整形外科研修プログラム
プログラム指導者 麻田 義之
1. プログラムの目的と特徴
- 目的
整形外科は、脊椎(頚・胸・腰)椎、骨・関節、手、末梢神経などの疾病から、骨折・脱臼などの外傷を保存的および手術的に治療する診療科で、人間のほぼ全身の運動器を扱っている。運動器は生命との関係は少ないが、人間としての高次機能の維持に重要である。当科には整形外科専門医(指導医)が5名在籍している。卒後研修目標の中に多くの整形外科的研修項目が含まれている。整形外科の研修経験をもとに、高齢化社会のニーズに答えうる医師としての基本の修得を目的とする。
- 特徴
関節疾患、脊椎疾患、上肢の疾患および外傷、その他各部位の骨折脱臼などの外傷疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症など整形外科領域の殆どの疾患を扱っている。関節外科においては、関節鏡を用いた最小侵襲手術手技や、人工関節置換術など患者さんのQOLの向上に努めている.脊椎外科においては、インスツルメンテーションを用いた再建術も多く行っている。上肢外科領域では、顕微鏡下の組織修復、再建術(マイクリサージャリー)も行っている。
2. 研修指導体制
日々の指導は原則として日本整形外科学会認定の専門医であるスタッフが行う。全担当症例においてで、少なくとも1名のスタッフが指導医となり、診察、手術、術後管理の指導を行う。救急外来においては、指導医の指導の下に診療に当たる。
3.到達目標
- 一般目標
入院患者の担当医となり、指導医と共に診断、検査、手術、術後後療法などを行う。
- 経験目標
- 整形外科的検査
- 入院患者の問診、診察
- 単純X線(骨・関節)の読影、診断
- 関節造影や脊髄腔造影等の検査手技。
- CT,MRIの読影、診断
- 整形外科的治療
- 骨折、脱臼に対する整復、ギプス固定
- 関節穿刺、関節内注射、腱鞘内注射等の手技
- 脊椎手術、人工関節、手の機能再建術、骨折・脱臼整復固定手術において助手として参加する。症例によっては指導医の指導の下で執刀する。救急症例についても、整形外科的初期治療法を、指導の下に研修する。
4.カンファランスその他
毎週月曜午前8時30分より外来患者のカンファランス、月曜夕には手術予定患者および入院中の患者のカンファランスを行っている。担当医は受け持ち患者を紹介し、治療計画や術後経過を報告する。短時間に必要な情報を正確に呈示する能力を修得し、治療方針決定の過程を理解する。
- 病棟回診
部長回診は水曜日の午後に行っている。
- 学会発表、他
整形外科専門医受験資格獲得のため、最低1回の学会発表、最低1篇の論文作成を必須としている。また、院外の症例検討会、各種研修会参加には補助を行い奨励している。
- 抄読会
毎週水曜午前8時30分より全体抄読会を行っている。研修医の参加も必須で、当番日には英語論文を紹介、解説する。
週間スケジュール
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午前 |
午後 |
月曜日 |
外来カンファランス
手術 |
手術
術前後カンファランス |
火曜日 |
手術 |
手術 |
水曜日 |
抄読会 |
部長回診 |
木曜日 |
手術 |
手術 |
金曜日 |
手術 |
手術 |
土曜日 |
病棟業務 |
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5. 研修カリキュラムの内容と評価
研修内容および目標は日本整形外科学会の卒後研修プログラムに準じ、目標として以下の3段階を設定する。
- 自ら実施し、結果を解釈できる。
- 指示し、その結果を解釈できる。
- 指示し、専門医の意見に基づき結果を解釈できる。
到達度は自己評価・指導医評価の両者を行い、3段階で評価する。
- 到達度に示されたレベルまで到達できた。
- 到達度に示されたレベルには到達しなかった。
- 研修できなかったので、評価できない。
6.当診療科における研修の特徴
当整形外科では、整形外科的疾患のほぼ全領域を扱い、手術件数は年間 約700件の手術を行っている。理学療法部に専任医師、理学療法士、作業療法士、言語療法士が常勤し、術後の理学療法、作業療法等、リハビリテーションの体制も充実している。手術治療だけではなく、装具療法や関節内注射療法、ブロック療法などの保存的治療も、外来、あるいは入院で行っている。整形外科領域における幅広い知識、技術を実際の症例を通じて学ぶことが可能である。