公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院

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呼吸器センター 呼吸器内科

呼吸器内科について

ご挨拶

呼吸器内科では、肺がん、肺炎・気道感染症、喘息・COPD、間質性肺疾患、呼吸不全、睡眠時無呼吸症候群など実に多くの呼吸器の病気を担当しています。いずれの診療においても、最新の診断・治療を提供すると共に、いつも患者さんに近い医療を目指したいと考えています。そのためには、多くの医療職が力を合わせて行うチーム医療を重視しています。また、慢性呼吸器疾患の患者さんにおいては、退院後も病気と闘っていく必要があります。少しでも良い暮らしが継続できるように、多職種による病棟カンファレンスや退院支援を通じて地域の医療・介護に繋いで行きたいと思います。最後に、北野病院は医学研究所でもあります。科学者の視点で日常診療を見つめ直し、より良い医療のために臨床研究を進めていきたいと思います。
  • 【病棟カンファレンスの一コマ】

    病棟カンファレンスの一コマ

地域で取り組む喘息・COPD患者への吸入指導 -吸入指導ネットワークの試み-

当科と薬剤部、北区の薬剤師会・保険薬局と協同で立ち上げた吸入指導ネットワークの本ができました。 最新の吸入デバイスの吸入方法・吸入指導Q&A・チェックリストが以下からダウンロードできます。

特色・取り組み

  1. 気管支鏡検査
    近年、気管支鏡の技術進歩はめざましいものがあります。超音波を併用した気管支鏡検査(EBUS-TBNA、EBUS-GS)によって、これまで診断が難しかった気管支周囲のリンパ節や肺の奥にある病変から組織を採取し、診断することが可能になっています。今後、肺がんや間質性肺疾患の診断向上のために、クライオバイオプシー(肺の組織を凍らせて採取する方法)の導入も予定しています。
  2. 肺がんの集学的治療
    肺がんの治療方法には、手術や放射線治療、抗がん剤による治療(化学療法)、免疫療法などがあります。これらの方法を組み合わせてそれぞれの患者さんに最適な治療を行うことが重要です。毎週、呼吸器外科、放射線科、腫瘍内科と合同でカンファレンスを行い、個々の患者さんについて議論しています。
  3. 吸入指導ネットワーク 吸入指導の資料はダウンロードできます
    喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の薬物治療の柱は、ステロイド薬や気管支拡張薬の吸入療法です。近年、多くの吸入デバイスが登場しておりますが、使用方法がそれぞれ異なるため、混乱してうまく吸入できないことが問題になっております。それに対して、2006年から当院呼吸器内科と薬剤部、北区北支部薬剤師会、地域の保険薬局で「吸入指導ネットワーク」を立ち上げました。地域のどの薬局でも、統一した吸入指導が定期的に行われることを目指して、講習会などを10年以上にわたり続けています。
  4. 間質性肺炎の診断と治療
    間質性肺炎は、肺胞の壁が炎症などで厚く硬くなり、酸素を取り込みにくくなる病気です。原因不明のものを特発性間質性肺炎と呼びます。 一方で、鳥関連過敏性肺炎などの慢性過敏性肺炎が注目されています。例えば羽毛布団やダウンジャケットなどに含まれる微量の鳥抗原が長年の間に肺に炎症を起こし、特発性間質性肺炎と区別ができない病態を引き起こすことがわかってきています。住居に潜むカビ(真菌)なども原因になります。 原因不明の間質性肺炎患者さんに対しては、すぐに薬物治療を行うのではなく、まずは慢性過敏性肺炎の可能性も考えて、羽毛製品など過敏性肺炎の原因となり得るものの除去を指導しています。多くの患者さんでは、これだけで画像が改善したり、KL-6といったマーカーが減少したりします。改善が乏しい場合には、入院してもらい自宅の抗原から隔離したり、自宅・職場の環境調査に出向き、環境整備を図ったりして、成果を上げています。
  5. 慢性呼吸不全とモニタリング
    慢性呼吸器疾患の患者さんで息切れなどの症状が強くなった方に対しては、酸素飽和度(SpO2)の連続モニタリングをしたり、夜間に経皮二酸化炭素分圧測定や睡眠ポリグラフ検査を行ったりして、労作時の酸素が下がっていないか、睡眠中に換気(呼吸運動)が減少していないかを詳しく調べます。もし異常があれば、それを改善するために、在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法を導入しています。
  6. 慢性呼吸器疾患と包括的ケア
    慢性呼吸器疾患の患者さんは、しばしば心身のバランスを崩されたり、栄養状態や身体活動性の低下を来たされたりします。これらに対して、呼吸リハビリテーションや個別の栄養指導に加えて、漢方薬など東洋医学も積極的に導入して、全人的なアプローチを心がけています。また、地域の医療・介護との連携も積極的に図っています。

治療について

  1. 肺がんの新しい治療
    近年、肺癌の化学療法や免疫療法の進歩はめざましいものがあります。肺腺癌においては様々な遺伝子異常が見つかっており、この異常部分に作用する分子標的薬が数多く開発され、すでに標準的治療となっています。 一方で、本庶先生のノーベル医学・生理学賞受賞で世界が注目している免疫療法がすでに肺がん治療にも導入され、大きな成果を上げつつあります。がん細胞を攻撃する免疫を抑えるPD-1/PD-L1というシステムをブロックすることで、がんに対する免疫を大いに高めます。ただし、思いも寄らない副反応が生じることがありますので、色々な分野の診療科と協力しながら対処しております。
  2. 気管支喘息の新しい治療
    喘息治療の中心は吸入ステロイド薬です。これにより喘息死も大きく減少しています。しかしながら、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬、抗アレルギー薬などを用いても症状がなかなかコントロール出来ない難治性喘息患者さんがおられます。この場合、喘息の病態に深く関わるIgEや好酸球を直接抑える分子標的薬が利用できるようになっています。漢方薬も著効する場合があります。
  3. 慢性呼吸不全の新しい治療
    上記の慢性呼吸不全患者さんにおいては、睡眠中でも特に夢を見ているREM睡眠時に換気が大きく低下することがわかってきました。このREM睡眠時の低換気を来す患者さんは、急性増悪を頻回に来したり、肺高血圧を合併することがわかってきています。最近では、換気が低下したときだけ圧を高めて換気を補助することができる人工呼吸器が登場し、鼻マスクによる人工呼吸療法に伴う不快感軽減に役立っています。

診療実績

疾患 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
肺癌など悪性腫瘍(疑いを含む) 623 477 514 426
インフルエンザ・上気道炎・気管支炎 13 1 17 3
肺炎 310 412 445 175
敗血症 17 8 3 3
肺膿瘍・敗血症性肺塞栓症など 14 21 12 8
肺真菌症(アスペルギルスなど) 25 6 8 10
結核(胸膜炎を含む) 12 12 16 10
非結核性抗酸菌症 28 23 30 17
気管支拡張症 14 13 6 7
気管支喘息 58 35 33 33
COPD 37 19 22 35
呼吸不全 74 62 37 18
心不全・右心不全 5 11 4 4
肺塞栓症・肺高血圧症 5 4 4 1
睡眠時無呼吸症候群 148 82 75 74
気胸・縦隔気腫 22 9 19 22
胸水・胸膜炎・膿胸 24 25 15 30
間質性肺疾患・びまん性肺疾患 101 107 109 105
過敏性肺炎 35 6 12 22
サルコイドーシス(疑いを含む) 7 15 8 7
肺血管炎 10 2 4 1
血痰・喀血・肺胞出血 12 19 10 10
気道狭窄・気道異物 3 4 2 1
胸部異常陰影・無気肺 3 5 2 5
その他 36 51 44 34
合計 1636 1429 1451 1061

業務実績(治療実績・学会/著作/研究活動 等)