2018(平成30)年秋、日本の医学界にとっても当院にとっても喜ばしいニュースがもたらされた。同年10月1日にノーベル生理学・医学賞の発表があり、当財団評議員の本庶佑氏の受賞が決まったのである。本庶氏は1942(昭和17)年生まれ。京都大学医学部卒業・医学博士号を取得後、大阪大学医学部教授、京都大学医学部教授・名誉教授、同大学院客員教授、先端医療振興財団理事長などを歴任。2000(平成12)年に文化功労者、2013年に文化勲章を受章した。当財団では第20代(1996〜2000年)、第22代(2002〜2004年)の通算6年にわたって理事長を務め、2011年に評議員に就任した。ノーベル賞の受賞理由は「免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん療法への応用」。従来、がん治療は手術療法、化学療法、放射線療法の3つで構成されていたが、京大本庶研究室が発見したたんぱく質PD-1によって、「免疫療法」という新たな選択肢が提示された。同研究室と小野薬品工業が共同で開発した免疫チェックポイント阻害剤「ニボルマブ(商品名オプジーボ)」は、悪性黒色腫治療薬として2014年に製造販売が承認され、その後、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部がん、胃がんなども対象となった。受賞発表の翌日、本館エントランスには本庶氏の功績を紹介するパネルとお祝いの花々が飾られ、職員一同、喜びを共にした。063科学の振興に著しく寄与当財団は「医学に関する総合研究を行い、もって学術、科学技術、文化の振興・発展に寄与すること」を事業目的とし、医学研究所は1928(昭和3)年の病院開設以来、豊富な臨床症例に基づく臨床研究を通じて、その使命を果たしてきた。こうした公益への寄与が評価され、当財団は1985年、文部大臣より「特定公益増進法人」の認定を受けた。翌1986年、医師の生涯教育の場として「地域医療研修センター」を立ち上げ、学術講演会、カンファレンス、セミナー、病診連携検討会などの定期開催をスタート。1998(平成10)年には地域住民を対象とする市民医学講座も開始するなど、研究成果の発信にも力を入れた。また、医学・生物学研究者の討論の場として髙月清熊本大学教授などが設立した「医生物学フォーラム」の運営にも携わった(1992年にフォーラム設立、1994年より当財団が運営。髙月清は1996年より当院病院長)。こうして多岐にわたる成果を上げてきた研究所だが、2001年の中期経営計画ではその運営について、次のように述べている。当財団の創立の趣旨であり、かつ他病院にはなくブランド力強化に極めて効果的な医学研究所が、現実には病院運営と混在し、相当程度不明確な状態を呈している。今一度その運営形態を見直し、設立趣旨に沿った研究所のミッションを果たせる体制の確立と研究機能の活性化が不可欠である(一部略)医学研究所の進展祝・ノーベル賞!第20・22代理事長の本庶佑博士が生理学・医学賞を受賞column
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