プログラム指導者  有馬 靖佳
1.基本理念

 血液疾患の患者は合併症や併発症も多く、他の内科疾患よりも平均入院日数が長くなり、重篤化しやすいという特徴がある。他の内科と比較すると受け持ち患者数は少数だが、経験する症状や病態は多彩である。それらに対応することによって、全般的な診療能力を身につけることが要求される。また、患者本人と家族への接触が密になるため、全人的な対応も必要である。診療におけるエビデンスが確立しているので、いかに最新の知識・指針を把握し、それに則った治療を行えるかのトレーニングが重要である。

2.研修の目的と特徴

  北野病院は日本血液学会の認定研修施設であり、血液内科領域の診療に関しての基本的知識・技術を習得することを目的とする。また抗癌剤治療を効果的かつ安全に行い、総合的な癌治療を体験・学習する。必要な輸血を安全に行う方法を身に付けること、コンプロマイズドホストに発する感染症を的確に診断治療することも目標である。臍帯血バンクの認可施設になったことも含め、自己・同種の移植も適応に応じ、自ら行うことが要求される。

3.指導体制


研修責任者:有馬 靖佳
      (医学博士、日本内科学会認定医・指導医、日本血液学会専門医・指導医、
       日本臨床腫瘍学会暫定指導医、産業医)
指 導 医:平田 大二  (医学博士、日本血液学会専門医、日本内科学会認定医)
       福永 明子  (医学博士、日本内科学会認定医、日本血液学会専門医)

4.到達目標

<1> 一般目標 
 血液疾患は多彩だが、特に貧血、血小板減少、白血球減少は普遍的に体験しやすい病態であり、適切な診断と処置が重要である。適切に輸血療法を行えるようになる必要がある。血液内科の入院患者には、化学療法を受けている悪性腫瘍が多く、抗癌剤の適切な投与法を学ぶことが要求される。治療計画はエビデンスに基づいたものでなければならない。同時に患者や家族に対する接し方を学ぶ。

<2>行動目標
 指導医から学ぶだけでなく、積極的に自ら診療に携わる熱意が期待される。グループ診療の一員として、他科への適切なコンサルテーション、コ・メディカルとの協調、紹介状や紹介状への返信作成などを期待される。抗癌剤の投与機会や、易感染患者の診療などを通じて、リスクマネジメントや院内感染対策の概念を習熟する。

<3>経験、修得すべき事項
a.経験すべき頻度の高い症状
リンパ節腫脹、発疹、発熱、動悸、呼吸困難、鼻出血、咳・痰、腹痛、嘔気、便通異常、腰痛、体重減少、不眠、不安・抑うつなど

b.緊急を要する症状、病態
ショック、意識障害、大量出血

c. 経験すべき疾患、病態
各種貧血(鉄欠乏性、再生不良性、悪性、溶血性、二次性等)、白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、血小板減少症、凝固異常、血栓性疾患、DIC、感染症(ウイルス、細菌、真菌)、不明熱、後天性免疫不全症

<4>習得すべき知識、検査
 1)貧血の鑑別診断  
 2)末梢血液像の見方 
 3) 骨髄塗抹標本、骨髄組織像の見方
 4) リンパ節生検における特殊検査とその意味
 5) 出血・凝固異常の鑑別診断  
 6)造血器腫瘍性疾患の鑑別診断  
 7)血清蛋白異常症の鑑別診断
 8)血液疾患に関する画像診断(胸腹部CT、MRI、シンチグラム、PET等)
 9) 病型分類(表面マーカーによる診断、DNA 診断、染色体分析、リンパ節の病理組織像など)
 10) 抗腫瘍剤の作用機序と副作用
 11) 造血幹細胞移植に関する知識

<5>習得すべき検査および治療手技
 1)末梢血および骨髄塗沫標本の作製
 2) 骨髄穿刺・生検 
 3) 腰椎穿刺、胸腔・腹腔穿刺
 4) 鎖骨下静脈穿刺

<6>習得すべき治療法
A.意義を理解し、自らもその一部〜全部を実施するもの
 1)各種貧血の治療  
 2)成分輸血療法 自己血輸血 
 3)瀉血療法
 4)免疫抑制療法 ステロイド療法(経口、パルス)
 5)各種造血器腫瘍の化学療法
 6)compromised host における感染症の治療、無菌室での治療  
 7)DIC の治療
 8)サイトカイン療法   
 9)抗体療法 分子標的療法
 10) 末梢血幹細胞採取、骨髄移植採取
 11) 末梢血幹細胞凍結保存
 12) 造血幹細胞移植(末梢血、骨髄、臍帯血)

B.意義を理解し、適応を判断できるもの
 1) 悪性リンパ腫、骨髄腫等の放射線療法
 2) 血漿交換療法 

C.治癒を断念したQOL療法
D.ターミナルケア


末梢血幹細胞移植:採取された幹細胞の保存作業  (closed system で行われる)

5.教育スケジュール

1) 研修医が参加する週間スケジュール(義務および任意を含む)
    移植症例検討会             月曜日 17:00-17:30pm
    文献抄読会                月曜日 17:30-18:30am
    顕微鏡・組織診断カンファレンス     火曜日 18:00-19:00pm
    10階西看護カンファレンス        水曜日 12:30-13:00pm
    カルテ回診                 水曜日 13:00-14:30am
    病棟回診                  木曜日 14:00-16:00am
    内科症例検討会およびCPC       木曜日 18:00-19:30pm

2)研修医が参加して有益と思われる行事
    北野臨床血液セミナー        年2回
    血液腫瘍フォーラム21         年1回
    Meet the Hematologist        年1回
    Blood Master              年1回
    大阪血液疾患談話会          年2回
    大阪感染症懇話会           年1回
    大阪HAART研究会           年1回
    近畿臍帯血移植研究会        年1回
    近畿幹細胞移植懇話会        年1回
    Osaka Blood Club             年1回
    阪神合同CPC               年2回

6.評価方法

  研修医は受け持った症例ごとのカルテ記載、サマリー作成を求められる。プログラム責任者は、毎週その内容をチェックし、これを元に別途定める書式によって、研修医の評価を行う。研修医評価項目には、医学の基本知識、問題把握能力、問題解決能力、コミュニケーション能力、症例提示能力、勤務態度、協調性、責任感、誠実性、などの項目が含まれる。





 


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