2009. Nov. 14

 クレソンの会では、これまでに、金閣寺や平等院鳳凰堂、高野山など世界文化遺産に登録されている場所を訪ね、そのたびに新たな感動を経験しました。関西の文化遺産というと、残るは姫路城。すでに始まっている平成大改修のために、来年の春には天守閣の周りに足場が組まれ、その美しい姿が隠れてしまいます。「今こそ、その姿を見届けておかなければ」ということで、今回の行き先は姫路城に決まりました。
 ツアーの前夜から降り続いた雨は夜が明けてもやまず、傘をさしての出発となりました。ところが、病院を出発して30分ほど走った頃、西の空が明るくなったと思ったら、見る間に雲が切れて青空が広がりました。この時、車内は大盛り上がり。ステキな一日が約束された瞬間でした。
 姫路市内に入ると、間もなくお城が見えてきました。まずは、お城の西御屋敷跡に広がる庭園「好古園」を見学。池に落ちる滝の音やお城を借景とした美しい庭、紅葉した木々や地面に落ちた木の実などが、みんなを清々しい気持ちにしてくれました。この日の昼食場所は、お城を目の前にのぞむ「高田の馬場」というお店でした。にゅうめんやちらし寿司、てんぷらなど盛りだくさんの食事で、午後に備えてしっかりパワーをつけました。

そしていよいよお城へ向かいます。この頃には快晴となり、大手門をくぐって見上げた天守閣は、青空にくっきりと映えていました。お城の中は、その優雅な外観からは想像もできないほど質実剛健な造りでした。市内を広く見渡せる狭間や武具を吊るすための鉤、板敷きの広い部屋など実用一点張りの内装。常にミシミシ・パキパキと音がして、まるで大勢の動きに合わせて柔軟に動いているような印象を受けました。急な階段(梯子と言った方がぴったり)を、両手と両脚を使って這うように登り、ようやく最上階へたどり着いて心地よい風にあたりながら息を整えていると、クレソンの会のメンバーが次々と上がってきました。その中に最高齢の参加者の姿もありました。みんなに応援されて登りきったとか。この前向きな姿勢こそ、クレソンの会のお手本だと感心させられました。大きくて見所いっぱいの姫路城。見学時間を2時間とっていたのに、全部を回りきらないうちに集合時間が近づいてしまいました。

お城の周辺には、忍者に扮したボランティアの人たちが何人もいて、観光客にガイドをしてくれたり、日本刀で切りつけてくれたり(!)、記念写真に納まってくれたりという楽しい趣向がありました。また、この日のうれしい発見のひとつが、大手門前のお店で売られている「お城焼き」。こしあんの入ったカステラ饅頭で、お城の形をしています。お土産用の箱入りの他、一個80円でバラ売りもしてくれるので、さっそく買って歩き食い。こんなことも旅ならではの楽しみです。さくさくのカステラととろとろの熱い餡は、子どもの頃に食べたような、とてもなつかしい味でした。

 
       
  お城を後にして向かったのは、創業明治43年の灘菊酒造。創業時に建てられたという木造の酒蔵を中心に、酒造りの工程などを見学させてもらいました。この日は、11月8日に絞ったばかりの新酒をウェルカムドリンクとして用意してくれていました。ところで、酒蔵に隣接する売店では全ての商品を試飲することができます。程よく冷やされた日本酒を次々と試す“つわもの”から、甘酒を少しずつ味わう人までさまざま。お正月用にと、ちょっと高価な大吟醸を買い求める人もいました。
  クレソンの会のおかげで、過去7年半の間に、いくつもの行きたかった場所を訪れることができました。今回も、新幹線の車窓から眺めるばかりだったあこがれの姫路城を、内からも外からもじっくりと観察することができて大満足。
  いいお天気と仲良しのみんなのおかげで、15回の節目にふさわしい心に残る旅になりました。後日、あの日お土産に買った吟醸酒を飲んでみると、感動のおいしさ! これを早くみんなに知らせたくて、再会が待ち遠しい今年の冬です。