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総合内科設立の目的

 現在の日本の医療は専門化が進み、各分野での診断、治療の能力は大きく改善されています。その一方で、専門外の分野についての知識が必ずしも十分ではない場合があり、診断がつき、治療が開始されるまでに時間や手間がかかることも多くなっています。また、いろいろな病気を併せ持っている患者様の治療を行う際に、治療の順序やバランスを決める「全身を診る」ことのできる医師が少なくなっています。
 北野病院ではこのような問題を解決するために「総合内科」を設立しました。総合内科の目的は @速やかな診断 と A重症患者様の全身状態の管理 です。
  まず@のために、2009年4月14日から総合内科外来を開始しました。診断のついていない症状ではじめて受診される方を対象に、速やかに検査、診療を行い、適切な専門科に紹介します。その際、緊急性があれば、すぐに救急医療を行うことが必要になります。この流れを円滑にするために、総合内科と救急部は一体となり「総合診療センター」として活動します。
 Aのためには、どの科で入院している患者様であっても、複数の医学的問題の解決のためにさまざまな科が協力するのはもちろんですが、各科の調整を総合内科が担うという形が想定されます。患者様が専門科の谷間に陥ることなく全人的ケアを受けることができるようにチーム医療を遂行します。

総合内科の展望

 「総合内科」の医師は、「臓器別専門思考」から脱却し、ひとりの人間としての患者様に興味を持っています。
 もちろん、専門科医師も、「全人的医療」を目指して診療しているのです。しかし、臓器別思考で訓練されていると、たとえば、患者様が「胃が痛い」と受診してきたときに、どんな質問をすれば「心筋梗塞」と見破れるか?という視点に欠けるきらいがあります。総合内科医は、患者様の訴えに謙虚に耳を傾けて診察しながら、偏りのないものの見方で正しい診断に早く到達し、我流でなく、もっとも有効性の高い正統的治療方針をたてます。でも、患者様の好みや都合があればそれを優先させ、決して押し付けはいたしません(医者として最善の助言はいたしますが、それを採用するかどうかは患者様に決定権があります。その結果を引き受けるのは患者様ですから)。
 現代の医療はチーム医療です。北野病院のような、一流の専門家揃いの病院では、総合内科は非常に仕事がやりやすいといえます。他分野の専門家からの専門的助言を仰いだうえでバランスの取れた治療ができるからです。もちろん、患者様が専門家をご希望なら、いつでもご紹介いたします。日本では「専門医」が圧倒的に多く、総合内科の歴史が浅いため、まだ総合内科のメリットをよく理解いただけないのは当然です。総合内科は、「鑑別診断」と「多臓器にわたる医療管理(たとえば、糖尿病(内分泌)と高血圧(循環器)と逆流性食道炎(消化器)と喘息(呼吸器)等)」を得意としますので、患者様のご要望には柔軟に対応いたします。
 当科で問題解決の道筋がつき処方が定まれば、地域連携でかかりつけ医に戻っていただきます。
 「研究所」としての北野病院では、総合内科は、臨床疫学の専門家として、デザイン性に優れた臨床研究を積極的に推進してまいります。患者様の切実な問題から出発した研究が身上であり、現在、「こむらがえり」の研究をしています。

【患者様へ】

(1)どこの科に行けばいいのかわからないときは、まず「総合内科」を受診してください。紹介状がない場合は、特定療養費(8,400円)が別途必要ですので、なるべくかかりつけ医からの紹介状をご持参ください。また、検査データもできるだけご持参ください(新たに検査を繰り返すことは簡単ですが、過去の検査を繰り返すことはできないからです。経過をみるということが非常に大切なのです。国民医療費の節約にもなりますのでご協力ください)。

(2)お薬手帳があれば必ずご持参ください。そのほか、健康食品やサプリメントも含め、服用している薬品類はすべてお知らせください。薬の飲み合わせや副作用による症状は、薬の名称が正確にわからないと診断できませんので、ご協力をお願いいたします。

(3)経過が長い方は、なるべく、簡潔にまとめたメモにしていただけると助かります。症状やそれに対する患者様ご自身の心配ごとももちろんですが、これまでの他の医療機関の受診歴、そこでの検査・診断・治療の経緯も大変参考になりますのでお教えください。患者様ひとりひとりに沿った医療のために、正確な情報をお願いいたします。

(4)英語での受診は問題ありませんが、他の言語の通訳をご希望の方は、その旨お申し出ください。前もって手配したうえでの診察予約になります。

(5)北野病院は、地域医療連携を推進しております。総合内科で問題解決の道筋がつきましたら、可及的速やかにふだんのかかりつけ医にお戻りいただきます。かかりつけ医のない方はご紹介いたしますので、地域医療サービスセンターまでお申し出ください。

【医療関係者の皆様へ】

 診断がつかなかったり、お困りの症例がございましたら、お気軽に「総合内科」にご紹介ください。問題解決の道筋がつき処方が定まり次第、お返しいたします。かかりつけ医の皆様と共に、患者様が安心してかかれる地域医療ネットワークに参加できればと願っております。

【総合内科キャリアに興味のある研修医・若手医師の皆様へ】

 北野病院といえば「臓器別センター化の進んだ専門病院」というイメージが強いと思いますが、「総合内科」設立は北野病院にとって画期的なプロジェクトといえます。当院で、「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」の協同モデルができればというのが総合内科設立の趣旨です。医師不足、医師の過労死、医療崩壊が問題になる時代に、一人の医師として、いかにやりがいのある、家庭と両立可能なキャリアを積むかをともに考えましょう。

当院総合内科での研修・経験は、次のようなキャリア・パスを想定しています:
 臨床家
  外来診療:ほとんどの患者の全人的ケア (予防医療も含む)
  入院診療:集中治療以外の全内科入院の主治医(ホスピタリスト)
  (将来、どの専門科に進むにしても開業するにしても役に立つ、系統的総合診療能力)
 教育者(研修指導医)
  臨床入門(網羅的・徹底的・全人的な問診・身体診察技術)
  鑑別診断(体系的鑑別診断法・臨床決断過程)
  入院患者の全人的管理(医療倫理的・社会医療的視点)
 研究者
  患者の臨床から出発した発信(英文症例報告論文投稿)
  臨床研究(臨床問題提起からデザイン・実施・論文まで)
  公衆衛生・臨床疫学・社会医療制度に関する研究
  医師教育に関する研究

これらはコンセプトの一端に過ぎず、(部長の経歴からも明らかなように)極めて柔軟に対応できます。
総合内科医師のキーワードは、「全人的医療」「EBM」「臨床研究」の三つです。

「全人的医療」:「病んで『患者』になる」ということはどういうことなのか。抽象的概念ではなく、血が通い肉もついた日々の実践を。

「EBM」:(科学的証拠に基づいた、患者の人権を尊重した医療)」:総合内科では、我流は許しません。必ず文献にあたり、正統的な治療をまずしっかり体得する習慣を。そのうえで、目の前の患者様はひとりひとり個性を持った「生活者」であることを深く思い、謙虚で柔軟な診療を。

「臨床研究」:
北野病院は、「患者立」の「研究所病院」。科学者としての医師の矜持を持ち、患者の問題から出発し、患者に還元する、優れた臨床研究を計画・実践し、論文として世界に発信を。
 
 北野病院は「働きやすい病院評価認定第3号」。男女を問わず子育て・介護医師のキャリアを応援します。「ワーク・ライフ・バランス」の医師モデルを目指しています。そのためには大勢の仲間が必要ですので、ぜひご参集ください。
 北野病院総合内科は、患者はもちろん医師に対しても人種・国籍・性別・学歴による差別を許さない、開かれた公正な職場です。学閥を廃し、実力と人間性がすべてです。
 全国の同志に、熱いエールを送ります。

スタッフ紹介

役職 氏名 資格等 専門領域・研究内容
副院長
総合診療 センター長

野原 隆司
京都大学医学博士
京都大学臨床教授
京都大学医学部循環病態学科非常勤講師
京都大学医学部人間健康科学科非常勤講師
循環器内科認定医
内科認定医
高血圧指導医
虚血性心疾患
心不全
運動療法
総合内科部長

田中 まゆみ
京都大学医学博士(免疫学)
ボストン大学公衆衛生学修士
京都大学臨床教授
〔専門領域〕
内科全般(特に初期鑑別診断)
医療倫理・医療制度・医療安全

〔研究内容〕
こむらがえり・他
医員

松村 拓朗
   

Last up date 2012.4.6