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呼吸器センターの設立とその展望について
平成19年6月から呼吸器内科と呼吸器外科は統合し、呼吸器センターとして生まれ変わりました。
その目的は、呼吸器疾患でお困りの患者様に対して、内科・外科の枠を超えて切れ目のない診療を実施することにあります。
呼吸器センターは「内科系部門」と「外科系部門」により構成されますが、お互いが診療・教育・研究において密接に関わって参ります。
呼吸器の診療科として専門性を高めるだけでなく、内科系部門はこれまで通り内科系診療科の一部門として、外科系部門は外科系診療科の一部門としてこれまで以上に他診療科との連携を重視したいと思います。
<内科系部門>
呼吸器の病気は非常に多彩ですが、その中でも手術の適応とならない肺がんや、肺炎、胸膜炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫・慢性気管支炎)、びまん性肺疾患(間質性肺炎、過敏性肺炎など)、慢性呼吸不全(種々の原因で血液中の酸素が低下し、息切れがひどくなる状態)などの内科疾患を担当します。また、近年、社会問題にまでなっております睡眠時無呼吸症候群についても積極的に取り組んでおります。
これら様々な呼吸器の病気に対して呼吸器外科系部門との密接な連携のもとに迅速な診断と最新の治療が提供できるように努力して参りたいと思います。また、呼吸器系の異常は、しばしば他科の病気に合併して生じますが、一面的な診断や治療に陥らないように他科との密な連携を心がけたいと思います。
<外科系部門>
肺がんの治療では高齢者が多いため早い時期では肺機能を温存した区域切除が試みられ一部の報告では従来の肺葉切除と変わらない成績が出されています。一方進行した場合は手術前の化学療法による病巣の縮小を図った上に広範な縦隔リンパ節郭清がなされ良好な結果が報告されています。いずれのがんの場合でも従来のように病理学的進行度だけに基づいた治療でなくそれぞれの悪性度に応じた治療、すなわち各種マーカー、抗ガン剤に対する感受性、遺伝子異常なども考慮した個別治療が要求されています。
手掌多汗症に対する治療は胸部交感神経切断により、重症筋無力症は胸腺切除により改善していますが、長期の経過を観察する必要があります。
呼吸器手術は術後の疼痛、入院期間の短縮のため胸腔鏡下の手術が気胸、縦隔腫瘍、転移性肺腫瘍の手術を中心に行われていますが、今後さらに適応が拡大されます。
また、より低侵襲である局所麻酔下胸腔鏡による治療も疾患により導入されています。
特色
呼吸器内科と呼吸器外科が統合し呼吸器センターとなったことで、気管支鏡検査だけでなく、CTガイド下生検や胸腔鏡検査、縦隔鏡検査などの検査がより迅速に、より効率的に行えるようになり、肺がんやびまん性肺疾患の診断、原因不明の胸水や縦隔リンパ節腫脹などの原因検索がよりスムーズに行えるようになりました。
また、呼吸器センター設立を機に、局所麻酔で実施可能なフレキシブル胸腔鏡を用いた胸腔鏡検査も導入しました。この検査は、意識下に低侵襲で速やかに施行可能であり、患者様本人も検査中に胸腔内を一緒に観察する事もできます。原因不明の胸水や胸膜病変に対して、より正確で感度の高い診断が可能となりました。
肺がんの治療方法には、手術や放射線治療、抗がん剤による治療(化学療法)などがあります。呼吸器センターになったことで、個々の患者様の病状に合わせて内科的・外科的治療方法をより効果的に組み合わせることが可能になりました。
在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法が必要な呼吸不全の方に対しては、原疾患の治療に加え、地域医療コーディネーターを中心に地域医療機関・介護関係との連携を早くから図り、退院後に自宅での療養生活にスムーズに移行できるように心がけております。
睡眠ポリグラフ検査やSpO2モニタリングによって睡眠時無呼吸症候群や睡眠時呼吸障害の正確な診断が可能です。
肺がんや慢性閉塞性肺疾患(肺気腫)など呼吸器疾患の最大の原因である喫煙に対しても、禁煙外来を中心に積極的な指導を行っております。
日本呼吸器病学会、日本呼吸器外科学会、日本胸部外科学会、日本呼吸器内視鏡学会の認定施設です。
治療について
肺がん の治療においては、放射線科医と合同で症例の多角的な検討を定期的に行っており、病状に合わせて手術療法、抗がん剤による治療(化学療法)、放射線治療などを選択しております。これらを組み合わせることもしばしば行います(集学的治療)。さらに症状緩和についてもチームで積極的に取り組んでおります。
●手術が可能な方につきましては、積極的に外科的治療を進めております。術前検査(CTやPETなど)で縦隔リンパ節の腫大が見られる進行性肺がんの場合、縦隔鏡検査で縦隔リンパ節の転移を確認し、陰性なら通常の肺葉切除+縦隔リンパ節郭清を行い、陽性なら化学療法を行います。化学療法で縮小が見られれば前者と同様の手術を行います(ネオ・アジュバント治療)
●手術の適応にならない方に対しては、最新の根拠に基づき様々な抗がん剤治療を導入しており、成果を上げております。その際、画一的な治療に陥ることなく、治療を受けられる方の病状や生活状況などに応じて、最も適した治療法が提供できるように心がけております。その一環として外来での抗がん剤治療も積極的に導入しております。一方、縦隔リンパ節転移を認める方には、抗がん剤治療と放射線治療の同時併用療法も積極的に行っております。
●脳転移に対してはハイパーナイフにより短期入院で治療を行っています。
●肺がんの積極的な治療とともに欠かせないのが、症状の緩和や心のケアです。緩和ケアチームや神経精神科のサイコオンコロジー外来と連携して積極的なケアを行っております。
高齢者の誤嚥性肺炎 に対しては、抗菌薬による治療だけでなく、栄養状態の改善や嚥下機能の確認、呼吸・嚥下リハビリなど多角的な取り組みを行っております。
呼吸器感染症 においては、感染症科との連携のもと、最新の免疫学的および遺伝子工学的手法も導入して起炎菌の迅速な診断を行うとともに、最新の情報に基づいて耐性菌の発生を極力抑えるような適正な抗生物質(抗菌薬)の使用を心がけております。
気管支喘息 に対しては、ステロイド吸入療法を治療の柱とし、中等症以上ではピークフローメーターによる自己管理を指導することにより、発作のない日常生活が送れることを目指しております。
肺気腫や結核後遺症などにより生じる慢性呼吸不全 の治療に、従来からの酸素療法や薬による治療だけでなく、鼻マスクによる陽圧人工呼吸(NPPV)も導入し、成果を上げております。
睡眠時無呼吸症候群 の方に対しては、マウスピース(口腔内装具)や鼻マスクによるCPAP(シーパップ)治療を積極的に行っております。マウスピースは近くの歯科と提携して作成しております。CPAP治療では、患者様の状態や快適性を考慮して、複数のメーカーの機器やマスクを揃えております。CPAP利用者には順次ICカードを導入し、CPAP治療の利用状況を正確に把握できるようになっております。
手掌多汗症 の手術では2mmの内視鏡や器具を使うため術後に傷はほとんど解らなくなっており、疼痛も少なく、短期間の入院ですみます。
気胸 に対して従来は肺尖部(肺の頂上付近)などにみられるブラ(風船状になったところ)の切除を行ってきたが、再発が一定の頻度で見られるため、繰り返す症例に対しては人工の被覆材を肺尖部に広く貼り付け再発防止に努めています。
肺気腫 の一部の方に対しては、肺が壊れた部分を一部切り取る手術を行い良好な結果を得ています。
最新情報
クォンティフェロン検査が導入され、結核感染の早期診断に威力を発揮しています。
胸腔鏡の光源が移転に伴い最新の光学系となり画像がより鮮明となり安全確実な手術が可能となりました。
肺がんで進行している場合一部の標本を切除し抗がん剤の感受性試験を行い感受性のない抗がん剤の使用をさけ、早期がんでは後に再発した場合に備えています。
がんの個別化治療のため各種遺伝子の変異を調べ(マイクロチップ)悪性度、抗がん剤に対する感受性などとの関係が調べられています。
医療機器
フレキシブル胸腔鏡(写真)の導入により、全身麻酔を行わなくても、局所麻酔下で胸腔鏡検査が可能になりました。特に原因不明の胸水や胸膜病変の診断精度を飛躍的に高めることが期待されております。また、膿胸、気胸といった治療への応用も期待できます。
気管支鏡検査に用いるレントゲン透視装置が、新しくCアーム型のもの(写真)に変わり、体を様々な角度から透視できるようになります。気管支鏡検査中に体位変換をする必要がなくなるため、鎮静剤投与が可能であり、検査による苦痛は大幅に軽減することができました。
放射線科に導入されたエックスナイフ(ハイパーナイフ)を用いれば、限定した部位に集中して放射線を照射することが可能になり、他の部位への放射線障害を減らすことができます。特に肺がんなどの脳転移に対する治療に威力を発揮しております。
内視鏡・超音波画像ファイリングシステムnexusにより、気管支鏡で撮った画像は、院内どこででも参照することが可能になり、また検索も容易になります。
鼻マスクによる陽圧人工呼吸に用いる高性能人工呼吸器(写真)が常備され、特に慢性閉塞性肺疾患などによる慢性呼吸不全の方の急性増悪時に威力を発揮しております。
■フレキシブル胸腔鏡
■ハイパーナイフ
■Cアーム
■鼻マスク人工呼吸器(BiPAP
vision)
病診連携勉強会
1.呼吸器センター(内科系部門・外科系部門)・放射線科合同カンファランス
毎月曜日 17:30〜18:30
院外医師等の参加を歓迎しております(8月中は中止)。
2. 地域包括呼吸ケアを考える会
年2回、5月と11月の土曜日
呼吸器疾患の方が地域で人間らしい生活を行うために、急性期病院とかかりつけ医、訪問看護師、理学療法士、介護関係者などといかに連携すべきかを考えております。
また、呼吸リハビリなど実際の診療に役立つ実習も積極的に行っております。
地域の先生方へ
呼吸器疾患のケアや治療においては、地域の先生方や訪問看護ステーションなどとの連携が欠かせません。特に慢性呼吸不全の患者様に在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法を行うに際しましては、地域包括医療を確立することが最も重要であると考えます。また、肺がんの患者様のQOLを考えるとき、入院治療と在宅治療のスムーズな移行が非常に大切になります。これらのことを踏まえて、地域医療サービスセンターに看護主任が配属され、地域医療コーディネーターとして、地域の先生方や訪問看護師、ケアマネージャーなどの皆さんとの交流、情報交換の核となりつつあります。是非、ご利用ください。
スタッフ紹介
役職
氏名
資格等
専門領域
研究内容
センター長
内科担当部長
福井 基成
京都大学医学博士
日本呼吸器学会指導医・代議員
日本内科学会指導医
京都大学医学部臨床教授
呼吸器内科全般
呼吸不全
睡眠呼吸異常
呼吸不全患者に対する地域連携
呼吸器感染症
副センター長
外科担当部長
黄 政龍
京都大学医学博士
呼吸器外科専門医
日本外科学会指導医
日本胸部外科学会指導医
日本呼吸器外科学会指導医
日本がん治療認定医機構暫定教育医
Active member of American Association for Cancer
Research
Active member of American Society of Clinical
Oncology
呼吸器外科全般
胸腔鏡手術
肺癌治療
縦隔腫瘍治療
<内科系部門>