公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

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膝関節外科

膝関節外科

当院では様々な膝の疾患(病気)、外傷(けが)に対する治療を行なっています。保存的治療で症状が改善しない場合や、手術しないと悪い経過が予想される場合には手術治療を行なっています。手術としては、内視鏡(高画質4Kモニターで表示した関節鏡)を用いた様々な低侵襲手術から、(関節鏡ではなく)直視下にO脚を矯正し関節を温存する手術や、人工膝関節置換術まで幅広い手術を行なっています。幅広い手術を行う理由は、例え同じ疾患であっても、それぞれの患者様の病態は一様でなく、また年齢や活動性、職業といった生活背景も異なりますので、それぞれの方にあった治療法を提案し、実際に行っていくためには、様々な手術法に精通し、それらを駆使する必要があると考えているからです。

対象となる主な疾患

手術名、疾患名をクリックすると対応する手術へリンクされます。
内視鏡(関節鏡)手術
直視下手術
関節温存手術人工関節
  • 変形性膝関節症
  • 特発性大腿骨顆部骨壊死

内視鏡(関節鏡)手術

十字靭帯再建術

十字靭帯は膝の中央にある靭帯で前十字靭帯、後十字靭帯があります。損傷すると、膝の前後の不安定性を生じますが、同時に捻りに対する不安定性も生じます。特に、前十字靭帯損傷は膝崩れなどの不安定性による症状が出やすく、放置すると変形性膝関節症を生じることもあるため、多くの場合、靭帯を再建する手術が必要となります。当院では患者様に応じてハムストリングスの腱を用いた二重束再建術、あるいは骨をつけた膝蓋腱を用いた再建術を行なっています。できるだけ本来の靭帯に近い形に再建するように手術を行なっています。

半月板縫合術

半月板は膝の中でいわゆるクッションのような役割を果たしている組織で、損傷すると痛みや引っかかり感、場合によってはロッキング(膝が引っかかったような感じになって痛くて曲げることも伸ばすこともできなくなる状態)などの症状が出ます。保存的治療で症状が良くなることもありますが、手術でないと症状が改善しないことも多くあります。半月板は一度なくなると再生しないため、安易に切除を行うことはせず、できる限り縫合を行ない、半月板を温存するように心がけています。ただし、半月板の状態が悪い場合や、高齢者の場合などで、縫合することが困難あるいは再断裂の可能性が高い場合はできるだけ半月板を残す形で部分切除を行う場合もあります。
また、半月板の損傷はO脚を伴うことも多く、半月板の治療だけでは再発の可能性が高い場合、骨切り術を併用することもあります。

軟骨修復術

軟骨は関節面を覆っている滑らかな組織ですが、損傷が進行すると骨が関節面に露出し、痛みの原因となります。進行した軟骨損傷に対しては、同じ膝の健常な骨軟骨(体重のかからない部分)を採取して病変に移植する自家骨軟骨移植術を主に行なっています。損傷の範囲が狭い場合には、内視鏡で処置を行うことも可能ですが、損傷の範囲が広い場合は、関節の切開が必要となることもあります。

直視下手術(関節鏡を用いない手術)

主に変形性膝関節症や特発性大腿骨顆部骨壊死に対して行なっています。
変形性膝関節症は軟骨損傷がすり減って、骨の変形が生じる疾患です。高齢者に多いですが、比較的年齢の若い方でも半月板損傷や靭帯損傷など原因となって起こることもあります。
特発性大腿骨顆部骨壊死は、はっきりした原因は不明で、多くは大腿骨内側顆部に生じます。血流障害や、微小骨折などが原因と考えられています。強い疼痛を伴って発症し、急速に骨が潰れてくることもあります。
運動療法や薬物療法、装具治療などの保存的治療でも痛みなどの症状が改善しない場合、手術が必要となります。

関節温存手術

日本人の膝は内反変形(O脚)が多く、骨の変形が膝の内側だけに留まっている場合は、脛骨(すねの骨)の形を矯正する手術(高位脛骨骨切り術)を行うことによって治療することができる場合があります。この手術の利点はご本人の本来の膝を温存することができるため、自然な状態に近い膝を再建できることと考えられます。
当院では皮膚の切開を従来に比べて小さくし、日本人の骨の形態に合わせたプレートを用いて強固に固定しているため、術後の安静期間を短縮することができ、また傷の治りも早いため、日常生活や仕事への復帰も従来に比べて早くなっています。
特発性大腿骨顆部骨壊死に対しては自家骨軟骨移植術を併用し、壊死した部分を直接治療する場合もあります。

人工膝関節置換術

変形が関節全体に広がっている場合や、活動性がそれほど高くない場合、高齢の場合などには、人工膝関節置換術を行います。人工関節に求められるのは痛みのない安定した動作を可能にすることと、長期の耐久性と考えられます。そのため、人工膝関節置換術を行う場合は、手術前に膝自体をCTなどで精密に評価するだけでなく、下肢全体の状態を評価し、正確な位置への人工関節の設置を図ります。また、できるだけ靭帯などの関節を支える組織を大きく剥がさず温存し、丁寧に手術を行うように心がけています。

膝関節外科 担当医師

  • 佐治 隆彦
  • 田村 治郎