250703_北野病院100年史_並製本_単ページ
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ドクターヘリでの患者搬送053に実現することとなった。着工は当院設立からちょうど70年後の1998(平成10)年6月。それから約3年の工期を経て、2001年5月に竣工、同年9月に移転・開院した。旧本館の北隣に完成した新病院棟(現・本館)は、地上15階・地下3階・塔屋1階(敷地面積9,969.86㎡、延床面積5万8,532.02㎡、建築面積5,139.86㎡)。病床数は移転前と同様の741床が確保された。 建物の5階以上は南面が山高帽のような半円形に張り出し、中央部には吹き抜けを配した斬新なデザイン。この構造を生かして、7〜14階の病棟ではすべてのベッドサイドに窓を設けたほか、回廊状の内部通路まで自然光が行き渡る快適な環境を実現した。低層階にはホールや会議室(5階)、中央手術部や集中治療室(4階)、外来受付や臨床検査部(2〜3階)、総合受付(1階)、放射線科(1階〜地下1階)などが配置された。このうち中央手術部は、全11室のうち2室でNASA(アメリカ航空宇宙局)規格100クラスのクリーン性を確保した。また、放射線科ではハイパーナイフ(一点集中照射用放射線治療装置)、アンギオ(高速立体型血管撮影装置)など、当時最先端の機器システムが導入された。新病院移転と前後して、新たな部門の開設も相次いだ。2000年に形成外科と救急部、2001年には健診部、老人性認知症センター、NICU(新生児特定集中治療室)が誕生。さらに、2002年には小児外科、2005年には内視鏡部、心療内科が開設された。 健診と救急を充実新病院建設の陣頭指揮を執った第15代病院長の髙月清は、移転を報じる新聞の取材に応えて「地域の中核病院として、質の高い医療を実践し、病む人の立場に立った安心な病院、気安く来られる病院を目指す」と抱負を語っている(『読売新聞』2001年8月22日付)。その具体策として特に力を入れたのが「健診」と「救急」の充実だった。まず健診体制については、一般診療から独立したフロアと専門スタッフを擁する健診部(健康管理センター)を開設。健診内容も刷新し、多忙な会社員も気軽に受診できる日帰り人間ドックや、人間ドック+脳ドックの割引サービスを新たに開始した。一方の救急体制については、新病院移転を期に救急専従医師を置いたほか、迅速な処置を行うために救急室とCT・レントゲン室を直線上に配置するなど、設備面の充実も図った。さらに新病院の屋上にはヘリポートが設置され、2003(平成15)年にドクターヘリコプターを用いた患者搬送訓練を実施。翌2004年には徳島県の病院から搬送された患者を救急部が受け入れ、当院初のヘリ搬送事例となった。2005年には、救急診療エリア内に短期間入院用の病床4床が設けられた。また篤志家からの寄付もあり、2004〜2005年にAED(自動体外式除細動器)を院内各所に設置。2008年には高規格準拠救急車のドクターカーも導入された。

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