250703_北野病院100年史_並製本_単ページ
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章未曾有の危機を越えて(2020〜2024)0662015(平成27)年、財団創立90周年を迎えた当院は、90周年記念事業として、新館建設計画の検討に着手した。2013年の健診センター集約後、活用法を模索していたところ、敷地西側の都市計画道路整備などによって指定容積率が緩和され、高層化が可能になったことから、建て替え計画が具体化した。築30年以上を経た西館との一体整備も検討されたが、費用面などを考慮し、西館は現状維持する方針が決定した。2016年、本館診療機能の補完と研究所移転を目的とする新館建設計画がまとまり、2018年2月、第2健診棟の解体工事が始まった。工程は当初、地中埋設物の影響で大幅に遅れたものの、その後順調に進■し、2020(令和2)年11月竣工予定と発表された。新元号となって2年目、半世紀ぶりの東京オリンピック開催年である。当院にとっても90周年事業の完遂を祝う年になるはずだった。ところが年明け間もなく、世界は予想だにしない事態に翻弄されていった。COVID-19発生、社会が一変空気感染を主体とし、高い感染力と潜伏性を持つCOVID-19は、防疫体制をすり抜けて瞬く間に世界各地へ拡散し、パンデミックを引き起こした。2020年1月末時点で21カ国、2月末には51カ国、3月末までに192カ国 (いずれも地域含む)で感染者を確認。4月初め、世界全体の感染者数は100万人を突破した。重症者・死亡者が相次いだ欧米各国はロックダウン(都市封鎖)という非常手段を講じ、社会生活や経済活動に甚大な影響を及ぼした。日本でも2020年1月15日、国内1例目の感染者が確認され、2月には初の死亡者が発生した。感染者数は日ごとに増え、医療機関や商業施設などでのクラスターも多発し、政府は密集・密閉・密接の2019(令和元)年末、中国・武漢市で原因不明の肺炎患者が発生し、感染拡大が始まった。翌2020年1月、感染原因が新種のコロナウイルスであると特定され、同月30日、WHO(世界保健機関)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。2月、WHOはこの感染症を「COVID-19」と命名し、病原体は国際ウイルス分類委員会によって「SARS-CoV-2」と命名された。90周年記念事業完了の年に道路を挟んで本館の南西、西館の北隣に位置する「新館」建設地は、本館と同様、大阪市との土地交換で取得した土地である。敷地の半分以上を公開空地が占め、2001年に竣工した2階建ての建物は、当初はリハビリテーションセンターとして、後に第2健診棟として利用された。戦争による被害も、戦後のさまざまな変化も乗り越えてきた当院は、財団創立100年を目前に、新型コロナウイルス大流行という前代未聞の試練に直面する。地域医療を担う中核病院の責任を全うするため、苦闘を続けた日々。そしてその先に開けた未来とは──。パンデミックの衝撃66第

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