公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

治療について(リハビリテーション科)

PT(Physical Therapy:理学療法)部門

PT部門では、医師の指示に基づき患者様に対して運動療法や物理療法を行い、患者様の失われた身体の基本的な機能や動作能力の回復を図ることを目的として治療を行っています。また、他の医療スタッフと協力して、患者様の社会復帰や病気の再発及び悪化の予防に向けた介入を適宜行っています。当科では、PT部門は以下の3チーム(中枢チーム・内部障害チーム・整形チーム)で構成され、患者様の病状に合った専門的な治療が行える体制を整えています。

<中枢チーム>

主に脳神経外科病棟、脳神経内科病棟、SCUの患者様を担当しています。

【対象疾患】
脳神経外科領域

脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍、水頭症、三叉神経麻痺、顔面神経麻痺、脊椎・脊髄疾患などを対象としています。

脳神経内科領域

脳梗塞、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、ギラン・バレー症候群、ALS、重症筋無力症、末梢神経ニューロパチーなどを対象としています。

【治療内容】
  1. 中枢疾患に対する運動療法:発症早期や術後早期から麻痺肢に対して神経筋再教育や、廃用症候群予防のための関節可動域練習や筋力強化練習、筋力や体力の持久性を高める持久力練習、失調症のある患者に対する協調性を高める協調性練習などをおこないます。
  2. 物理療法:末梢神経障害に対して電気刺激を用いた低周波治療などをおこないます。
  3. 基本的動作練習:起居、立ち上がりや歩行の移動能力などの日常生活の基本となる動作の練習のことです。必要に応じて長下肢装具などの装具を用いて早期より立位や歩行練習をおこなえるように取り組んでいます。
  4. 日常生活動作練習:トイレ動作や更衣動作、食事動作など理学療法士としての視点で作業療法士や言語聴覚士と相談し日常生活動作の獲得に向けて練習をおこないます。

これらの治療内容の妥当性や方向性を検討するために毎週チームで集まりカンファレンスをおこなっています。またカンファレンスにおいては下記のように病棟でのカンファレンスにも参加しています。

退院前カンファレンス

退院前カンファレンスの様子

看護師、医療ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など多職種が集まり、入院している患者様が不安なく自宅または回復期リハビリ病院、施設等に退院、転院できるようカンファレンスを週に1回行っています。

患者様の病棟での様子やリハビリでの回復具合、社会的背景を多職種で共有し、患者様やご家族様のご希望に沿い且つ安全に退院後の生活が送れるよう社会資源の調整等のサポートをしています。

転倒転落カンファレンス(週末リハビリ)

週末はリハビリの介入頻度が少なくなり、患者様の活動量も低下してしまいます。介入が必要な患者様をピックアップし、病棟看護師と担当の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が集まり、週末に必要なリハビリメニューを共有し、安全に週末のリハビリ行えるよう話し合います。また個々の患者様に合った介助方法や室内の環境設定なども病棟スタッフとリハビリスタッフで検討しています。

【特徴的な取り組み】

2019年度よりSCU専任理学療法士を配置しました。

当院には脳血管疾患に特化した集中治療室、脳卒中ケアユニット(SCU:Stroke Care Unit)が9床あります。SCU専任理学療法士がSCU内に常駐し、医師や看護師との情報共有を行い、日々変化する患者様の状態に合わせたリハビリテーションを実施しています。患者様のリハビリの進行状況も共有し看護師の協力の下、病棟でも行えるリハビリを週末に行っています(週末リハビリ)。

週末リハビリ用のパンフレット
週末リハビリ用のパンフレット

上肢リハビリ用の物品
上肢リハビリ用の物品

【教育・研究】
2020年度新人教育

中枢疾患の理学療法評価、脳画像のみかた、脳血管疾患急性期におけるリスク管理、脳外科 手術・術後管理、脳卒中・脳腫瘍の病態、パーキンソン病、運動失調、装具療法、電気刺激療法、姿勢制御について講義中心におこないました。また、ケースカンファレンスやスーパーヴィジョンをおこない臨床における疑問の共有や解決に向けてチーム内で共有し取り組んでいます。

病棟スタッフとの共同の勉強会

脳神経外科病棟、脳神経内科病棟のスタッフと共に、各疾患における動作の特徴や介助方法の注意点や知識を共有し、実際の方法を一緒に練習しました。

研究

SCUに入室した方とパーキンソン病・パーキンソン症候群に入院された患者様対象にデータベースを作成。また、治療経過や効果に関して症例報告や学会発表ができるよう日々研鑽しています。

<内部障害チーム>

【対象疾患】

内部障害チームは、呼吸器疾患、循環器疾患、消化器疾患、血液疾患、代謝疾患など多岐にわたる疾患を持つ患者さまを対象に、入院後早期からリハビリテーションを提供しています。

【治療内容】

集中治療領域(ICU、HCUなど)を含め入院後早期から理学療法士が関わることで、入院中の身体・精神機能低下の予防や早期退院に向けた日常生活機能の改善を図っています。開胸・開腹手術予定の患者さまに対しては、術後合併症予防を目的とした術前指導をしっかりと行い、術後はスムーズな退院に向け、早期からリハビリテーションを進めます。各病棟でのカンファレンスも積極的に行い、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど各職種間での連携も取っています。腎不全教室や心不全教室では、他職種と連携して患者さまへの疾病管理指導にも携わっています。

【特徴的な取り組み】

令和1年度から呼吸器内科と連携し、慢性呼吸器疾患患者様を対象とした北野フライングディスククラブを発足しました。慢性呼吸器疾患の患者さまに対する教育入院でのリハビリテーションも行っています。また、肺癌、白血病、消化器系癌などの患者さまに対する“がんのリハビリテーション”を行っており、現在は月50件超の依頼を受けています。腎不全教室や心不全教室では、他職種と連携して患者さまへの疾病管理指導にも携わっています。そして、各種研修会の参加や学会発表を積極的に行うことで、最新の知見ならびに科学的な根拠に基づいた治療を提供できるように努めています。

きたのフライングディスククラブの紹介

きたのフライングディスククラブ

当院呼吸器内科の取り組みとして、慢性呼吸不全を有する方の活動量増加や社会参加促進を目的に、医師、看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士が協力し、慢性呼吸不全患者様を対象に、フライングディスク競技を実施しております。フライングディスクは低運動強度の運動であり、屋内外で実施できるので、1年通して実施可能な競技です。実施前には血圧測定など健康チェックや準備運動を行い、呼吸状態の確認を行いながら実施するため、安心して参加していただけます。

【腎臓病教室】

慢性腎臓病の方またはご家族様へ、医師・看護師、栄養士など様々な職種が講義をしており、その中で理学療法士は年に2回、安全に出来る運動を中心に、実演も行いながら理解を深めて頂けるよう関っております。また年1回開催される、きたのキドニーデーにおいても、腎臓病についての講義や体験等の催しがあり、理学療法士が関わらせて頂いております。

【心不全教室】

心不全教室では患者様やそのご家族様に運動療法について講義しています。運動療法は食事療法や薬物療法と併用して行われるものであり心不全治療の一貫として扱われています。心不全が改善したら治療終了ではなく、その後の体力向上・疾病管理が重要であり、再入院予防にもつながります。我々理学療法士は入院中や退院後に取り組んでいただける患者様に合わせた運動の種類・頻度・強度について説明しています。

<整形チーム>

【対象疾患】

脊椎疾患(頚椎・胸椎・腰椎)、関節外科(人工膝関節全置換術、人工股関節全置換術)、各種外傷(脊椎・上肢・下肢の骨折など)、転移性骨腫瘍、各種膠原病関連(関節リウマチや皮膚筋炎など)を主な対象としています。

【治療内容】

整形チームは、理学療法士6名(訪問兼務1名),マッサージ師1名にて構成しています。身体機能低下の予防や早期の退院に向けて、入院・手術後早期より運動療法、リラクセーション法・各徒手療法、電気刺激・温熱などの物理療法、日常生活活動訓練を行っております。また、各種疾患に適切に対応するため、若手スタッフへの教育、訓練に必要な機器など整備、各疾患のクリニカルパス・標準プログラムにおける訓練の基準・手順を整備しています。関節リウマチの患者様に対する教育入院では、他職種と連携し、入院中のリハビリテーション・疾病管理にも携わっています。

【特徴的な取り組み】

OT(Occupational Therapy:作業療法)部門

作業療法とは

医師の指示に基づき日常生活に困難を感じている、もしくはそれが予測される患者様に対して、その主体的な生活の獲得を図るため作業活動を用いて治療を行うものです。具体的には、上肢・手指の運動機能や高次脳機能の訓練などを行います。また、実際に困っている動作作業について繰り返し練習を行ったり、必要に応じて自助具・装具の提案、作成を行ったりしています。

【対象疾患】
【治療内容】

訓練風景

ST(Speech Therapy:言語聴覚療法)部門

言語聴覚療法とは

コミュニケーション能力、安全に食事をする能力を獲得する為、高次脳機能や摂食嚥下能力の回復を図るものです。

【対象疾患】
【治療内容】

img_rihabiri_ST

心肺運動負荷試験

運動中の心臓の機能・肺の機能・骨格筋の機能などを同時に測定する検査です。担当医、立会いの元、セラピストにより施行されます。呼気ガス分析装置により運動能力・心筋機能の指標である嫌気性代謝閾値(AT)などを算出し、リハビリ時の運動負荷の指標や効果判定等に利用します。

低周波治療器SOLIUS(ソリウス)

SOLIUSは手術後の早期リハビリに向けた電気刺激による骨格筋機能の維持を目的とする低周波治療器です。手術により筋力低下は、安静臥床や不活動だけではなく手術侵襲による影響も報告されています。周術期におけるリハビリテーションから退院後の運動まで、身体への負担が少ない状態での使用が可能であり、筋力の維持・機能低下を予防することが期待出来ます。

In body(体成分分析装置)

体を構成する基本成分である体水分・タンパク質・ミネラル・体脂肪を定量的に分析することで、身体の筋肉量や栄養状態・体がむくんではいないかなどを測ることが可能です。当院では、手術前後の筋肉量の変化や各領域(心臓・神経内科)の身体機能評価・サルコペニアの分析等に利用しています。