新館建設〜本館リノベーションという計画的投資によって、目覚ましい機能強化を果たした新生・北野病院。新たな環境下、当院ならではの先進的な研究や治療法が次々と成果を上げ始めた。その代表例が、手術せずに破損した鼓膜を再生し、聴力を取り戻す「鼓膜再生療法」である。難聴の一因となる鼓膜穿孔は、従来は入院や頻繁な外来が必要な手術的治療しか選択肢がなく、聴力回復効果も確実ではなかった。これに対して鼓膜再生療法では、局所麻酔して鼓膜穿孔縁を新鮮創化(組織が再生しやすい状態)した後、治療薬リティンパ®を浸したゼラチンスポンジを挿入し、医療用糊で被覆する。単純な鼓膜穿孔の場合、外来で20分程度の処置を受けるだけで済み、日常生活にほとんど支障がないため、患者の精神的・肉体的・経済的負担が大幅に軽減される。聴力回復効果も極めて高い。鼓膜再生療法は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長 兼 難聴・鼓膜再生センター長の金丸眞一が世界に先駆けて開発し、2019(令和元)年11月に健康保険の適用となった。これを受け、当院は同年12月から鼓膜再生治療を開始。翌2020年4月には難聴・鼓膜再生センターを開設した。以来、同センターは数百例の治療を実施しており、ほぼ全例で聴力改善が認められている。医学研究所では、慢性中耳炎など重症の鼓膜穿孔の患者向けに、鼓膜再生療法を応用した新鼓室形成術や、外耳道軟部組織の再生療法も開発し、臨床治験を進行中である。また鼓膜再生療法を「日本発の再生医療」として世界標準化すべく、アメリカ・ヨーロッパでの臨床試験も予定している。治療の流れ治療前(左)と治療後1カ月(右)065北野病院の先進治療① ~鼓膜再生療法~column
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