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腎臓病には①腎・尿路形成異常などの生まれつき(先天性)の腎臓病、②腎臓だけが侵される糸球体腎炎やネフローゼ症候群を代表とした一次性腎臓病、③糖尿病・高血圧・肥満などの生活習慣病あるいは膠原病などが背景疾患となっている二次性腎臓病、④がんや心血管系疾患の治療に関連して腎機能低下をきたす腎臓病があり、標準治療の他に個別化治療を行っています。
当院腎臓内科は、厚生労働省の難治性腎障害や難治性血管炎に関する研究事業に参加して新規治療法に精通しているほか、新しい治療法開発のための臨床試験(治験)も行っています。これらを基盤として軽度の検尿異常から早期に的確な診断をして治療を開始し、腎機能低下の進行を最小限に抑えるよう努めています。腎機能が廃絶した患者さんでは、腎代替療法として血液透析、腹膜透析および腎移植の全てを選択肢として提供できますので、社会復帰を目指す患者さんとともに歩む医療を心懸けています。


蛋白尿や血尿を指摘された患者さんに対して5日間入院で腎生検など精査を行い、個々の腎臓病に確立されている標準治療を開始します。年齢や全身状態を加味して治療薬の調節が必要です。ステロイド剤や免疫抑制剤を主体とした治療では、感染症、高血圧、血糖上昇などの副作用を起こす可能性があり、治療開始時あるいは再発時などでの治療薬が多いときには2〜4週間程度の入院が必要です。退院後は月1〜2回程度の通院治療にて、治療薬を必要最小限まで徐々に減量します。治療を継続しながらの就業は多くの場合可能です。長期に寛解(治療により病気の勢いが無くなっている状態)した場合には、地域のかかりつけ医との連携診療へ移行しますが、再発を繰り返したり薬剤を減量できないような難治例では当院で治療を継続します。
全身性血管炎では急速な腎機能低下とともに重篤な他臓器障害を起こします。このような患者さんに対しては、可能な範囲で早急に腎生検を施行し寛解導入療法を開始します。当科は上記研究班に所属しているため血管炎に対するステロイドおよび免疫抑制剤の豊富な使用経験があります。寛解導入後は外来で寛解維持療法を継続します。
腎機能が低下した患者さんでは高血圧、浮腫、貧血、骨粗鬆症が共通した症候として現れます。慢性腎不全検査・教育入院や外来では管理栄養士から食事療法指導や看護師からの生活指導を行い腎機能低下の進行を抑制するよう努めます。尿所見や腎機能が安定した場合には「かかりつけ医」との連携診療へ移行しますが、進行性腎機能低下をきたした場合には原因検索を更に行い、必要に応じて腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)の説明を多職種から行います。
血液浄化センター(透析室)では、看護師および臨床工学技士とのチーム医療を行っています。腎機能が廃絶した患者さんには透析療法(血液透析あるいは腹膜透析)または腎移植に関しての療法選択説明を行います。血液透析ではバスキュラー・アクセス(内シャントとも言います)を1泊2日入院で作成します。腹膜透析では腹膜透析カテーテル留置術を行います(泌尿器科での手術で、1週間程度の入院が必要です)。腎移植(生体間移植)を選択された場合には、腎機能が極度に低下する前から移植適合検査も含めて提供者の選択を始める必要があり、透析療法とは別に説明します。バスキュラー・アクセス作成あるいは腹膜透析カテーテル留置が終了している患者さんでは、透析療法開始時は2週間程度の入院となりますが、いずれの準備もできていない場合には1ヶ月以上の入院が必要となります。透析療法を行っていても就業は可能であり、社会復帰する上で最も適切な透析施設を紹介します。腹膜透析および腎移植では当院へ月1〜2回程度の通院治療となります。
バスキュラー・アクセスはしばしば狭窄(血管内腔が細くなる)や閉塞(血管が詰まってしまう)をきたします。他施設で透析されている患者さんでも緊急対応にてカテーテルを用いた修復術を行います。心筋梗塞や心臓弁膜症では心臓センター、脳卒中では神経センター、アミロイド症では整形外科、下肢壊疽では心臓センター・皮膚科および形成外科とのチーム医療体制となります。がん治療でも担当診療科と併診しているほか、続発性副甲状腺機能亢進症では腎臓内科が窓口となって耳鼻咽喉科で手術を行っています。
救急外来あるいは入院中の患者さん等で急激に腎機能が低下していることが判明した場合には、腎臓内科が主科となるか他科と併診し、透析療法の適応決定や実施を行います。手術に関連する場合には集中治療室などでも臨床工学技士とともに透析療法を行います。