250703_北野病院100年史_並製本_単ページ
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011政次郎の事業基盤であった大阪での財団創立の経緯からも、大阪府、大阪市との関係はかけがえなく重要ですが、北野病院が「断らない医療」を掲げ、2023年度には救急車搬送年間受入件数が約1万2,000件と、全国トップレベルに達していることは、地域医療の中核病院としての使命を果たすという点で、象徴的な数字ではないかと感じております。2009年には、大阪府から「地域医療支援病院」のご承認をいただいておりますが、これからも、医療分野で地元に多くの貢献をする病院であり続けることができればと思います。地域に貢献し、臨床と研究の実を上げるためには、「持続可能な質の高い医療」の提供、そして患者の観点から、頼りになり、行き易い、使い易い病院であることが不可欠です。この点からは、すでに医師をはじめ、看護師、コーメディカル人材の生涯教育の場として「地域医療研修センター」が立ちあげられていますが、それらの方々の研修、職場環境の整備を重視し、北野病院が「働きやすい病院」として広く認識されているということも、素晴らしいと思います。また、患者(クライアント)が病院を選ぶ時代に、病院を利用していただく患者の立場に立ったITを利用したコミュニケーション、健康維持のソフトウェアを含む最新のテクノロジーの導入・利用、インターネットやsocial mediaによる情報発信の充実なども、より重要になってきています。私自身、シリコンバレーで臨床、病院経営をしておりますが、この方面での目まぐるしい変化に対応するのは容易ではありません。その分野の専門家のアドバイスも受けながら、すでに進められているシステムの整備、DX化の動きをさらに発展、充実させていくことが不可欠だと思います。この分野では、進んだテクノロジーを有するアメリカをはじめとする諸外国での実務も参考になるのではないかと考えております。質の高い医療や研究の充実のためには、国内外での連携も必要だと考えますが、武曾惠理腎臓内科部長を中心として2005年から2012年に行われた「上海プロジェクト」での京都大学、復旦大学との疫学研究や人材交流は、とても有益なものであったと思います。私がかつてスタンフォード大学で研究に従事していたときに、メディカルスクールの図書館で財団(北野病院)が発行したジャーナルのコーナーがあるのが目にとまり、思わず何冊かを手に取りました。大阪から遠く離れたカリフォルニアで、財団(北野病院)の名前を目にし、北野病院が国際的に認識されていることに気付いた時の驚きと感激は、今でも忘れることができません。最近の研究成果として紹介されている、2019年に健康保険の適用となった金丸眞一耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長兼難聴・鼓膜再生センター長による世界初の鼓膜再生療法と、髙橋克歯科口腔外科主任部長を中心とする研究グループの世界初の「歯生え薬」の2024年の治験スタートは、世界最先端であるとともに、臨床と研究を結びつけるという財団(北野病院)の使命を見事に果たしていただいており、とても嬉しく思います。財団(北野病院)にとってこれからの100年は、さらなる変化の中での挑戦の日々になると思われますが、京大病院の病院長も務められた稲垣第30代理事長と、秦第20代病院長のリーダーシップのもとで、公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院が、皆様の引き続いてのご協力を得ながら、さらに発展していくことを心より願っております。

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