arvin AM. Use of an inactivated varicella vaccine in recipients of hematopoietic-cell transplants. N Engl J Med. 2347:26-34. 2002
  2. Okamoto S, Hata A, Sadaoka K, Yamanishi K, Mori Y. Comparison of varicella-zoster virus-specific immunity of patients with diabetes mellitus and healthy individuals. J Infect Dis. 200:1606-1610. 2009
  3. Hata A, Kuniyoshi M, Ohkusa Y. Risk of Herpes zoster in patients with underlying diseases: a retrospective hospital-based cohort study. Infection. 39:537-544. 2011
  4. Hata A, Inoue F, Yamasaki M, Fujikawa J, Kawasaki Y, Hamamoto Y, Honjo S, Moriishi E, Mori Y, Koshiyama H. Safety, humoral and cell-mediated immune responses to herpes zoster vaccine in subjects with diabetes mellitus. J Infect. 67:215-219. 2013
  5. Hata A, Inoue F, Hamamoto Y, Yamasaki M, Fujikawa J, Kawahara H, Kawasaki Y, Honjo S, Koshiyama H, Moriishi E, Mori Y, Ohkubo T. Efficacy and safety of live varicella zoster vaccine in diabetes: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Diabet Med. 33:1094-1101. 2016

<消化器内科>

吉野 琢哉

主たる研究課題
  • 栄養指導による腸内細菌叢の変化が炎症性腸疾患の臨床経過に及ぼす影響について
代表的論文
  1. Yoshino T, Sono M, Yazumi S. The usefulness of sulphasalazine for patients with refractory-ulcerative colitis. BMJ Open Gastroenterol:e000103:2016
  2. Yoshino T, Yamakawa K, Nishimura S, Watanabe K, Yazumi S. The predictive variable regarding relapse in patients with ulcerative colitis after achieving endoscopic mucosal healing. Intest Res:14:37-42:2016

<皮膚科>

研究課題
  • 皮膚潰瘍治療における理学的療法の医学的評価
  • ヒト培養再生表皮を用いた難治性皮膚潰瘍治療の有用性に関する研究   他

<臨床検査部>

研究課題
  • 細菌検査の迅速化の検討
  • 血中プレセプシン測定の臨床的意義
  • 微生物検査室からの情報発信の有用性
代表的論文
  1. Shiota M, Kumakura A, Mizumoto H, Asada J, Nakagawa K, Takuwa M, Morishima T, Nishida H, Yoshioka T, Hata A, Hata D. Depressed levels of interferon-gamma and HLA-DR+CD3+ T cells in infants with transient hyperferritinemia. Pediatr Hematol Oncol. 2011;28(3):209-16.
  2. Shiota M, Saitou K, Mizumoto H, Matsusaka M, Agata N, Nakayama M, Kage M, Tatsumi S, Okamoto A, Yamaguchi S, Ohta M, Hata D. Rapid detoxification of cereulide in Bacillus cereus food poisoning. Pediatrics. 2010;125(4):e951-5.
  3. Hatachi S, Kunitomi A, Aozasa K, Yagita M. CD8(+) T-cell lymphoproliferative disorder associated with Epstein-Barr virus in a patient with rheumatoid arthritis during methotrexate therapy. Mod Rheumatol. 2010;20(5):500-5.
  4. Uchiyama T, Toda K, Takahashi S. Resveratrol inhibits angiogenic response of cultured endothelial F-2 cells tovascular endothelial growth factor, but not to basic fibroblast growth factor. Biol Pharm Bull. 2010;33(7):1095-1100.

名簿(平成29年2月現在)

研究部長 八木田 正人
研究主幹 戸田 憲一
弓場 吉哲
羽田 敦子
主任研究員 藤田 昌昭
研究員 吉野 琢哉
旗智さおり
松島 佐都子
宇野 将一
前田 記代子
仲村 佳世子
垣内 真子
客員研究員 辻本 考平