食道がんユニット(2021年開始) 検討症例 |
手術症例:全例 胸腔鏡 腹腔鏡を用いた低侵襲手術 (胸腔鏡 腹腔鏡下食道亜全摘) |
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2023年 | 19例 | 4例 |
2022年 | 15例 | 8例 |
2021年 | 17例 | 4例 |
食道がんは縦隔(胸)に存在する唯一の消化管と言う臓器の特殊性から、手術のみならず内視鏡治療、化学療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療が重要です。
当院では、食道がんの患者さんは全例、食道がんユニットという消化器内科/腫瘍内科/放射線治療科/消化器外科それぞれの専門家で検討を行ったのち、適切な治療の組み合わせをご提示させて頂いています。また、食道がん手術は、胸部操作、腹部操作、頸部操作と3領域にわたる高度侵襲手術ですが、原則全例、胸腔鏡/腹腔鏡を用いた低侵襲手術で行っています。食道がんの局在や進行度に応じて、頸部操作を省略し、胸腔鏡/腹腔鏡のみを用いた胸腔内吻合も積極的に行っており、良好な成績を報告しています。
食道がんと言われたら、ぜひ、ご相談ください。
2023年 | 30例(幽門側胃切除術:21例 噴門側胃切除術:5例 胃全摘術:4例) そのうち腹腔鏡手術:16例、ロボット手術:12例、開腹手術:2例 |
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2022年 | 21例(幽門側胃切除術:17例 噴門側胃切除術:3例 胃全摘術:1例) そのうち腹腔鏡手術:13例、ロボット手術:8例、開腹手術:0例 |
2021年 | 33例(幽門側胃切除術:28例 噴門側胃切除術:0例 胃全摘術:5例) そのうち腹腔鏡手術:19例、ロボット手術:10例、開腹手術:4例 |
胃がんに対する治療はめざましい進歩を遂げています。
手術はこれまでの大きな傷の開腹手術から小さな傷で回復の早い低侵襲手術(腹腔鏡手術/ロボット手術)へと進化し、当科で行う手術の大部分はこの低侵襲手術で行っております(内視鏡外科技術認定医(胃領域)1名、ロボット支援胃手術プロクター1名)。
外科的治療のみならず内科的な治療も進歩してきており、以前であれば手術が必要であった早期がんの患者さんでも内視鏡的切除により根治が可能になってきました。そのため、当科にご紹介いただいた患者さんでも、必要に応じて消化器内科での治療をお勧めすることもあります。
また、手術が不可能あるいは手術のみでは根治の難しい進行がんの患者さんでも、手術前後の抗がん剤治療を適切に組み合わせることで手術が可能になったり根治できたりすることが増えてきました。近年の抗がん剤治療は選択肢の増加とともに複雑になってきていますので、それを専門とする腫瘍内科とも密に連携して副作用の適切な対応を行っております。
外科的な治療と内科的な治療の双方のメリットを最大限に活かしながら患者さんのご希望に添える治療を提供させていただきますので、ぜひご相談ください。
2023年 | 131例(腹腔鏡手術:77例、ロボット手術:46例、開腹手術:8例) |
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2022年 | 110例(腹腔鏡手術:70例、ロボット手術:26例、開腹手術:14例) |
2021年 | 95例(腹腔鏡手術:65例、ロボット手術:18例、開腹手術:12例) |
当科では、大腸がんに対する腹腔鏡手術やロボット手術(低侵襲手術)を積極的に行っております。低侵襲手術では、お腹に5ミリ〜1センチの小さな穴を複数開けるだけで手術が行えるため、患者さんの負担がきわめて少ないのが特徴です。また、内視鏡外科学会が認定する内視鏡外科技術認定医(大腸領域)が3名、ロボット支援直腸・結腸手術プロクターが1名在籍し、安全かつ確実な手術を行っております。
また、術前化学放射線療法・化学療法などの集学的治療を行うことで、確実な根治を目指し、かつ可能な限り人工肛門を回避した術式を提供できるようにしています。必要に応じて腫瘍内科や放射線治療科と連携し、最適な治療を患者様に提供いたします。
手術後の入院日数は平均10日前後で、なるべく早い日常生活、職場への復帰を目指しています。また可能な限り再発を抑制するため、術後の補助化学療法も必要に応じて行っております。患者さんのご希望に応じて様々な治療を提供できる体制が整っておりますので、ぜひご相談ください。
肝切除の適応疾患 | 腹腔鏡・開腹肝切除数 | |
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2023年 | 原発性肝腫瘍22例、転移性肝腫瘍15例、その他(胆道がんなどを含む)8例 | 45例(腹腔鏡29例、開腹(胆道がんなどを含む)16例) |
2022年 | 原発性肝腫瘍24例、転移性肝腫瘍12例、その他(胆道がんなどを含む)9例 | 45例(腹腔鏡23例、開腹(胆道がんなどを含む)22例) |
2021年 | 原発性肝腫瘍17例、転移性肝腫瘍14例、その他(胆道がんなどを含む)15例 | 46例(腹腔鏡17例、開腹(胆道がんなどを含む)29例) |
当院では肝胆膵手術を専門とするスタッフ5名(うち、肝胆膵高度技能指導医・専門医2名)を中心に肝臓の手術を行っています。
対象となる疾患は原発性肝がん(肝細胞がん、肝内胆管がんなど)、転移性肝がん(他臓器がんの肝臓への転移、特に大腸がんの肝臓への転移)、胆道がん(胆管がんや胆のうがん)です(グラフ1参照)。
低侵襲手術(腹腔鏡手術)の割合は年々増加しており、現在ではほとんどの症例を低侵襲手術で行っています(グラフ2参照)。開腹手術は胆道がん、一部の原発性肝がんや転移性肝がん(個数が多い場合や多数の手術歴がある場合など)に対して行われ、手術の難易度や患者さんのご希望も考慮に入れて術式を決定しています。
治療方針は週一回消化器内科医や放射線科医を交えたカンファレンスにて検討を行った上で決定しています。治療方法が複数ある場合には患者さんの意向も聞いた上で方針を決定しますのでご安心ください。
当院でのすべての膵切除症例(膵がん以外の疾患に対する手術も含む):
2009年1月~2024年6月現在 429例(平均で約28例/年)
(膵頭十二指腸切除:249例、膵体尾部切除:147例、膵全摘:26例、その他:7例)
そのうち、通常型膵がん(IPMN由来膵がんは除く)に対する手術症例は、2014年以降増加しています。
前期(2009~2013) | 43例(膵頭十二指腸切除:27例、膵体尾部切除:13例、膵全摘:3例) |
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中期(2014~2018) | 78例(膵頭十二指腸切除:38例、膵体尾部切除:32例、膵全摘:8例) |
後期(2019~2023) | 89例(膵頭十二指腸切除:37例、膵体尾部切除:43例、膵全摘:8例、その他1例) |
当院では、膵がんに対する膵体尾部切除については2018年より腹腔鏡下手術を導入しており、2019年以降では27例(75%)と約3/4の症例でこの低侵襲性手術を実施しています。
膵がん治療の中心は外科的切除であり、画像所見から、①切除可能膵がん、②切除可能境界膵がん、③切除不能膵がん(局所進行、または遠隔転移あり)に分類されます。
ただし、もともと悪性度が高く、術後再発率の高い膵がんに対しては、切除のみでの治療効果は不十分であり、術前治療(化学療法や化学放射線療法)と術後補助化学療法を組み合わせた集学的治療で、治療成績の向上をめざします。
当院では、初診で受診された段階から消化器内科と消化器外科が密に連携を取って情報を共有します。そして、膵がんの診断がついた場合は、できる限り早く(遅くても1ヶ月以内に)治療導入ができるように治療計画を立てています。
明らかに切除不能膵がんである場合を除き、原則的にすべての切除可能膵がん・切除可能境界膵がんに対して審査腹腔鏡手術(約1時間の手術)を行い、腹膜播種や微少肝転移の有無を確認します。そして引き続きその入院中に初回の術前治療を導入します。
切除可能性に応じた術前治療期間を経て、外科的切除を行います。なお、膵体尾部切除は腹腔鏡手術を第一選択としています。
そして、術後は半年間の術後補助化学療法(標準的にはティーエスワンという内服薬です)を行います。
またこれらの集学的治療期間の早い段階から、管理栄養士による栄養療法サポートを実践してるのも当院の特徴です。
最後に、2009~2023年に実施した膵がん手術(206例)の治療成績をお示しします。
3年生存率:63.5%、5年生存率:46.4%、生存期間中央値:52.5ヶ月
5年以上の無再発生存症例:29例(2024.7.10現在)
当院は、患者さんの病態に応じた最新の治療を提供できる体制が整っておりますので、いつでもご相談ください。
適応疾患 | 腹腔鏡・開腹数 | |
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2023年 | 胆石/胆のう炎97例、ポリープ/腺筋腫26例、その他8例 | 腹腔鏡127例、開腹4例 |
2022年 | 胆石/胆のう炎81例、ポリープ/腺筋腫15例、その他6例 | 腹腔鏡102例、開腹0例 |
2021年 | 胆石/胆のう炎89例、ポリープ/腺筋腫13例、その他2例 | 腹腔鏡103例、開腹1例 |
胆嚢摘出術の対象となる疾患は胆のう結石症、胆のう炎、胆のうポリープ、胆のう腺筋腫症、胆のうがん(およびその疑い)などです(グラフ1参照)。
胆のう結石は胆のうで蓄えられる胆汁の成分が固まって形成されます。多くの人は胆石があっても無症状ですが、胆石発作や胆のう炎により痛みが生じることがあり、そのような方には手術をお勧めいたします。
胆のうポリープや胆のう腺筋腫症はほとんどの場合無症状ですが、胆のうがんとの区別が難しいことが多く、その場合には手術をお勧めいたします。
手術はいずれの場合でも胆のうを摘出します。当科では毎年100~150例ほどの胆のう摘出術を施行しており、現在は原則として低侵襲手術(腹腔鏡手術)で行っています(グラフ2参照)。ひどい胆のう炎などの場合には開腹手術で行ったり、手術の途中で開腹手術に切り替えることがあります。
2023年 | 115例(腹腔鏡手術76例、前方切開手術39例) |
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2022年 | 82例(腹腔鏡手術61例、前方切開手術21例) |
2021年 | 91例(腹腔鏡手術61例、前方切開手術30例) |
ヘルニア(脱腸)は腹部の筋肉に弛みが生じ腸管などが脱出する疾患で、手術による治療が必要となります。鼠径部(太ももの付け根)に生じる鼠径(そけい)ヘルニアが大半ですが、臍(おへそ)や腹部手術痕などに生じる腹壁ヘルニアも治療対象となります。
当科では、傷が小さく患者さんへの負担が少ない全身麻酔下の腹腔鏡手術を積極的に行っていますが、全身麻酔や腹腔鏡手術が望ましくない状態の方には前方切開手術を行うなど、個々の患者さんの状態やご希望を考慮して適切な手術治療を提供しています。
手術後の入院日数は2日前後です。可能な限り早期の社会復帰が達成できるよう支援しており、実際に退院直後から職場復帰されている方も多数いらっしゃいます。鼠径部や腹部のふくらみにお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひご相談ください。
2023年 | 134例(急性虫垂炎 63例、急性胆嚢炎 24例、腸閉塞 15例、消化管穿孔 14例、ヘルニア嵌頓 8例、その他 10例) |
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2022年 | 137例(急性虫垂炎 58例、急性胆嚢炎 29例、腸閉塞 19例、消化管穿孔 14例、ヘルニア嵌頓 11例、その他 6例) |
2021年 | 153例(急性虫垂炎 63例、急性胆嚢炎 36例、腸閉塞 16例、消化管穿孔 21例、ヘルニア嵌頓 6例、その他 11例) |
当科では、急性虫垂炎や急性胆嚢炎をはじめとする腹部救急疾患の診療を積極的に行っています。手術の必要性を適切に判断したうえで、必要な状況であれば手術加療を行っています。
腹部救急疾患に対する手術は開腹手術のみならず、疾患によっては低侵襲手術が可能なことも多く、お腹に5ミリ〜1センチの小さな穴を複数開けるだけの腹腔鏡下手術も積極的に取り入れています。
手術後は、重症度によっては集中治療部とも連携し、入院・外来を通して診療を継続させて頂き、患者さんに安心して日常生活を送って頂けるよう努めています。腹部救急疾患は疾患によっても重症度が様々です。患者さんの状態に応じて手術を含む適切な治療を提供させていただきますので、ぜひご相談ください。