臨床工学技士は医師の指示のもとに、生命維持管理装置をはじめとした医療機器の操作および保守点検を行うことを業務とする専門医療職です。生命維持管理装置とは、人工透析装置・人工呼吸器・人工心肺装置等を指し、いずれの機器も高度化・複雑化された専門性の高い機器です。それらの機器の操作・保守管理を通じ、臨床工学技士は医師や看護師と連携し業務を行っています。
2005年4月に臨床工学部は創設され、2022年現在、臨床工学部は27名が所属しています。
臨床工学部人員構成
医 師 | 1名 |
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臨床工学技士 | 26名 |
計 | 27名 |
心臓循環器分野
カテーテル関連業務、不整脈治療関連業務、人工心肺業務を担当し、夜間休日の急患に対応すべく24時間365日のオンコール体制をとっています。
カテーテル関連業務
冠動脈造影を始め、経皮的冠動脈形成術(PCI)、末梢血管カテーテル治療(EVT)、ステントグラフト内挿術、小児新生児心疾患における循環動態の把握や術前、術後の評価の為のカテーテル検査、コイルやバルーンを用いたカテーテル治療などにおいて、生体情報記録解析装置や血管内超音波装置(IVUS)、末梢血管貫通用カテーテル装置などの操作を行っています。
また、大動脈内バルーンパンピング装置(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)といった補助循環装置の操作や管理も臨床工学部の業務です。
不整脈治療関連業務
心臓ペースメーカや埋め込み型除細動器(ICD)、両室ペーシング機能付き埋め込み型除細動器(CRT-D)、着用型除細動器(WCD)などの患者様の身体に埋め込む機器の手術中のサポートや外来や病棟での埋め込み機器の定期的なチェック、遠隔モニタリングの監視と解析を行い、安全確保に励んでいます。
カテーテルアブレーション治療では心内電位記録装置や3Dマッピングシステム、心臓電気刺激装置、高周波通電装置など高度な専門的知識と技術を要する医療機器が多く使用されます。これらの機器の操作を行い、不整脈の起源の解明や安全な治療への支援を行っています。
また、当院では2016年2月よりクライオアブレーション治療を開始しました。このクライオアブレーション治療に対しても開始当初より臨床支援を行っています。
人工心肺業務
心臓や大血管の手術において、一時的に心臓を止めて手術を行う際に心臓の代わりを担う人工心肺装置や心臓の筋肉を護る心筋保護装置、クライオアブレーション装置、フローメーターなど、心臓血管外科手術において使用される生命維持管理装置をはじめとした機器の操作や管理を行っています。
血液浄化分野
当院の血液浄化センターは、ベッド数20床があり、月・水・金は2クール、火・木・土は1クールで稼動しています。
現在、約60名の外来通院患者様に加え、検査や手術により入院の必要な患者様が血液透析治療をされています。
また、地域の中核病院として災害時にも対応できるよう、災害対策にも力をいれています。
例を挙げると、地震の揺れに患者監視装置が倒れないようにキャスターのロックをOFFにし、給排液のホースの長さも適当にとり患者様周辺の安全対策をしています。他にも、血液浄化センター独自の災害訓練や災害時アクションカード作成をおこなっています。
臨床工学技士の業務内容は、透析機材の準備、透析液の作成、プライミング、穿刺、透析中の患者モニターの監視、返血などの臨床業務をはじめ、安全に患者様に透析を受けていただくために血液浄化装置の定期点検・オーバーホールなどの機器管理や透析液の水質管理を行っています。
血液浄化センターでは、血液透析の他に血漿交換療法(単純血漿交換、免疫吸着療法)やLDL吸着療法、血液吸着療法(GCAP,LCAP、エンドトキシン吸着など)、末梢血幹細胞採取などもおこなっています。また難治性腹水に対して、腹水濾過濃縮再静注法もおこなっています。
血液浄化センター以外にも、手術後や心疾患などを合併した重症患者様に対して、ICUやHCUでの血液透析や血漿交換をはじめ、小児患者様の血液透析や血漿交換も病棟にておこなっています。また緊急を要する症例には24時間体制で対応しています。
手術室分野
手術室では術式に応じて多種多様な医療機器が使用されており、それらのトラブルは手術の進行に重大な影響を与えます。手術室で勤務する臨床工学技士は、「機器の安全と円滑な手術進行への寄与」を目標に、保守管理や手術中に生じた機器不具合への迅速対応、臨床支援などを行っています。
保守管理業務
近年、機器の高度化・複雑化が進んでおり、性能維持や安全確保に定期保守と日常保守は重要なものです。臨床工学技士は定期保守計画や定期保守結果の管理、機器の使用前点検や、滅菌機器の使用後(洗浄後)点検、機器に付属する消耗品の管理などを行っています。
トラブル対応業務
当院では機器の不具合に迅速に対応するため、オンコール体制をとっております。また、不具合への対応だけでなく、機器の使用方法の説明や勉強会の開催、故障件数の集計や原因究明、再発防止策の検討など、医療安全にかかわる支援業務を行っています。
臨床支援業務
手術に立会い、ロボット手術支援装置da Vinci Siやナビゲーション装置 Stealth Station S7、自己血回収装置などの準備や操作を行っています。
中央機器管理分野
中央機器管理業務
中央機器管理を担うMEセンターの業務内容は、医療機器の修理、定期点検、病棟・外来でのトラブル対応、機器の貸出・返却・所在把握、院内スタッフに対する医療機器の操作安全講習、マニュアルの作成、医療機器選定など院内の医療機器に関連する業務の多岐にわたっています。また、新生児集中治療室・集中治療室・救急救命室・救急車内などは特に特殊で高度な機器があるため、現場に赴き機器の保守管理を行なっています。
勉強会
救急車内医療機器点検
2013年3月より医療機器管理専用のデータベースソフト(METS、me-ARC)を使用し臨床工学部、物品管理課、検査部、放射線部でデータを共有し、病院全体で管理を行っています。
管理ソフトTOP画面
貸出・返却作業専用端末
臨床工学部では約5700台の機器を購入から点検・修理・廃棄までQRコードを機器個々に貼り付け管理しています。また、病棟をはじめ各部署の電子カルテ端末からWEB予約で機器の貸出依頼が出来るようにしており、誤配によるヒヤリハットを防いでいます。
輸液ポンプ・シリンジポンプなどの流量、閉塞圧テストはテスター(METS)を使用し点検を行っております。テスターは医療機器管理ソフトと同じメーカーのものを使用しているので、互いに同期しており、点検結果レポートを管理ソフトで一括に管理することができます。
物品・機器管理は当直担当が把握しやすいようにまとめており、在庫がなくならないよう、毎日残量を確認し、補充しています。
呼吸療法業務
他職種で構成されるRST(呼吸療法サポートチーム)にも参加し、医療機器の安全管理に全力をあげております