公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

特集:あなたにはあなたのための「防災」を
2024年11月8日

①被災地で災害医療を経験した医師と看護師が考える「防災」とは

災害発生時に医療を提供する医師(井上)と、「一人でも多くの人を災害から守りたい」と願う看護師(藤原)。
被災地での経験を踏まえ、「本当に必要な防災計画とは何か?」について、まずは医療従事者である私たち自身が考えてみました。

地震や台風が起きる前から災害への意識を高める

井上 日頃から、災害訓練やメディア情報で心構えをしていたつもりでしたが、実際に災害現場へ派遣されて想像を超える被害状況を目の当たりにし、「どれだけ準備していても足りないものがある」と痛感しました。やはり、実体験を超える体験はありませんね。被災地での数日間は気を張った状態だったのか、疲れている実感があまりなかったんですが、帰路につき、自宅に到着した途端にドッと疲労を感じました。

藤原 私も同じでした。数日間しか滞在しなかった私たちでさえそんな状態だったので、被災地で自ら被災しながら医療に携わるスタッフのみなさんや被災者の方々の心労は、想像をはるかに超えるものだと思います。

井上 災害が発生すると人々からの医療ニーズが急に増えるので、その分医療資源が足りなくなってしまいます。また、医療ニーズは発災から時間が経過するにつれ日々変化しますので、助かるはずの命を取りこぼさないために、迅速な対応はもちろん長期的な支援体制も大切ですよね。

藤原 支援体制という意味では、私は「地域全体で復旧を支える医療スタッフ」の重要性も感じました。災害は地域の特性によって被害内容や状況が大きく変わりますので、日頃から地域と関わり、地域特性をよく理解した医療スタッフが防災に関わることが大事だと思うんです。

井上 たしかに、それは重要ですね。

藤原 私は今、地域の防災活動を担う「まちの減災ナース※」として、大阪市北区・中津エリアでの避難所開設訓練や地域会議に参加しています。災害時の連絡方法や避難場所の確認、避難ルートや自主防災組織はどうなっているかなど、防災への関わり方は多岐にわたります。

井上 地域会議などの場で自身の体験談を話すことも含めて、医療従事者として発信することはとても大切です。災害対策は行政の役割の一つでもありますが、多くの人々が〝自分ごと〞として捉えられるように、私たちも継続的な発信を続けていきたいですね。

藤原 そのためにも、まちの減災ナースをまずはこの地域で広めていきたいと思います。
地域特性への理解がある看護師と地域のみなさんとで協力し、接点を持ち続けることで、「まだ起きていないこと」にどう準備するかなど防災意識を高めていきたいですね。

まちの減災ナース

地域の防災活動を担う看護師のこと。
防災知識を備えて平時から地域に密着し、災害時は直後から素早く活動する。
阪神・淡路大震災を機に設立された一般社団法人日本災害看護学会(東京都)が認定しており、活動を広めるため指導者の育成も進めている。

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