クレソンの会
2006.May.13
今年4月、北野病院に乳腺外科が開設されたことで、クレソンの会のメンバーも乳腺外科と呼吸器外科へ、従来の主治医の所属する科に分かれてしまいました。2つの科はフロアが違うことから、バスツアーへの呼びかけや参加申込みの取りまとめが困難になるのではないかと心配していましたが、呼吸器外科の小谷さん、乳腺外科の新谷さんや北村さんの協力のおかげで順調に運び、春のツアーには35名の参加者希望者が集まりました。
  ツアー当日の5月13日、夜明け前から降り始めた雨は、集合時刻の9時前には本降りになってしまいました。それでも病院のロビーには、予定していた全員が元気な姿で次々と集まり、さっそくいつも通りの和やかムードを展開していました。
   この日最初におとずれた「サントリー山崎蒸留所」は、豊かな自然に囲まれた山崎峡にあります。千利休が愛でたと伝えられる山崎の名水をベースに、80年以上も前からここでウイスキーが作られてきたそうです。入口で「現地参加」の瀧先生と合流し、工場見学が始まりました。二条大麦の乾燥から仕込み⇒発酵⇒蒸留⇒貯蔵と、モルトウイスキーが作られる工程は、初めて見るものだけに興味津々。中でも、背の高い銅製の蒸留釜がズラリと並ぶ蒸留室は圧巻でした。
やがて、ゲストルームへと案内された私たちは、「山崎12年」を試飲させてもらいました。大きな氷にウイスキーと水を1:1の割合で注いだハーフロックといわれる飲み方がここのお勧めで、モルトウイスキーの香りを最も引き出せる方法だそうです。山崎の天然水を使っているせいなのか、口当たりがとてもまろやか。部屋の柔らかな照明と氷の触れ合う心地よい音に、しばらく時を忘れてほろ酔い気分に浸ってしまいました。…まだお昼前だというのに…。
この後、瀧先生の温かいお心遣いがありました。蒸留所を出る時みんなが雨の中を歩かなくてもすむように、バスを本来進入できない玄関前に着けるよう交渉してくれたのです。おかげで、全員が寒い思いをせずに(酔いから醒めることなく)バスに乗り込み、次の目的地へ移動することができました。この日の昼食場所は、京町家をイメージしたおしゃれな和風レストランでした。改めてビールで乾杯し(飲みすぎかも…)、見た目もきれいなお弁当を、たっぷりと時間をかけて楽しんだのでした。
 
 
 午後は再び山崎方面へ戻り、「アサヒビール大山崎山荘美術館」を訪ねました。関西の豪商によって大正時代に建てられた本館は情緒ある洋館で、アサヒビール初代社長の陶器を中心とするコレクションが展示されています。さらに、安藤忠雄の設計による新館では、モネの「睡蓮」など絵画を鑑賞することができます。美術品もさることながら、建物自体が美しく、特に瀟洒なシャンデリアやステンドグラスに往時の繁栄が偲ばれます。オープンカフェにもなっている本館2階のテラスから眺める風景は壮大で、雨に洗われた緑がひときわ美しく見えました。
 前日の快晴がうらめしいくらいの肌寒い雨の1日でしたが、その分バスの中が居心地良く感じられ、みんなとの絆がさらに深まったような気がします。今回のツアーで最も感動したのは、11名の方々が初めて参加してくれたことです。化学療法の合間に体調を整えて来てくれた方や、手術を機にクレソンの会の存在を知り、ホームページで過去のレポートを読んでツアーへの参加を楽しみにしていたという方もいました。情報交換や心の支えを求めて参加してくれたこれらの人たちに、古参のメンバーが温かく接している姿が大変印象的で、これこそがクレソンの会の本質だと感じました。

以前からのメンバーはもちろん、これから乳がんに直面する女性たちに少しでも勇気をあげられるのなら、長くクレソンの会の活動を続けていくべきだと、この日、強く心に思いました。