病理診断科研修プログラム
プログラム指導者 弓場 吉哲
1. 病理診断科研修プログラムの特徴
将来、専門とする臨床科目の如何にかかわらず、臨床初期の研修において人体病理についての研修は、重要な位置を占めると考えられ、本院でも、研修中に病理診断科を短期間選択することができる。病理診断科では、医療人としての日々の姿勢(仕事上の問題点の把握とその解決法、多彩な職業人や患者との関係構築とその持続など)を明解にしつつ、人体病理についての短期修練を行い、研修医が専門科目を選択する際の一助としたい。
病理解剖や細胞診、病理組織検査を施行するための基本的知識や技術を学習し、臨床医として病理学的検査のオーダーや病理学的診断結果の評価などを適切に行えることを目指す。
2. 病理診断科研修プログラムの目標
当病理診断科では、生検・手術例の組織診断約10,000件/年、術中迅速診断約300件/年、細胞診約14,000件/年、剖検約20体/年を行っており、研修に適した材料を比較的提供しやすい状況にある。短期に修練の成果をあげるため、以下のような目標を設定して、プログラムを構成する。
- 生検・手術例から適当例を選択し、切り出しから標本作製までの流れについて学び、肉眼像・ 組織像と臨床・検査所見と比較検討する。その上で総合的に病態を理解する。
- 研修必須科目に即した剖検症例を、肉眼的に観察し、組織像や臨床・検査所見と比較する。その上で総合的な把握に努め、死に到った病態を理解する。
- 病理業務の過程で生ずる問題点・疑問点を、前向きに解決する態度を涵用するため、カンファレンスや研究会に参加し、またコメディカルの重要性について理解する。
3. 病理診断科研修の到達目標
- 研修期間中に、肉眼的あるいは光顕的に観察した症例のデータファイルを作成し、利用できる。
- 病理組織検査
- (a) 切り出し:病理医の指導下に、生検標本、手術摘出標本について、肉眼所見を記載し、検査の目的や取り扱い規約に沿った標本切り出し法を修得する。
- (b) 切り出し後の標本作製に体験的に参加し、手技、手順や所要時間について学ぶ。
- (c) 病理医の指導下に、鏡検、組織所見の記載を行い、病理組織検査報告書を作成する。特殊染色のオーダーや結果の解釈について学習する。
- (d) 術中迅速診断について適応、標本の作製の手順、結果の解釈について学ぶ。
- (e) 臨床医とのディスカッションに参加する。
- (f) 光学顕微鏡操作や写真撮影法を習得し、症例提示ができるようにする。
- 細胞診
細胞検査士の指導下に細胞診検体の処理、標本作製、検鏡、診断の過程について学ぶ。可能な症例については、生検診断や手術標本の病理所見と照合する。また細胞診断の意味付けや限界について理解する。
- 剖検
病理医の指導下に、所見の記載法、肉眼診断、組織標本の切り出しから最終診断までを経験する。剖検所見を通して、臨床経過と病態の関連を考察する。CPCにて、病理所見を提示する。病理解剖の手続き、法的制限や感染防御対策の重要性について学ぶ。
- 経験可能な疾患
- 消化器系腫瘍の生検・手術標本の病理診断
- 肺癌の細胞診・生検・手術標本の病理診断
- 頭頚部腫瘍の細胞診・生検・手術標本の病理診断
- 泌尿器系腫瘍の細胞診・生検・手術標本の病理診断
- 婦人科系腫瘍の細胞診・生検・手術標本の病理診断
- 乳癌の細胞診・生検・手術標本の病理診断
4. 研修指導体制
指導は、原則として日本病理学会や日本臨床細胞学会認定の専門医資格を有するスタッフが行うが、医員や細胞検査士、臨床検査技師も参加する。
5. スケジュール
1 |
組織診断チェック |
毎日適宜 |
2 |
生検・手術材料の切り出し |
毎日適宜 |
3 |
内科CPC |
第4木曜日午後6時より
(年 5回) |
日本病理学会近畿支部学術集会への参加も可能である。
6. 病理診断科研修の到達度評価
研修期間中の検討症例や鏡検症例についてのファイルを参照し、重要例の検討を重ねる。自己評価も行いつつ、質疑応答形式にて部長と面談を行う。
- CPCレポートの内容評価
- 剖検検討症例の内容評価
- 生検・手術例の鏡検症例の評価