
目的
卒後臨床研修の基本理念は、将来の専門性に関わらず全ての医師に必要な基本的な診察能力、判断力を身につけることにある。
産婦人科は、女性生殖器を対象にするという専門性を持つ一方で、人口の半数を占める女性を診療の対象とするという特色を有している。さらに、女性には思春期・性成熟期・更年期といった年代による特有の生理的・精神的特長があり、これらを正確に把握することはすべての医師にとって必要不可欠であると考えられる。
また、他領域の疾患の診断・治療においても、性成熟期の女性における妊娠・分娩・産褥という現象の理解は重要である。
このような背景をもとに、北野病院におけるスーパーローテート選択研修としての産婦人科臨床研修では、必修研修で身につけた基本的な知識及び手技のレベルを高めると同時に、重症患者管理に必要なより高度な知識及び手技についても身に付けるべく研修する。
特徴
当院産婦人科では、厳格な手術適応の決定のもとに、年間700例以上の手術を行っており、悪性腫瘍手術・腹腔鏡下手術などの高度な技術を要する症例を多数扱っている。
産科関係では年間600例以上の分娩件数を有し、小児科にNICUも設置されていることから、大阪府産婦人科相互援助システム(OGCS)の準基幹病院として多数の産科救急患者の受け入れを行っている。
病院には高度な医療が行えるハイテク機器がそろっており、産婦人科診療の最先端の診断と治療法を、産科・婦人科の広い分野にわたって学ぶことができる。必修臨床研修修了後の選択項目としての産科婦人科臨床研修期間には、見学を中心とした必修臨床研修に加えて、正常分娩介助・女性生殖器良性腫瘍手術に関しても、指導医の監督のもと積極的に参加し産科婦人科手技の習得を目指す。
また当科では様々な合併症を有する妊娠症例、全身の病態把握を要する婦人科進行悪性腫瘍症例を多数取り扱っており、他科との協力によるチーム医療の実際を入院患者の受け持ち医として経験し、このような症例の治療計画を立案する知識を習得する。
<教育行事について>
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部長回診
毎週金曜日 午前10:30~10:50 7階西病棟(産科病棟) 午前10:50~11:10 7階東病棟(婦人科病棟)
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医局カンファレンス
毎週水曜日 17:00~19:00
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産婦人科病理合同カンファレンス
奇数月 第4水曜日 17:00~18:00
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産婦人科放射線科合同カンファレンス
偶数月 第4水曜日 17:00~18:00
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産婦人科放射線科合同放射線治療カンファレンス
偶数週 午前8:30~9:00
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周産期カンファレンス
毎週金曜日 13:00~
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きたの産婦人科セミナー
年2回(5階きたのホール)
到達目標
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一般目標
- 女性特有の救急医療の研修
- 女性特有のプライマリケアの研修
- 妊産褥婦・新生児医療に必要な基本的知識の研修
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行動目標
- 患者及びその家族と良好な人間関係を確立し、思春期、妊娠・分娩産褥を含む性成熟期、更年期の産科婦人科特有の病歴聴取法を習得すると共に、患者プライバシーへの配慮、患者の心理状況の把握、対処法を学ぶ。
- 医療の遂行に関わる医療チームの構成員としての役割を理解し、チーム医療として患者に対処することができる。
- 問題対応能力(problem-oriented and evidence-based medicine)を学ぶ。
- 医療現場における安全の考え方を学び、医療事故、院内感染対策に積極的に取り組み、安全管理の方策を身に付け、上級医への報告の義務を体得する。
- 正常妊婦の外来診療および分娩に参画し、妊娠・分娩の診察方法、異常の診断方法、対処方法を習得する。
- 急性腹症・産科出血などの産科婦人科救急医療に参画し、産科婦人科救急疾患の種類、診察方法、病態の把握、対処法を学ぶ。
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経験目標
- <経験すべき診察法・検査・手技>
- 婦人科内分泌検査(基礎体温・頚管粘液・ホルモン検査)
- 不妊検査(精液検査・卵管通過性検査)
- 妊娠診断(免疫学的妊娠反応・超音波検査)
- 感染症検査(腟分泌物検鏡検査・培養検査)
- 細胞診・病理組織診(子宮頚部・体部細胞診及び組織診)
- 内視鏡検査(腹腔鏡・子宮鏡・コルポスコピー)
- 超音波検査(経腹超音波検査・経腟超音波検査・パルスドプラー検査)
- 放射線検査(単純X線・骨盤計測・卵管造影・腎盂造影・CT)
- その他の画像検査(MRI・PET・Gaシンチグラフ・注腸造影)
- 胎児心拍モニタリング(NST 及びCST)
- 処方箋の発行
- 注射の施行
- 副作用の評価・対応(妊娠への影響を考慮した薬剤の選択ができ、患者・家族にも説明できる。)
- <経験すべき症状・病態・疾患>
- 腹痛
- 腰痛
- 急性腹症
- 流早産・正期産
- 正常妊娠の診断・妊娠管理
- 正常分娩・産褥・正常新生児の管理
- 腹式帝王切開術の経験
- 産科出血症例の管理
- 合併症妊娠、ハイリスク妊娠の管理
- 婦人科良性腫瘍の診断・治療計画の立案と良性腫瘍手術の経験
- 悪性腫瘍の診断・治療計画の立案と手術・集学的治療への参加
- 不妊症・内分泌疾患の外来検査と治療計画の立案
- 感染症の検査・診断・治療計画の立案