耳鼻咽喉科研修プログラム
プログラム指導者 金丸 眞一
1. プログラムの目的と特徴
- 目的
- a) 一般臨床医に必要な耳鼻咽喉科の基本的知識・技術・態度を身につける。
- b) 研修指導医師のもと、耳鼻咽喉科入院患者の担当医になり診断・検査・手術・術後管理を担当し、基本的な診療過程の進め方を理解する。
- c) 各種カンファレンス、部長回診に参加することによって診断能力の向上と治療方針の決定に至る過程を理解する。
- 特徴 当科では耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域におけるほとんど全ての疾患を扱っており、厳格な手術適応のもとに年間1000例以上の手術を行っている。特に人工内耳、人工中耳、真珠腫性中耳炎、内視鏡下鼻副鼻腔手術、頭蓋底外科手術など高度な技術を要する手術を多く行っている。悪性腫瘍患者に対しては放射線治療、癌化学療法、手術を組み合わせた集学的治療を行っている。特に手術では進行癌に対して脳外科、外科、形成外科等と共同して拡大手術と再建外科を目指しているのが特徴である。
2. 研修指導体制
日々の指導は原則として日本耳鼻咽喉科学会医認定専門医の資格を有するスタッフが行う。研修医は受け持ち患者の症例レポートを作成し指導者に提出する。これを基に部長以下の研修指導者が1ヶ月に一度研修医と面談し到達度や問題点について話し合う。
3. 耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修の到達目標
- 全般的な到達目標
- a) 耳鼻咽喉科診療を行う上で、医の倫理に基づいた適切な態度と習慣を身につける。
- b) コメデイカルスタッフと協調・協力してチーム医療を実践することが出来る。
- c) 耳鼻咽喉科診療において適切なインフォームドコンセントを得ることが出来る。
- d) 各種カンファレンス、部長回診に参加し積極的に討論に参加することが出来る。
- 経験・修得目標
- a) 耳鼻咽喉科的診察
- ● 額帯鏡・ヘッドランプを用いた耳鏡、鼻鏡、間接喉頭鏡による診察
- ● 内視鏡(硬性鏡、ファイバースコープ)による耳鼻咽喉頭の診察
- ● 視・触診による頭頚部の診察
- b) 耳鼻咽喉科的検査法
- ● 聴力検査とその関連事項(純音聴力検査、語音聴力検査、レクルートメント現象、あぶみ骨筋反射、ABR)
- ● 平衡機能検査
- ● 顔面神経機能検査(NET,ENoG、自発筋電図検査)
- ● 嗅覚・味覚検査
- ● 各種画像検査(単純X線、CT, MRI, 超音波検査等)
- c) 経験すべき症状
耳痛、耳漏、難聴、耳閉感、耳鳴、めまい・平衡障害、鼻閉、鼻汁、鼻声、嗅覚低下、鼻出血、 口内痛、構音障害、開口障害、咽頭痛、嚥下痛、いびき、嗄声、咽喉頭異常感、呼吸困難、嚥下困難、頭頚部腫瘍
- d) 経験すべき疾患
耳垢栓塞、外耳炎、中耳炎、浸出性中耳炎、真珠腫、顔面神経麻痺、突発性難聴、眩暈症、メニエル病、鼻中隔弯曲症、鼻骨骨折、鼻アレルギー、副鼻腔炎、鼻出血、鼻副鼻腔悪性腫瘍、口内炎、舌炎、舌癌、唾石症、アデノイド肥大、扁桃炎、扁桃周囲膿瘍、咽頭炎、咽頭癌、喉頭炎、急性喉頭蓋炎、睡眠時無呼吸症候群、白斑症、声帯結節、声帯ポリープ、喉頭癌、反回神経麻痺、甲状腺疾患
- e) 修得すべき手技、手術
鼓膜切開、鼻茸切除術、扁桃周囲膿瘍切開術、扁桃摘出術、気管切開、皮膚、皮下腫瘍摘出術、リンパ節摘出術、気管切開
4. 週間予定経験・修得すべき事項
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午前 |
午後 |
月曜日 |
外来・手術 |
手術、超音波検査 |
火曜日 |
外来 |
放射線カンファレンス
化学療法カンファレンス |
水曜日 |
外来・手術 |
手術 |
木曜日 |
外来・部長回診 |
症例検討会
術前カンファレンス
超音波検査 |
金曜日 |
外来 |
手術 |
土曜日 |
外来 |
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部長回診: 毎週一回行い、ベッドサイドで各患者の問題点を検討する。
術前カンファレンス: 翌週手術予定の患者について病状手術術式について検討する。
症例検討会: 主に研修医が担当する興味深い症例の検討会を行う。
5. 耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修の到達度評価
研修医の到達度に関する評価は耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修終了時に研修指導医の意見を参考に統括責任指導医に当たる耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長により行われる。
評価項目は(1)研修医による自己評価、(2)受け持ち症例のレポート評価、(3)指導医との面談、の中で医学的経験や知識に加えて医師として望まれる人間性を含めた評価を受ける。
さらに、当科は再生医療の臨床応用を行っているわが国では唯一の耳鼻咽喉科である。研修医がこのような最先端の医療に触れることは、今後臨床のみならず、研究マインドを養う上でも大いに役立つと考える。