公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

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リウマチ膠原病内科

リウマチ膠原病内科について

ご挨拶

リウマチ膠原病内科はその名の通り「リウマチ」や「膠原病」を内科として診療する部門です.病院によっては「リウマチ科」「膠原病内科」などとも呼ばれますが,総合病院であっても(大学病院であっても)該当する診療科が無かったり,他の診療科と合併してたりすることも珍しくありません.当院では,2005年6月に免疫血液内科から分科する形で開設され,平日は毎日外来診療をしています.膠原病には多くの難病が含まれますが,当院は大阪府難病診療連携拠点病院に選定された12病院の1つです. 関節リウマチを始めとする膠原病は全身の様々な臓器に障害を認めることがあり,時に致命的になり得ます.当院にはほぼ全ての分野で専門性の高い診療科が揃っており,連携して集学的な診断・治療が行えます.治療も長期にわたることが多いので,信頼できるパートナーとなれるようにこれからも努力致します.

特色・取り組み

  1. 地域の先生方と連携を密として,大阪北地域のリウマチ膠原病医療の核となれるよう努力しています.膠原病には多くの難病が含まれますが,当院は大阪府難病診療連携拠点病院に選定された12病院の1つです.
  2. 患者様ひとりひとりに対応したオーダーメイド医療を目指しています.特に,新しい治療法の個人適応には充分なエビデンスの検討とインフォームドコンセントを得て施行しています.関節リウマチに対してTNF-αやIL-6という炎症に係る血液中の物質やT細胞という免疫細胞の活性化をピンポイントに抑える薬(生物製剤と言われています)が開発され,革新的な成果をあげています.近年では生物製剤の適応が他の膠原病(全身性エリテマトーデス,血管炎など)に広がっており,炎症伝達経路をピンポイントで抑える薬(生物製剤を合わせて,分子標的薬とも呼ばれます)も出てきました.これらの薬は非常に有効ですが,重大な副作用を引き起こす可能性もありますので慎重に使用しないといけません.当科ではこれらの分子標的薬を積極的に導入していますが,導入の際には患者様一人ひとりにその適応を慎重に検討し,導入後も副作用の発現に細心の注意を払っています.
  3. 「患者様に問題点を見つけ,それを解決するために研究心をもって活動する」という原点のもと,臨床研究・基礎研究を実行しています.当科では主に京都大学臨床免疫学教室と共同で研究を推進しています.

治療について

主な基礎疾患について

膠原病一般

本来は外来物質から身体を守るべき免疫反応が異常に働いて、自分自身の細胞や臓器を障害してしまう病気を自己免疫疾患といいますが、その中でも血管や皮膚、筋肉、関節、内臓等の結合組織に炎症をきたし、発熱、関節痛等を生ずる疾患を膠原病、或いは広い意味のリウマチ性疾患と言います。主として侵される臓器の部位によって、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、結節性多発動脈炎、混合性結合組織病などに分類されますが、原因が不明なのでその多くは厚生省の特定疾患(難病)に指定されています。その他、膠原病に似て多臓器を侵すベーチェット病、スティル病等の膠原病類縁疾患があります。
膠原病はそれぞれ診断基準が定められていますが、必ずしも初めから診断基準を満たすものばかりとは限らず、また慢性の経過をとることが多いので長期間の経過観察が必要です。治療に当たっては正確な診断と、病気の活動性の評価が大切で、活動性の高い時期には副腎皮質ステロイドの大量投与や免疫抑制剤が必要ですが、活動性の低い時期には維持量の少量ステロイドや補助的療法のみ、或いは何も治療を要しない場合もしばしばあります。抗核抗体やリウマチ反応が陽性として紹介されることも多いのですが、これらの反応は膠原病でなくても陽性に出ることがありますので、我々は本当に治療が必要な膠原病であるのか否かを見極め、治療を要しない場合でも将来症状が出てくる可能性を考慮し、慎重に経過観察するように努めています。

関節リウマチ(RA)

関節リウマチは原因不明の全身性炎症性疾患であり、関節破壊が慢性的に進みます。関節滑膜の増殖、炎症が次第に周辺の軟骨、骨におよび、関節の破壊、変形に至ります。関節外症状としては皮下結節、多発単神経炎、血管炎、肺線維症、アミロイドーシス等がみられることがあります。シェーグレン症候群などの自己免疫疾患との合併もしばしばあります。関節リウマチ管理治療では早期に初期治療を開始すること、できるだけ早期に抗リウマチ薬(DMARDS)を使用することが重要となります。また、ステロイド薬は活動性の強い時に初期治療として使用します。治療が長くなることが多いので、それぞれの薬の効果、副作用を注意深く観察する必要があります。トピックスにも述べますが、最近関節リウマチ(RA)においても、病態を悪化させる分子TNF-αに対する生物学的製剤の使用が可能となりました。 治療効果における大きな期待が寄せられますが、反面、結核の再燃など副作用に充分注意が必要です。

全身性エリテマトーデス(SLE)

日本全国に4万人程の患者さんがいると考えられており、15才から65才までの女性に多い病気です。原因は、今のところわかっていませんが、免疫の異常が病気の成り立ちに重要な役割を果たしています。紫外線、ウイルス感染、怪我、外科手術、妊娠・出産、ある種の薬剤などが、病気が起こったり、悪化したりする誘因として知られています。
発熱、全身倦怠感、関節、皮膚・粘膜(蝶型紅斑、円板状紅斑、脱毛、口内炎)、内臓(腎、心、肺、腹部、神経)などのさまざまな症状が起こってきます。すべての症状が起こるわけではなく、一人一人出てくる症状、障害される臓器の数が違います。
病気の重症度によって治療はさまざまですが、副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤を中心とした治療を行います。効果が不十分な場合、病気の原因となる免疫複合体やリンパ球を取り除く体外循環療法を行う場合が有ります。血栓を作りやすい抗リン脂質抗体症候群を合併している場合は抗凝固療法、血行障害の強い場合は血管拡張剤、腎不全には透析療法などが使われます。
軽症の場合、健康な方とほとんど変わらない、普通の生活が出来ることも珍しくありません。副腎皮質ステロイド剤が知られていなかった頃には、5年生存率は50%程とされていましたが、現在では90%以上にまで改善しています。免疫抑制剤が使われるようになって、病気のコントロールはさらに良好になってきています。

強皮症

強皮症は皮膚の硬化を主症状とする疾患ですが皮膚のみに硬化がみられる限局性強皮症と肺、腎臓、消化管をはじめとする多臓器に病変がおよぶ全身型強皮症があります。レイノー症状は多くの強皮症の患者さんにみられます。全身型強皮症では間質性肺炎や肺線維症などの肺病変、腎病変、および肺高血圧の有無が生命予後に関係します。
強皮症の病変は一般にゆっくり進行しますが、中には皮膚硬化、間質性肺炎や腎不全が急速に進む場合もあります。
間質性肺炎や心膜炎、胸膜炎の場合、ステロイドが有効な場合がありますが、皮膚の硬化性病変にはステロイドはあまり効果がありません。薬物療法でレイノー症状をおさえることは困難です。末梢循環障害の改善のために抗血小板凝集剤や血管拡張剤などが使用されます。

混合性結合組織病(MCTD)

混合性結合組織病(MCTD)は全身性エリテマトーデス(SLE)様症状、強皮症様症状、多発性筋炎様症状が混在し、血清の抗RNP抗体が高値である疾患です。レイノー現象または手指、手背の腫脹にくわえ、SLEの紅斑、関節炎や、強皮症の皮膚硬化、肺線維症、および多発性筋炎の症状を併せ持ちますが、それぞれの症状は比較的軽いことが特徴です。 MCTDの5-10%の患者さんに肺高血圧症が合併しますが、この合併症は予後に関係する重篤な合併症です。
MCTDと診断した場合、障害を受けている臓器の種類とその障害の程度によって、ステロイド療法の必要性を決定します。ステロイドの適応にならない場合は対症療法を行います。肺高血圧症の治療は原発性肺高血圧の治療に準じますが、早期の場合はステロイド治療が有効な場合があります。

多発性筋炎/皮膚筋炎

多発性筋炎は自己免疫的な機序により筋肉の破壊が起こり、その結果筋力が低下したり、筋肉痛を訴える疾患です。特に、近位筋(身体の胴体に近い筋肉)が障害されます。筋炎に加えて、特徴的な皮疹(を伴う場合が皮膚筋炎です。
筋肉以外にも、肺線維症、悪性腫瘍の合併(皮膚筋炎の約30%)、関節症状、心炎症状、消化器症状(嚥下障害、気腫性のう胞など)などの症状があります。肺線維症は約半数の患者さんに認められ、生命予後を左右する合併症です。特に筋炎症状の少ない皮膚筋炎の場合の肺線維症は重篤であると言われています。悪性腫瘍は積極的に検索する必要があります。
治療は症状、障害されている臓器症状によって異なります。筋炎症状の薬物療法はステロイド治療や場合により免疫抑制剤を使用しますが、副作用に注意する必要があります。 悪性腫瘍がある場合は悪性腫瘍の治療を優先します。

抗リン脂質抗体症候群(APS)

日本全国に5000人程の患者さんがいると考えられています。原因は未だ不明ですが、免疫の異常によって起こると考えられています。
習慣性流産、動脈や静脈の血栓症、血小板数減少などをきたす疾患で、血液中に抗カルジオリピン抗体や、ループスアンチコアグラント(LAC)というものが証明されます。この病気は、全身性エリテマトーデス(SLE)に合併することがしばしばあります。
日常生活における血栓症の危険因子の除去、禁煙や高血圧、高脂血症の改善、経口避妊薬の服用中止が必要です。抗リン脂質抗体が陽性でも、血栓症の既往や症状がない場合には積極的な治療の必要性はなく、経過観察されています。急性期の動静脈血栓症に対しては血栓溶解療法や抗凝固療法が行なわれます。慢性期には再発予防のために抗血小板、抗凝固療法を行います。まれに、全身の臓器に微少血栓を多発する劇症型があり、血漿交換や血漿吸着、ステロイド大量療法、免疫抑制剤の使用、強力な抗凝固療法が行われます。

ステロイド剤との上手な 付き合い方

ステロイドは性ホルモン(女性、男性)や副腎皮質で作られる糖質コルチコイド、副腎髄質で作られる鉱質ステロイドを含むホルモンの総称ですが、臨床で使用されるステロイド剤(以後、ス剤と略します)は糖質コルチコイドです。 ス剤は異常免疫を抑える作用、炎症を抑える作用、アレルギーを抑える作用があり、その効果は強く、速やかで、治療上非常に有用です。しかし、反面、副作用が多いのも有名です。ス剤と上手につきあうにはこの薬の功罪をよく理解することが大切です。
本稿ではス剤との付き合い方で特に大事な点を述べます。まず、同剤をなぜ飲まないといけないのか、また、どのくらいの量をどのくらいの期間、服用するのかを医師からよく聞いてください。ス剤の量、服用期間を必要最小限にすることは大事ですが、膠原病などの場合、急な減量は病気の再燃につながります。ス剤の服用の意義と必要性を理解し、指示された服用量を正確に服用することが大切です。
感染症をはじめとする副作用を充分理解することも大事です。副作用は予防すると共に早期に発見することが大事です。特にス剤を服用する前に結核・B型肝炎がないかを調べておくことは重要です。
もうひとつ大事な点は、長期間ス剤を服用していると、副腎皮質は委縮した状態になっていることです。そのため、ス剤を急に中止すると、副腎からステロイドは分泌されないので、ショックや低血糖、発熱などの重篤な症状を起こします。大変危険ですので長期にス剤を服用している方は、急にス剤をやめないでください。嘔吐など薬が飲めないときは受診していただくようお願いします。
以上、ス剤に対する注意点をのべました。副作用をできるだけ少なくすることはできます。ス剤の量、服用期間を必要最小限にするとともに、副作用がみられた時は早めに対処することが大切です。

診療実績

<外来診療統計> (2022年4月1日より2023年3月31日)
外来受診者数(のべ数)15,350名、月平均1,279名
初診者数 967名、月平均 81名

<入院診療実績> (2022年4月1日より2023年3月31日)
入院は主として全身性エリテマトーデス、関節リウマチをはじめとする膠原病に対して治療を行い、2022年度入院患者数は 351名、平均在院日数:20.7日

2022年の主な入院は:
関節リウマチ 50名、全身性エリテマトーデス 52名、多発性筋炎・皮膚筋炎 15名、強皮症 14名、混合性結合組織病 5名、血管炎症候群 66名、シェーグレン症候群 3名、抗リン脂質抗体症候群 5名、ベーチェット病 1名、リウマチ性多発筋痛症 16名、成人スチル病 14名、脊椎関節炎 3名、結晶誘発性滑膜炎 1名、再発性多発軟骨炎 1名、IgG4関連疾患 6名、など。

リウマチ膠原病内科の対象疾患および症状

関連の症状は

関節炎に関する症状:関節の痛みやはれ、朝の関節のこわばり、皮膚症状:発疹、手指や足のはれ、レイノー症状(寒さで指が白くなる症状)、繰り返す口内炎、筋肉痛や筋力低下、口や眼の乾燥症状、原因不明の発熱、などです。

関連のデータとしては

抗核抗体陽性、リウマチ反応陽性、高ガンマグロブリン血症、各種自己抗体陽性などがあります。

対象疾患として

関節リウマチ、悪性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、混合性結合組織病、血管炎症候群(結節性多発動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発動脈炎など)、多発性筋炎・皮膚筋炎、ベーチェット病、シェーグレン症候群、成人発症スチル病、リウマチ性多発筋痛症、などを診療対象としています。
これらの疾患はそれぞれの診断基準が定められていますが、必ずしも初めから診断基準を満たすものばかりとは限らず、また慢性の経過をとることが多いので長期間の経過観察が必要です。治療に当たっては正確な診断と病気の活動性の評価が大切で、活動性の高い時期には副腎皮質ステロイドの大量投与や免疫抑制剤が必要ですが、活動性の低い時期には維持量の少量ステロイドや補助的療法のみ、或いは何も治療を要しない場合もしばしばあります。抗核抗体やリウマチ反応が陽性として紹介されることも多いのですが、これらの反応は膠原病でなくても陽性に出ることがありますので、我々は本当に治療が必要な膠原病であるのか否かを見極め、治療を要しない場合でも将来症状が出てくる可能性を考慮し、慎重に経過観察するように努めています。