呼吸に関わる臓器には気管・気管支や肺があります。気管から左右の気管支になり、それぞれが肺へとつながります。右肺は上葉、中葉、下葉の3つ、左肺は上葉と下葉との2つの肺葉に分かれています。この気管・気管支や肺が作られる過程で、異常な袋状の病変(のう胞といいます)ができることがあります。これを総称して「先天性のう胞性肺疾患」といいます。気管支原生のう胞,先天性肺気道奇形(CPAM), 気管支閉鎖症, 肺分画症などが含まれます。
気管支原生のう胞は気管に接するようにでき、先天性肺気道奇形(CPAM)や気管支閉鎖症は肺の中にできます。肺分画症は肺の中にできるタイプ(肺葉内肺分画症)と正常な肺と別に独立してできるタイプ(肺葉外肺分画症)があります。
風邪症状が続く時や肺炎になった時に撮影された胸部レントゲンやCT検査で診断されます。無症状で経過するお子さんもおられ、他の理由でレントゲンを撮った際に偶然診断されることもあります。
肺炎像に隠れて先天性肺気道奇形(CPAM)を認める
近年は出生前診断の質が向上しており、胎児エコーで出生前から肺の異常を指摘されるケースが増えています。大きなのう胞では、出生後にのう胞が肺を圧迫するために呼吸状態が悪くなる可能性があり、緊急手術を含めた十分な体制を整えて出産にいどむ必要があります。
症状のある場合には手術が必要です。気管支原生のう胞や肺葉外肺分画症では病変のみを切除しますが、先天性肺気道奇形(CPAM)などの肺内の病変では病変のみを取り除くことが難しく、病変に接している肺も合わせて「肺葉切除」を行うのが小児外科では一般的です。無症状のお子さんでは手術を行わずに経過観察するのが良いという意見もありますが、肺炎を繰り返すと胸の中で癒着が起き,手術が困難になる場合があります。肺の感染症を起こす前に切除するのが理想的と考えており、当科では1歳前後での手術を提案しています。乳幼児期に手術を行うと、残った肺が術後に成長してくれるので十分な肺機能を獲得することができます。
当科では基本的に胸腔鏡での手術を行なっています。傷が小さいので体への負担が少なく、整容面でもメリットがあります。また、開胸手術では肋骨の間の筋肉を大きく切る必要があり将来的に背骨・胸郭の変形につながる危険性があるとされており、その可能性を低くすることができるのも良い点です。