プログラム指導者  岩崎孝一
1. 基本概念

  脳神経外科は、中枢神経系と末梢神経系との両者の疾病を外科的に治療する診療科であり、主な対象疾患は脳血管障害・脳腫瘍・機能外科・脊椎疾患・水頭症・頭部外傷など多岐におよぶ。神経系の疾患は診断や対応の遅れが重篤な障害につながる場合があり、迅速かつ正確な診断と対応が必須である。また、脳神経外科の手術には細心の注意と精緻な技術が必要となる。これらを身につけるには、上級医師の指導の下に、受け持ち患者一人一人をきっちりと診察し、治療する研修システムが重要である。北野病院脳神経外科研修では、脳・神経疾患の外科的治療を実地研修することによって、神経疾患に対する治療の現状を修得することを目指す。

2.プログラムの目的
 
A) 3ヶ月コースでは入院患者の診断から治療に至る診療の流れを理解するとともに、必要な知識、技術、態度を身につける。また、各種カンファレンスに参加し、内容の理解に努める。
B) 6ヶ月コースでは3ヶ月コースでの経験をもとに、検査、手術や術後管理にさらに積極的に参加する。また、各種カンファレンスにおいて、積極的に発表を行う。


脳血管造影

脳血管造影は脳動脈瘤、脳動脈狭窄、脳腫瘍など脳神経外科で治療する多くの病気に対する検査 として重要です。

カテーテルを大腿鼠径部や上腕の動脈よりX線透視下に頭部へ誘導し、脳の血管の異常や血流状態を調べます。

また、超急性期の脳梗塞などでは、このカテーテルを介して血栓溶解を 行う治療を併せて行うことがあり、さらには狭窄した動脈を拡張させたり、動脈瘤を血管内から閉塞させたりする血管内手術にも応用されています。

マウスを重ねると映像が変わります

3.脳神経外科研修の到達目標

<1>一般目標   
(1)3ヶ月コースでは、脳神経外科の診療に必要な知識を習得・整理する。
   外科的治療の実際を経験するとともに、術後管理の重要性と方法を修得する。
(2) 6ヶ月コースでは、さらに知識の集積・整理に努めるとともに、外科的治療の実技についても修得する。

<2>行動目標
(1)3ヶ月コース
A) 入院患者を上級医師とともに、担当医となり、診断・検査・手術術後管理等を担当し、基本的な診療過程の進め方を身につける。
B) 脳血管造影や脊髄造影の検査手技を学ぶとともに、開頭術や穿頭術、髄液短絡術、頭蓋形成術などの助手をつとめ、手術の流れを理解する。
C) カンファレンスでの積極的な参加によって、診断能力の向上と治療方針の決定に至る過程を理解する。
D) 緊急症例に対しても、上級医師とともに診療に参加し、緊急対応の実地を経験する。

(2)6ヶ月コース
A) 3ヶ月コースで修得した知識・実技経験をもとに、より内容を深めて、自主的に判断できる臨床能力を養う。
B) 種々の開頭術の助手をつとめ、手術の理解を深めるとともに、術後管理の実地を研修する。
C) 穿頭術、髄液短絡術、頭蓋形成術などの手術を術者として施行できるように、研修をつむ。

(3)経験目標
A) 経験すべき診察法・検査・手技
1)神経学的検査法の理解と手技
2)病巣部位診断と病態生理の理解
3)簡単な神経眼科・耳科的検査の理解と手技
4)簡単な痴呆検査の理解と手技
5)内分泌機能検査所見の理解
6)診断に必要な検査、診察、検査項目の判断力
7) 頭部単純レ線写真、CT、MRI、脳血管造影、ミエログラフィー、SPECT、頸動脈エコーなどの
□ 検査の読影
8)脳波、BAEPなどの生理学的検査所見の理解
9)腰椎穿刺の手技と髄液所見の理解

B)経験すべき症状・病態・疾患
1)頭痛の鑑別診断と治療
2)頭蓋内圧亢進の症状と治療
3)痙攣発作の診断と治療
4)髄膜炎の診断と治療
5)意識障害の鑑別と治療
6)頭部外傷の診断と治療
7)脳血管障害の診断と治療
8)脊椎・脊髄疾患の診断と治療
9)三叉神経痛、顔面痙攣の診断と治療

C)経験すべき手術目標(手術助手として)
1)慢性硬膜下血腫
2)腰椎および脳室穿刺および髄液ドレナージ
3)髄液シャント術
4)開頭、閉頭術(天幕上・天幕下)
5)頭蓋骨形成術
6)脊椎手術
7)脳腫瘍
8)脳動脈瘤
9)機能脳外科手術

4.研修指導体制  


 日々の指導は原則として日本脳神経外科学会認定専門医の資格を有するスタッフが行うが、上級レジデントや医員も参加する。研修医は受け持ち患者の症例レポートを作成し、これを元に部長は毎月1回、研修医と面談し、到達度や問題点について話し合う。


5.週間スケジュール

A) 部長回診、患者紹介、フィルムカンファレンス:毎週火曜日と金曜日の午前7時45分より入院患者のフィルムカンファレンスを行っている。このカンファレンスは部長回診を兼ねており、入院患者の紹介と手術計画、術後経過をまとめて行うものであり、短時間に必要な情報を正確に提示する能力を修得するとともに、治療方針決定の過程を理解する。
B) 手術ビデオカンファレンス:月曜日午後5時からは手術ビデオカンファレンスを行っており、手術の要点を学習する。
C) 合同カンファレンス:2ヶ月に1回は神経内科と脳卒中を初めとする神経疾患に関する合同カンファレンスを行っており、神経疾患 の治療方針についての総合的な判断を学習する。
D) 院外活動:院外にも毎月1〜2回の症例検討会があり、これらにも積極的に参加することによって、より多く知識を習得する。
E) 手術日:月、水、金
F) 外来:毎日(火曜日、木曜日は3診、他は2診、土曜日は1診) (休診日を除く)
G) 当直
脳神経外科は単科で毎日当直を行っており、脳卒中をはじめとする救急医療にも対応している。

脳神経外科 研修用週間プログラム


午前 午後
月曜日
手術 PM5:00〜手術ビデオ検討会および研修用勉強会
火曜日
AM7:45症例検討および回診
9:00〜脳血管撮影、外来

脳血管内治療
水曜日
手術 手術
木曜日
AM8:00抄読会 PM3:00ハイパーナイフ外来
金曜日
AM7:45症例検討および回診
手術

手術
土曜日
   


6.脳神経外科研修の到達度評価

 到達度に関する評価は、研修期間中に指導にあたった指導医の意見を参考に、脳神経外科部長により行われる。評価項目として、1)研修医による自己評価、2)受け持ち症例のレポート、担当指導医および部長との面談の中で、脳神経外科学的知識や診療への取り組む姿勢およびパラメデイカルスタッフとの協調性などを含めた総合的な評価を受ける。

7.当診療科における研修の特徴

 当脳神経外科では厳格な手術適応の決定のもとに、年間400例以上の手術を行っている。また、血管内治療や定位放射線療法も行っており、幅広い選択枝の中からどの治療がもっとも適しているかを個々の患者について学習することが可能である。脳神経外科では単科当直を行っており、病棟の患者はもとより、脳卒中急性期の治療も経験することが可能である。さらに、当科では三叉神経痛や顔面痙攣に対する手術治療例が多く、またパーキンソン病や本態性振戦に対する脳深部刺激療法の症例も多い。近畿一円から多くの患者が紹介されてきており、機能外科の実際を修得可能である。



 


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