公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

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こどものヘルニアセンター

こどものヘルニアセンター

北野病院で、鼠径ヘルニア“脱腸”、臍ヘルニア“でべそ”を治しましょう!

こどものヘルニアセンターとは

2021年9月1日開設。生まれつきのヘルニアを治療する診療科です。

ヘルニアとは本来はからだの中にあるべき臓器がからだの隙間や穴を通じて位置がずれてしまう病気です。生まれつきある隙間や穴から出るヘルニア(先天性)と、年をとったため緩んだからだの隙間から出るヘルニア(後天性)があります。こどものヘルニアのほとんどは生まれつきの病気(先天性)で、老人で発症するヘルニアとは似て非なるものです。従って治療方法も違います。

年をとってなるヘルニアは加齢による組織の脆弱化が主な原因ですが、こどものヘルニアは生まれつきの組織の欠損(穴)が原因です。加齢を原因とするヘルニアでは組織の補強を必要としますがこどものタイプのヘルニアは穴をふさぐのみで、成長の邪魔になる補強材料の挿入留置は必要ありません。同じ病名でも治療法がこどもとおとなでは大きく異なります。そのためこどものヘルニアの専門施設が必要になります。

そこで北野病院ではこどもの手術を専門としている小児外科医が中心となって“こどものヘルニアセンター”を開設することになりました。

鼠径ヘルニアについて

こどもの鼠径ヘルニア

こどもで手術を必要とする疾患で最も頻度の高いものが鼠径ヘルニアです。一般に“脱腸”と呼ばれることが多い病気です。赤ちゃんや歩き始めのこどもに多く出現しますが、運動量が増えて腹圧が高くなってから発症することも珍しくありません。

赤ちゃんの10%程度には出生時に鼠径ヘルニアの原因となる穴(ヘルニア門)が足の付け根に残っているといわれていますが、鼠径ヘルニア“脱腸”になるのは全体の2-5%です。新生児での鼠径ヘルニアは自然に治る可能性があるといわれていますが、その頻度は多くありません。

鼠径ヘルニアの最も怖いことは、飛び出した内臓(多くは腸管、女の子では卵巣も)が飛び出した穴に挟まれて血が通わなくなり腐ってしまう(壊死)ことです。もちろん痛みが出現しますが、赤ちゃんはしゃべれず泣くのみで、気づいたときには壊死していることがあります。したがって自然治癒が期待できない鼠径ヘルニアは早期に治してしまう必要があります。

鼠径ヘルニアの手術は直径3mmの細い内視鏡を用いた鏡視下経皮的腹膜外閉鎖術(LPEC手術)を実施しています。手術時間は15分程度で、反対側の隠れた鼠径ヘルニアの出口も見つけて同時に治すことができます。日帰り手術にも対応しています。

“足の付け根”(鼠径部)の先天的な穴が完全に閉じずに小さく残ると、腸が飛び出すほどの穴ではないので“脱腸”は出ないが、お腹の中の水(腹水)が鼠径部に降りて溜まり、鼠径ヘルニアの親戚の病気である陰嚢水腫や精索水腫になります。これらでは腸管が腐る心配がないので自然治癒を期待してつかまり立ちあるいは歩き出す頃までは経過を見ることが多いです(1歳くらい)。ただし、水腫のサイズが大きくなり邪魔になる場合や緊満して痛みなどの症状が生じる場合には早期にこどもの鼠径ヘルニアと同様の手術を行ない治療します。

日帰り手術に対応

8:15にご来院いただいて手術を行い、経過観察で問題ないことを確認した上で、16:00頃にご退院いただけます。お子さまにもご家族の方にもご負担が少ない方法で手術を行います。
主な対象患者さんは以下の通りです。

外部リンク

おとなの鼠径ヘルニア

また“おとな”でも“こども”と同じ原因、タイプのヘルニアを発症する人がいます。おとなになってからもこどもタイプの鼠径ヘルニアが出現することが多くあります。そのほとんどは若年で発症します。

成人タイプの鼠径ヘルニアは直接鼠径ヘルニア/内鼠径ヘルニアが多いとされ、治療には腹壁の補強が必要とされています。しかし、40歳までに発症する鼠径ヘルニアはこどもタイプの間接鼠径ヘルニア/外鼠径ヘルニアのことが多く、腹壁の補強を必要としないため異物を挿入することが不要で手術時間が短く、術後の回復も速くなります。

このようなタイプのヘルニアに対してはおとなの症例であっても異物を挿入しないこどもの鼠径ヘルニアと同じ術式を行なっています。鼠径ヘルニアの病型診断をしっかりすれば、おとなでもこどもと同じシンプルな術式で良好な術後成績を得られています(腹腔鏡を用いることで病型判断がしっかりできます)。

臍ヘルニアについて

次いでこどもに多いヘルニアは臍ヘルニア、いわゆる“でべそ”です。出生後に臍帯、いわゆる“へその緒”が取れた後に“へその緒”が通っていたへその穴が閉じないことが臍ヘルニアの原因です。

臍帯脱落後にへその穴はすぐ閉じることがほとんどですが、新生児の1割程度は臍帯脱落後の短期間は臍輪が開存することがあります。特に低出生体重児 “未熟児”に多く、“でべそ”は泣く力が強くなるほどに膨隆が目立ってきて大きな“でべそ”になることがあります。

臍輪が閉じ損ねて“でべそ”になっても7-8割程度の赤ちゃんは生後3か月以内(多くは1か月程度)にその穴は自然閉鎖します。3か月経っても穴が閉じないとき、穴は閉じたけれど臍の皮が伸びて“でべそ”の形になってしまったとき(臍突出症)は手術をして臍の形成をします。

小児外科学会のホームページ:小児外科で治療する病気 臍ヘルニアを参照してください。

臍ヘルニアの手術時間は30分程度で、日帰り手術も可能です。

北野病院の治療体制

こどもの生まれつきのヘルニアには上記の鼠径ヘルニア、臍ヘルニア以外にも腹壁ヘルニア、食道裂孔ヘルニア、腸間膜裂孔ヘルニア、臍帯ヘルニア、横隔膜ヘルニアなどがあります。すべて生まれつき “先天性”の病気で、外科的な治療が必要です。

小児外科医が新生児科、小児科、麻酔科、形成外科などとチームを組み対応するこどものヘルニアセンターにご連絡ください(小児外科医が対応します)。

鼠径ヘルニア “脱腸”臍ヘルニア “でべそ”を治療する「こどものヘルニアセンター」は、まずは小児外科外来を受診してください。

受診方法

受診方法 他の医療機関からの「こどものヘルニアセンター」または「小児外科」宛の紹介状をご用意の上、外来診察日にご来院(受付時間はこちらのページを参照)いただくか予約をお願いします。
※紹介状なしでも受診可能ですが、選定療養費が診察費とは別に発生します
外来診察日 小児外科の外来で受け付け、診察します。
手術日 月曜日、火曜日
お問合せ 北野病院 本館2階Bブロック受付
電話 06-6312-8827

他医療機関ご担当者さまへ

鼠径ヘルニア・陰嚢水腫・精索水腫の診療情報提供書は雛形を用意しております。ぜひご活用ください。