漏斗胸センターについて
漏斗胸の診断・治療を複合的に行える「漏斗胸センター」を開設しています。漏斗胸は生まれつきの疾患ですが、悩んでいる方は子どものみならず大人にも少なくありません。検診で漏斗胸と診断された方や、胸の凹みで悩まれている方に対して、治療が必要かどうかなどを含めて診察させていただいています。お気軽にご相談ください。
当院には、胸の手術の専門家である呼吸器外科、骨の専門家の整形外科、麻酔・疼痛管理の専門家の麻酔科、傷あとの専門家の形成外科、呼吸リハビリ専門のリハビリテーションセンターがそろっています。対象患者さんには子どもが多いので、当センターでは漏斗胸治療の経験が多い小児外科医が窓口となり診察・治療を行っています。
漏斗胸とは
胸の中央部が凹んでいる変形を「漏斗胸」といいます。肋軟骨の変形が原因とされていますが、不明な点も多い疾患です。乳幼児から気づかれる方や、成長とともに目立ってくる方など様々ですが、約1,000人に1人の頻度で起きると言われており、稀な疾患ではありません。凹みの程度によっては風邪症状が長引いたり、喘息様の症状が出たりすることがありますが、多くの場合、凹み以外の症状はありません。身体的な症状がなくても、特に学童期・思春期では凹み自体が心理的・社会的に大きな問題となることがあります。
治療の内容
当センターでの治療には手術と手術以外の方法があります。
手術治療は、1998年にアメリカのNuss氏が報告した低侵襲手術手技である胸腔鏡補助下胸骨挙上術、いわゆるナス手術を行います。両側胸部(わきの下)に3~4cmの皮膚切開から、金属のバーを胸の中に埋めて前胸部を内側から持ち上げることにより凹みを治します。従来の方法と違い肋骨や胸骨を切らないため、手術時間が短く、出血量も少なく、傷も目立ちません。金属のバーは年齢によって異なりますが、1年半から3年後に抜き取ります。
麻酔について
手術は全身麻酔で行います。この手術は骨を矯正する手術のため、術後に痛みが強く出ます。この痛みを抑えるために硬膜外麻酔(背骨の間から細いチューブを入れ、痛み止めを持続的に流す麻酔)を併用します。
症例
いずれの症例も、手術前と手術直後の様子です。
- 症例1
- →
- 症例2
- →
保存的治療(手術以外の治療)
運動療法
胸を張って開く運動、例えば水泳などは肺活量を増やして胸の形を良くします。ある程度は有効ですが、凹みそのものが著しく改善するとわけではありません。漏斗胸の方は水泳が嫌いということも問題です。
姿勢療法
漏斗胸患者さんは猫背のことが多く、これは更に胸の凹みを目立たせてしまいます。胸を張って大きな息を吸い込むようにすると凹みは目立たなくなります。また手術の前後も胸を張る努力をすると姿勢も良くなり、バーのずれ予防にもなります。
陰圧吸引療法(バキュームベル、ペクタスエッグ)
前胸壁に大きな吸盤をつけて陰圧をかけて胸壁を持ち上げる方法です。手術を必要としませんが、1日数時間毎日続ける必要があります。手術以上の効果は望めませんが、軽度の凹みの方には有効性も示されています。毎日行うものですので、器具の購入が必要になります。
手術を行う年齢
手術を行う年齢は肋軟骨が柔らかい時期の方が良いですが、術後に安静が保てないなど協力が得られない年齢では避けるべきです。従って、早くても小学校生以降が良いと考えます。中学生以上が良いとする意見もありますが、当院小児外科医の経験では、小学生の骨の方が柔らかいので陥凹の矯正がしやすく、術後の痛みも少ない印象です。一方、高校生以上になると軟骨が固くなり、前胸部の挙上が困難になってきます。そのため、バーを複数本入れるなどの工夫が必要になってきます。術後の痛みは肋軟骨が硬くなる中学生以降の方が強くなりますが、術後の痛み止めを十分に使用することで対応しています。Nuss術後は、3カ月程度は運動が制限されますので学校生活(部活動)、仕事に支障が出る場合があります。以上より、小学生もしくは中学生のうちに手術を行うのがよいと考えています。
成人の漏斗胸
当院では成人の漏斗胸に対してもNuss手術を行っています。成人の場合、肋軟骨の硬化が進み、小児より前胸部の挙上が困難になってきます。そのため、バーを複数本挿入したり肋骨に切り込みを入れたりするなどの工夫を行うことで前胸部の陥凹は目立たなくすることができます。小児に比べ痛みが強い傾向になりますので、鎮痛を十分に行います。そのため、小児より術後の入院期間が長くなる傾向にあります。
診療のご案内
診療日 | 水曜日午前、木曜日午後 ※祝日、年末年始は除く |
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診療受付時間 | 【水曜日】8:45~11:30 【木曜日】13:30-15:00 |
受診方法 | 診察予約が無くても受診可能 ※但し、初診時に他の診療所や病院などからの紹介状をお持ちでない患者様には、通常の初診料等の医療費とは別に、選定療養費としてご負担いただいております(選定療養費とは)。 |
お問い合わせ先
2階Bブロック受付
電話 06-6312-8827