翌2004年、乳がん患者を対象とする乳腺外来を開設。2006年には胸部外科が乳腺外科と呼吸器外科に分科され、乳腺外科は2014年にブレストセンターへと拡大した。058がん診療連携相談支援センター1981(昭和56)年以来、日本人の死因トップの座を占め続け、罹患者数も年々増加の一途をたどるがん。超高齢化社会の日本では、2人に1人が生涯一度はがんになると言われている。まさに現代の「国民病」である。2005年、厚生労働省内にがん対策推進本部が設置され、翌2006年にがん対策基本法が成立(2007年施行)。国の「基本計画」と各都道府県の「推進計画」に基づき、総合的ながん対策を実施することとなった。具体的には、がん予防と早期発見、医療の均てん化、がん研究の推進、がん患者の就労支援、がん教育の推進などが基本施策に掲げられた。さらに2016年には、がん登録などの推進に関する法律(がん登録推進法)が施行され、日本でがんと診断されたすべての人のデータを国が一元管理する「全国がん登録」制度がスタート。より精緻な統計資料を治療や研究、情報提供に生かせるようになった。このように全国でがん対策が進む中、当院もがん治療を中核事業のひとつと位置づけ、特に2000年代以降、診療体制の拡充を積極的に推進した。まず2001年、新たに放射線治療を開始した。病巣部に放射線を照射してがん細胞を死滅させる放射線治療は、身体への負担が少ない、適用範囲が広いなどの特長がある。日本は欧米諸国に比べ普及が遅れていたが、当院は新病院竣工とともに導入を進め、「がん治療の三本柱(手術療法、化学療法、放射線療法)」の提供体制を整えた。2003年には、医師とがん性疼痛看護認定看護師が患者の苦痛や不安に寄り添う緩和ケアチームが発足。その後、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、臨床心理士など多職種からなる専門医療チームに発展した。2007年、本館2階中央処置室内の外来化学療法室が拡大(増床)された。同じく2007年、5階プラナホール奥にがん診療連携相談支援センターを開設し、入退院や在宅ケアなどの相談対応を始めた。また、センター内にはがん情報室も併設され、がんに関する書籍や各種パンフレット、情報検索用のパソコンなどが設置された。大阪府がん診療拠点病院へ日本ががん対策に取り組み始めたのは、死因1位となって間もない1984年。政府は「対がん10カ年総合戦略」を策定し、がん研究や治療法の確立を進めてきた(10カ年戦略は以後継続更新され、2023年に第5次戦略を策定)。2001(平成13)年にはがん医療の均てん化(全国どこでも標準的な専門医療を受けられるよう格差是正を図ること)をめざし、地域がん診療拠点病院制度が導入された。がんと向き合う
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