216だと考えています。 一方、秦病院長は20年以上北野病院で勤務し、小児科部長、副院長としても病院改革に取り組まれた実績があります。何より、北野病院の歴史か 抱負とは少し違うかもしれませんが、私は着任して最初のあいさつで2つのことを話しました。まず1点目は「心理的安全性」の話です。これは、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した概念で、「組織内で自分の意見や気持ちを安心して発言できる状態」を指します。元々は、糖尿病学の先輩である門脇孝先生(虎の門病院院長)に薦められてエドモンドソン教授の著書『恐れのない組織』を読み、感銘を受けたことがきっかけですが、病院組織にとっても心理的安全性は非常に重要であり、医療の安全にも直結しますので、「北野病院もぜひ恐れのない組織にしていきたい」という話をしました。 2点目は、以前からの私の信条であり、京大時代も実践してきたことですが、「現場の声を聴く」という話です。法人内で起こるさまざまな課題について、最終的な決断を下すのは理事長です。ただ、解決の糸口は必ず現場にありますので、「病院長と一緒に現場へ足を運びたい。また、皆さんにもこちらへ来てもらって率直な意見を聞かせてほしいので、ぜひ協力してほしい」と職員にお願いをしました。ら人事まで病院内部のことを熟知しているので、その辺りは大いに頼りにしています。たまたま秦病院長とは大学の同期でもありますので、非常に良い関係で補い合えていると思います。医学研究所の本分を果たしつつ、25年後の病院のあり方をイメージする─理事長就任から2年余りが経ちました。改めて気づかれたこと、課題だと感じていることは? 些細なことですが、以前は「医学研究所」と「北野病院」の間を半角あけていた病院名の表記を、「医学研究所北野病院」とスペースをあけない表記に統一しました。そもそも北野病院は臨床医学研究用病院として設立された経緯があり、その他院にはない大きな魅力を名称にも正確に反映させたいと思ったからです。 ただ、肝心の医学研究がどれだけできているかという点は大きな課題です。もちろん、これは北野病院に限ったことではなく、文科省が2023(令和5)年に行った調査でも、大学病院で働く助教クラスの医師の65%は研究時間が週5時間以下、そのうち15%は0時間だと回答しています。働き盛りの年代ほど診療が忙しすぎて、大学病院ですら研究する時間が取れない状況に危機感を覚えます。 北野病院でも同様に、研究時間を確保することは容易ではありませんが、幸いにして研究マインドの高い優秀な人材が多いですし、「北野カデット」という若手研究者を支援する制度もあります。これは前病院長の時代に作られた素晴らしい制度なので、なんとかうまく活用し、もっと研究を盛んにしていきたいと思います。─着任時の抱負といいますか、「まずこれをやりたい」と決めていたことはありましたか?
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