公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

婦人科

経験豊富なスペシャリストが患者さんの健康をサポート。
充実した腫瘍専門医、内視鏡認定医(腹腔鏡・ロボット)による婦人科手術、また、様々な薬物療法、放射線治療を行っており、安心・安全な医療を目指しています。

治療について

センチネルリンパ節生検

がん細胞がリンパの流れに乗って最初に到達するリンパ節のことを「センチネルリンパ節」と呼びます。このセンチネルリンパ節を検出して摘出し、がん細胞の転移があるか顕微鏡で調べる検査を、「センチネルリンパ節生検」と呼びます。センチネルリンパ節に転移が無いことが確認できれば、それ以外のリンパ節にも転移が無いと判断されるため、不要なリンパ節郭清を防ぐことができます。不要なリンパ節郭清を防ぐことで、リンパ浮腫などの合併症を減らすことができます。この考え方は、乳がんや悪性黒色腫の治療では保険診療として既に導入されており、子宮がんにおいてもいくつかの臨床研究で有用性が示されているため近い将来に広く導入されることが期待されています。 当院では子宮がんに対するセンチネルリンパ節生検を臨床研究として行っております。術中迅速病理検査の結果、センチネルリンパ節に転移を認めなかった場合には、子宮頸がんでは骨盤リンパ節郭清の一部を省略し、術後リンパ浮腫等の合併症の低減に努めています。

腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術

従来開腹手術で行われてきた子宮悪性腫瘍手術(子宮体がん、子宮頸がんに対する根治術)について、一定の基準を満たせば腹腔鏡下手術を保険診療として行うことが可能です。当院は保険診療として腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を行うことができる認定施設です。婦人科腫瘍専門医、婦人科内視鏡技術認定医が責任を持って手術を行います。
術前診断がIA期と判断される子宮体がんに対しては、リンパ節郭清を含めた腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を保険診療として行うことが可能です。
子宮頸がんに対しては、現在当院では原則として最大腫瘍径が2cm以内の場合に腹腔鏡下広汎子宮全摘術(臨床研究としてセンチネルリンパ節生検を併用)の適応としています。最大腫瘍径が2cmを越える場合は開腹広汎子宮全摘術をお勧めしています。また、腹腔鏡下(または開腹)広汎子宮頸部切除術(トラケレクトミー)についても最大腫瘍径が2cm以内の場合を適応としています。

広汎子宮頸部摘出術(トラケレクトミー)

広汎子宮頸部摘出術(トラケレクトミー)は、初期の子宮頸がん(IA2~IB1期)に対して子宮頸部のみを摘出する手術です。通常であれば子宮全摘が必要な子宮頸がん患者さんに対して妊娠能力を温存できる唯一の手術療法です。
当院では以前よりこのトラケレクトミーを実施しており、これまで数多くの患者さんが妊娠されています。ただしトラケレクトミーが安全に施行できるかどうかは、がんの大きさ、場所、組織型などを十分に評価した上で決定する必要があります。
詳しくは外来担当医にご相談ください。

ロボット支援下子宮全摘術

当院では子宮筋腫などの良性疾患に対するロボット手術(ロボット支援下子宮全摘術)を2019年10月より保険診療で開始しました。ロボット手術は3D視野での手術操作が可能で、ロボットアームにより従来の腹腔鏡で困難な手術操作も安全に施行できる利点を有しています。更に子宮体がんに対するロボット手術も、2021年10月より開始しました。
現在は仙骨腟固定術を含むすべてのロボット手術に対するプロクター(指導医)資格を持つ医師が在籍しているため、慎重に適応を検討したうえで、様々な子宮脱手術に取り組んでいます。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群に対する予防的卵巣卵管切除術(リスク低減手術)

BRCA遺伝子に病的変異があり、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と診断された場合は、リスク低減手術(卵巣がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に予防的に卵巣と卵管を切除する手術)が、出産を終えて35~40歳の間で推奨されています。リスク低減手術によってのみ、卵巣がんのリスクや卵巣がんによる死亡率を減らすことが報告されています。基礎疾患や合併症等の問題がなければ、腹腔鏡下手術で行うことが可能です。2020年4月よりこの手術の一部は保険診療が可能になりました。

高度な抗がん薬治療

当院で抗がん薬治療を主管する腫瘍内科医および化学療法センターとの密な連携のもと、免疫チェックポイント阻害剤を含む様々な抗がん薬治療を行うことが可能です。

良性・悪性疾患に対する手術

婦人科手術経験の豊富な医師が充実しているため、高度な開腹手術のみならず、積極的な鏡視下手術やセンチネルリンパ節生検の導入により、患者さんの負担が少ない低侵襲な手術を心がけており、様々な術式に対応可能です。

妊孕性(妊娠するために必要な能力)温存手術

子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、早期子宮頸がんなど様々な疾患に対する妊孕性温存術式に対応します。またできるだけ速やかに不妊治療に臨めるよう不妊治療クリニックとも連携を進めています。

治療実績

手術実績(2023年)

単純子宮全摘術 96件(開腹39件、腹腔鏡下55件、ロボット2件)
良性卵巣腫瘍摘出術 135件(開腹5件、腹腔鏡下130件)
子宮筋腫核出術 17件(開腹14件、腹腔鏡下3件)
異所性妊娠手術 14件(開腹0件、腹腔鏡下14件)
骨盤臓器脱手術 10件
子宮鏡下検査・手術 224件(腰麻39件、病棟手術185件)
子宮頸部円錐切除術 123件(腰麻38件、病棟手術85件)
広汎子宮全摘術 10件(開腹8件、腹腔鏡下2件)
広汎子宮頸部摘出術 1件(開腹0件、腹腔鏡下1件)
準広汎子宮全摘術 5件(開腹3件、腹腔鏡下2件)
子宮体がん手術 35件(開腹14件、腹腔鏡下12件、ロボット9件)
卵巣がん手術 34件
再発がん手術(IDS含む) 4件
その他 19件
婦人科手術合計 727件

当施設での婦人科がん治療成績(2017年5月以後)

子宮頸がん

子宮体がん

卵巣がん