2009. May 9

 クレソンの会の親睦バスツアーは、早いものでもう14回目の実施となりますが、今回ほどお天気の心配がいらなかったことはありませんでした。天気予報で「降水確率0パーセント」を約束されたこの日は、早朝から輝くばかりの晴天でした。朝9時、バスは今回の目的地、高野山へ向かって病院前を出発。1時間ばかり走ったところで、和泉市の「国華園」へ休憩のために立ち寄りました。
 ここは花や球根、園芸資材などを扱う大きな店舗で、温室の中には色とりどりの鉢植えの花が並び、いい香りが漂っています。きれいな花に心がはずみ、たくさんの種類の中から、それぞれがお気に入りを選んで買い求めました。さらに、2度目の休憩をとった「道の駅 紀ノ川」では、朝穫り野菜に夢中になり、ここでも大量に買い物。目的地に行き着く前に、大型バスのトランクルームはお花と野菜で一杯になってしまったのでした。
 和歌山県に入ったバスは、くねくねとカーブを繰り返す急勾配の山道を登り続けます。やがて周りの山々を見下ろす高みへとやってきた頃、高野山の大門が見えてきました。大門を過ぎるとあたりの景色は一変し、宿坊やみやげ物屋が並ぶ平坦な場所が目の前に開けました。時刻はもう1時前、まずは宿坊「福知院」で精進料理をいただきました。さまざまな野菜や生麩などを使った料理が、たくさんの器に彩りよく盛られた大変豪華なお食事でした。昼食の後、福知院からほど近い「金剛峯寺」を訪ねました。高野山の全ての寺院の中心とされる場所だけに、寺内は厳かな雰囲気に包まれています。ここでは、大広間に展開される、四季の花鳥や弘法大師の高野山草創を描いた襖絵を、静かに見学しました。再びバスに乗り込み奥の院入口へと移動、ここから歩いて弘法大師の御廟へと向かいます。杉木立の間に苔むした墓標が立ち並ぶ参道を進むにつれ、ひんやりと清らかな空気が濃くなっていきます。

 やがてひときわ大きい杉の木に行き着きました。樹齢千年くらいでしょうか、神秘的なオーラを発散しているこの老木に触れていると、惜しみなく生命力を分けてもらった気がしました。ステキな体験でした。さらに奥へと進むと、行く先に、御廟橋(“みみょうのはし”と読むのだそうです)が見えてきました。先を行く人に倣って一礼してから橋を渡ると、小さな祠の周りに人が集まっているのに出会いました。ここは「弥勒石の祠」といい、集まった人達は、祠の格子から手を入れて、中の石を持ち上げられるか挑戦しているのでした。石を持ち上げられた人は罪が軽く、持ち上げらなかった人は罪が重いのだそうです。石がビクとも動かなかったのは“か細い”腕のせいだと言い張って先へ進むと、いよいよ階段の先に灯篭堂が見えてきました。ここから先は特に浄域とされ、写真撮影は禁止です。灯篭堂の奥へ回りこむと、そこに弘法大師の御廟がありました。絶えることのない蝋燭の火と濃厚な線香の煙、そして居合わせたお遍路さんたちの読経の声が大変印象的でした。
 
       
  夕方、霊峰をあとにして、バスは大阪へ向かって山を下りました。この日最後に立ち寄った岸和田サービスエリアでも、水ナスのお漬物や柿の葉ずし、お土産のお菓子などを大量に仕入れてバスに乗り込むみんなを見て、「みなさんよくお買い物をなさいますね」と添乗員さんが驚いた顔。その通り。このメンバーから買い物を切り離すことはできません。この日も買い物やおしゃべりを大いに楽しんで、世界文化遺産に感動し、充実の時間を過ごすことができました。
 時間の経過に伴って受診の回数も減り、今では外来でお互いに顔を合わせることがほとんどなくなりました。半年に一度のバスツアーだけがみんなに会えるチャンス。半年ぶりに、あるいは一年ぶりに会えた人たちと時間を共有していると、日常のややこしいことを全部忘れて穏やかな気持ちでいられます。
 この安心感はどこからくるのかな、と考えてみると、普段あまり使わない「絆」という言葉がふと頭をよぎりました。長い時間をかけて、クレソンの会のみんなとは強い絆で結ばれてきたんだなぁと、この日改めて納得することができたのでした。