翌2007年、女性医師支援委員会は男女共同参画委員会に発展し、小児科の空き病床を活用した病児保育もスタート。支援対象を医師からコメディカル全般へ拡大した。2011年には、フルタイム勤務が難しい場合も正職員のまま働き続けられる「短時間正職員制度」の導入を実現。イージェイネットの「働きやすい病院評価」も2012年、2017年に再認証された(現在は「働きたい病院評価」に移行)。第16代病院長 山岡義生055図った。医師の採用は定員制を廃止して現場の実情に合わせるとともに、新設した人事委員会で採否を決める方法に改めた。2004年には、年功ではなく役割の大きさと達成度を評価基準とする新人事制度を導入。適切な人事考課を行うため、考課者を対象とする宿泊研修も実施した。また、財団法人日本医療機能評価機構(現在は公益財団法人)の「病院機能評価」も経営改革のツールと位置づけ、認定に向けた取り組みを開始。2004年に審査を受け、翌2005年「病院機能評価Ver.4」に初認定された(2010年「Ver.6」を更新認定)。こうした人事組織面の改革と並行して、財政基盤安定化のための施策も次々と行われた。入退院支援加算制度(1996年「入院治療計画加算」としてスタート)への対応、富裕層向け会員制組織「北野健康クラブ」の発足(2005年)、減価償却の一括処理、長期借入金のリファイナンスなどである。中でも当院の財政を大きく好転させたのは、固定資産税を巡る大阪市との訴訟に勝訴したことだった。新病院の完成後、大阪市が当院の土地・建物に固定資産税と都市計画税を課税したのに対し、当院は「学術研究を目的とする財団法人のため非課税である」として2003年に提訴。地裁、高裁ともに当院の主張が認められ、2009年に最高裁で勝訴が確定した。これにより過去7年分の課税額など約17億円が返還されることとなった。2005(平成17)年、財政状況が上向く中で財団創立80周年を迎えた当院は、いくつかの周年記念事業を開始した。海外展開プロジェクト(2005年〜)、社会貢献部の設置(2007年)、探索医学プロジェクト(保険診療の枠組みの中では実施しにくい新規医療技術の検証のための臨床研究。2011年〜)などである。このうち海外展開プロジェクト(別名「上海プロジェクト」)は、京都大学などとの国際共同研究事業として、2005年〜2012年頃まで実施された。京大医学部、中国の復旦大学(上海市にある中国有数の国立大学)がそれぞれ関連病院として当院と崋山病院(上海市にある旧中国赤十字病院。現在は復旦大学付属病院)を指名し、4者が協力して疫学研究や人材交流を行うプロジェクトである。働きやすい病院へ経営改革が軌道に乗るにつれ、院内には活気が戻り、職員からも積極的な提案の声が上がるようになった。その好例である「働きやすい病院」への取り組みは、2006(平成18)年、腎臓内科部長 兼 医学研究所副所長の武曾惠理が立ち上げた女性医師支援委員会がきっかけだった。同年10月には、女性医師のキャリア形成を支援するNPO法人イージェイネットから「働きやすい病院評価」の認定を受けた。院内保育所の早期設置(1974年開設)などが評価されたもので、全国で3番目の認定となった。「上海プロジェクト」始動当時の上海は、「世界の工場」として発展する中
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